0526 追憶編の話5つを改訂に伴い消しました
大筋の話は変わらない予定でしたがややこしいので消しました
2079年 4月 2日
日本魔法界の最高峰、十師族の一角である『四葉家』の本邸敷地内において、突如として不可解な現象が観測された。
夜の静寂を切り裂くように発生した、正体不明の強烈な発光現象。
異変を察知した四葉の関係者たちが即座に現場へ急行し、周囲の厳重な捜索を開始した。警戒態勢のなか、発光が収まったその中心地で彼らが発見したのは、衣服すら身につけていない、生まれたばかりと思われる一人の乳児――男の子であった。
即座に精密な検査が行われ、当時の四葉家当主であり、最強の魔法師の一人である四葉英作がその身を直々に観測した。
その結果、英作をして「驚愕」と言わしめる驚くべき事実が判明する。
その赤ん坊は、現行の魔法理論では到底説明のつかない、異常極まる密度のサイオンを保有していたのだ。
「この乳児からは、私ですら正確に観測し得ないほどの底知れぬ力と、魂の圧倒的な『質量』を感じる。……断じて在野に放流してはならん。ましてや、他家にその存在を察知されることなど、絶対にあってはならない」
英作のその言葉は、四葉の最高幹部たちに重い沈黙をもたらした。
来歴不明、能力の全貌すら未知数。しかし、その内に秘められた潜在能力が世界を揺るがしかねないことだけは確かだった。
合議の末、四葉家はこの幼児を完全に秘匿し、自家のコントロール下に置くことを決定する。
かつて司波達郎が四葉家に迎え入れられたように、将来の四葉家当主の政略結婚相手の候補、あるいは次期当主を守護する『ガーディアン』として引き取り、最高峰の戦闘教育を施すことが決まった。
◇
2080年 3月 25日
四葉深夜の長女として、司波深雪がこの世に生を受ける。
世界で最も美しく気高い結晶のような少女の誕生。
この瞬間、かつて謎の発光と共に現れた男児の運命は、明確な形をとって決定づけられた。彼はこれ以降、深雪の「婚約者候補」にして、彼女の絶対的な盾となる「ガーディアン」として、より過酷で凄惨な教育・訓練の環境へと身を投じることになる。
だが、彼の運命はそれだけに留まらなかった。
かつて大亜連合による誘拐事件という悲劇を経験し、姉である四葉深夜の精神構造干渉魔法『忘却の川(レテ)』によって、過去の絶望的な経験を「ただの客観的な知識」として受け入れることで精神の崩壊を免れた女性――四葉真夜。
彼女が四葉家の次期当主として家督を継ぐことが確定した際、真夜はある重大な決断を下す。
あの事件以来、生殖能力を失っていた彼女は、四葉の血を引かぬ、しかし誰よりも規格外の才能を持つあの幼児を、自身の「最愛の息子」として養子に迎えることを宣言したのだ。
周囲の思惑を孕みながらも、幼児は四葉真夜の正当な息子としての地位を得る。
その名を、四葉真司。
何のためにこの世界に産み落とされたのか、その内にどんな真理を秘めているのか、未だ誰も知らない。四葉という闇のなかで、のちに世界を二分するもう一人の「怪物」は、静かにその産声をあげたのだった。
これは少し先の未来の話になる
巳焼島で達也が世界に演説し終えようとしたところからの話だ
「真司か。何しに来た」
いつもと変わらない、司波達也の冷徹な声が響く。世界を震撼させている、まさにその演説の最中だというのに。
「演説の最中悪いな、達也。――俺も世界中の人に、言いたいことができたんだ。許してくれ」
画面に割り込むようにして現れた真司は、苦笑を浮かべながらも、その瞳の奥に確固たる決意を宿していた。
「お前が覚悟を決めたことを見て、自分も表舞台に出ることにしたんだ。俺はお前を、お前だけを世界の抑止力として孤立させたくない。俺はお前の親友で、戦友で、かつての同僚で、義兄で……世界で二番目に大事な存在だと思っている」
一歩、また一歩と達也に歩み寄る。その足取りに迷いはない。
「そして、俺にとって世界で一番大事な存在である司波深雪にとっては、お前は唯一無二の兄であり、もし死んだら彼女がどれほど悲しむか分からない存在だ。俺は、深雪の悲しむ姿だけは見たくない。彼女を悲しませないためにできることがあるなら、俺は何だってする。だから……お前が一人で孤独の道を歩もうとしてるのを見てるだけなんて、俺にはできないんだよ」
達也は知らない。真司には、祖先の力の残滓によって「自分という異分子が存在しない、本来この世界が歩んだはずの歴史」が断片的に見えていた。
本来の歴史なら、深雪は達也と婚約し、達也には深雪という唯一の錨があった。しかし、この世界では自分が深雪と共にいる。だからこそ、達也は原作以上に自らを切り離し、完全な孤独の道を行こうとしていたのだ。
それを知っていたからこそ、真司は達也と並び立つことで、彼を救いたかった。
いや、――たとえそんな知識がなかったとしても、自分は最初から達也の味方をするつもりだったろう。
「お前に並び立つことを決めた」
真司は達也の肩をそっと押し退けるようにしてマイクの前に立ち、正面から中継カメラを見据えた。
「世界中の皆さん。リッチャーズカンパニー代表取締役兼CEOであり、四葉家現当主・四葉真夜の息子――そして、この場にいる司波達也の親友であり、四葉家次期当主・司波深雪の婚約者、葭葉真司です」
一息置き、真司は静かに目を閉じて深呼吸をした。
世界中がその男の肩書と威容に息を呑む中、次に真司が目を見開いた瞬間、その眼光は世界を射抜く。
「――俺は今、この場で宣言する! この中継を見ているすべての人間よ、国家よ、刮目しろ! この俺が、世界に対して『死の力』を持っていることを」
言葉と同時に、真司の左手が動いた。
腰に帯びた黒刀を、右手で素早く引き抜き、一閃、空を払う。
その瞬間、世界が変わった。
地球上のすべての人間が、動物が、あらゆる生命体が、自らの魂に直接刻まれる圧倒的な『死』を錯覚し、文字通りその身で理解させられたのだ。肌が粟立ち、心臓が凍りつくような絶対的な終焉の気配。
真司は、その黒刀の切っ先を、中継カメラのレンズのド真ん中へと向けた。画面越しに、世界中の人々の眉間に刃を突きつけるように。
「言わずとも分かるだろう。この刀と俺が組み合わされば、世界中の人間に『死』を感じさせることができる。世界規模で、これだ。ならば局地的に使えばどうなるか……言わずとも分かるな?」
静かな、しかし抗えない警告が世界中に響き渡る。
「俺は、俺が大切に思う存在に対して悪意ある行動がなされたと思ったら、躊躇なくこの刀を振るう。その結果については言うまでもないだろう。そして、俺はこの刀を『守るため』以外に振るうことはない。――世界中の人よ、俺にこの死の刃を振るわせないでくれ。以上だ」
カチャリ、と音が鳴る。
真司が刀を静かに鞘に納めると、世界を覆っていた息詰まるような『死』の気配は、霧散するように消え去った。
しかし、それは同時に、今世界中が体感した恐るべき『死』が、間違いなくこの画面の向こうの男一人の手によってもたらされたものであるという、決定的な証明でもあった。
真司は世界の動揺を確認することもなく、すぐにカメラに背を向けて立ち去った。中継にはもう写っていないが、その横顔は、全てを背負う覚悟を決めた「漢」の顔だった。
◇
「しかし、達也も真司もすごいことするわね。しかも真司なんてねぇ? 深雪」
中継を見ていたアンジェリーナ・クドウ・シールズが、いたずらっぽい笑みを浮かべて深雪を覗き込む。
対する深雪は、顔を林檎のように真っ赤に染めたまま、何一つ言葉を返せずにいた。
リーナはさらにニヤニヤしながら言葉を続ける。
「あんな世界中の人々が聞いてる中継の真ん中でさ、堂々と『深雪は俺のものだ』って宣言するんだもんね。実質、全世界に向けた愛の告白じゃない、深雪!」
「リー、リーナ……っ! あなたって人は!」
「深雪、リーナ。ここにいたのか。演説、聞いてたのか?」
そこへ、たった今世界を脅迫してきたばかりの張本人――真司が、いつもと変わらない様子で合流した。
「真司様、あの、先ほどの中継は……」
恥ずかしさと嬉しさで言葉を詰まらせる深雪に、真司は少しきまり悪そうに頭を掻いた。
「すまないな、気づいたら深雪のことを口に出してた」
「いいえ! 謝らないでください……っ。本当に、本当にうれしかったです」
真っ直ぐに自分を見つめる愛おしい婚約者の瞳を見て、真司の胸に熱い感情が湧き上がる。真司は一歩近づき、深雪の目を正面から見据えて告げた。
「改めて、深雪。学校を卒業して、俺の誕生日が来たら籍を入れよう。お前を俺だけのものにする。――誰が何と言おうが、これは決定事項だ」
「はい……っ。よろしくお願いします、真司様」
幸せそうに微笑み合う二人のやり取りを、リーナは両手で頬を支えながら、実に面白そうに眺めていた。
「おめでとう深雪。ついに結婚しちゃうのね!」
「ありがとう、リーナ。でも、まだ少し先の話よ?」
「何言ってるの、もうすぐじゃない!」
楽しげにじゃれ合う二人。真司はその光景を優しく見つめながらも、その思考の裏側で、冷徹に「今後」の予測を立て始めていた。
(さて……後悔はないが、これから大変なことになるな。リッチャーズの身の振り方も本格的に考えないと。このままの体制では駄目だ。俺自身の個人の力なんかより、リッチャーズが秘めている力の方が、世界にとっては遥かに深刻なんだからな……)
今は、先ほど見せた俺の『死の力』という圧倒的な個人の武力で、周囲の目をカモフラージュして隠せるだろう。だが――。
真司に残された先祖の力はもう残っていない。つまり、この先の未来がどうなるか、真司は何も知らないのだ。ここからは、正真正銘、誰にも予想できない未来が訪れる。
真司の『位相対応理論』や黒刀の力は、真司自身に由来するものだ。だから、もし真司がいなくなれば、その力は効力を失う。
しかし、リッチャーズカンパニーが持つ技術は違う。それは「汎用技術」なのだ。たとえリッチャーズが消えたとしても、一度生まれた技術が消えるわけではない。
そして、真司以外は誰も知らない驚愕の事実。
リッチャーズの魔法研究開発局に所属する『リッチ』たちは、一人だけでも数十の戦略・戦術級魔法を使いこなす。そんな規格外の存在が、あの組織には百近くも在籍しているのだ。
それは達也の『マテリアル・バースト』や、真司の『死の刃』なんかよりも、もっと、徹底的に世界から隠し通さなければならない禁忌の存在だった。
それだけではない。リッチャーズは魔法・非魔法に関わらず、世界のあらゆる分野において数十年は先を行くオーバーテクノロジーを保有している。その総戦力は、世界全てを敵に回して戦っても勝てると言っても過言ではないほどだった。
じゃれ合う深雪とリーナの笑い声の裏で、真司は静かに、自らが握る「世界を滅ぼせる引き金」の重みを噛み締めていた。
改訂版の暫定版
未来編読んでオリジナル主人公を絡ませたかったから出来上がったものを入れました
本来の通りなら何か月かかるねんって先になるから流石に入れたかった
少しはオリジナル主人公の力の感じを理解してもらえたらなって思ってます
いろんなところに伏線が入ってるのが分かると思いますので楽しいみにしててください
ここに入れた設定は変えることはないと思います。