魔法科高校の劣等生 深雪と達也の心を救う者   作:ネギ王子

10 / 13
本日二回目の投稿


入学編 5話

2095年4月9日 土曜日 

夜 司波家自宅リビング

 

 

リビングで今日あった出来事を真司、深雪、達也の三人で話し合っていた。

 

深雪「それでお兄様を襲った生徒は赤と青の線で縁取られた白いリストバンドをされていたと」

達也「ああ、そういうことだな」

真司「ほーん、達也を襲うとはなんと命知らずの勇者なことだ」

深雪「真司さんは心配じゃないのですか?」

真司「心配だよ、相手の頭が。よくもまあ風紀委員を私怨で襲うよなって思う」

達也「私怨かどうかはわからないが」

真司「そのリストバンドってエガリテとか呼ばれてる組織の構成員のやつじゃねえの?第一魔法科高校も物騒だね、どこの国の支援を受けているかも分からない組織の下っ端がいるなんて」

 

達也は苦笑いで返す。

 

達也「そう言うな、差別されている人間に付け入る組織はどこにでもいる」

真司「エガリテみたいな差別撤廃なんて聞こえの良い言葉を掲げる組織なんて何かしらの目的か思想を受けた人間しかしないだろ。普通の人間は一々他人の差別にまで関わる余裕なんてないし興味もないだろう」

深雪「でも、本当に差別をなくしたいと思っている方もいるのではありませんか?」

真司「学生で参加している人間はそういう人が多いだろう。でも運営している人間は間違いなく違う」

 

 


 

2095年4月13日 水曜日

放課後 生徒会室に向かう廊下

 

達也の風紀委員の仕事は非番の日だった。しかし生徒会の仕事に非番はない。普通なら深雪の生徒会が終わるまで待つのが達也の考えだったが——

 

深雪「お兄様、今日は早く帰ってもらって構いません」

真司「そうだ、さっと帰れ」

 

二人の有無を言わせぬ圧に気圧される。久しぶりに二人きりで帰れるチャンスだからと、放課後デートにでも繰り出す気なんだろうと。そう悟った達也は内心苦笑いしつつ了承する。

 

達也「分かった。真司、深雪のことよろしく頼む」

真司「任せとけ。シスコンはさっさと帰れ」

 

達也は苦笑を浮かべた。この後達也は声をかけられた。

 

「司波君」

 

3人が振り向くと一人の女子生徒が立っている。見覚えがあった達也は壬生先輩ですよねと声をかける。そんな達也と壬生先輩の会話を見つつ真司は深雪と会話していた。

 

真司「深雪、どう思う?」

深雪「なんとなく聞きたいことわかりますけど、なにがですか?」

 

深雪は真司が碌でもないこと聞くのだろうと思った。

 

真司「達也が手を出したかどうか」

深雪「そんなわけないでしょう」

真司「でも女難の相ありそうだよな」

深雪「否定できない気がします」

 

そんな会話をしていたら、壬生先輩との話を終えた達也が戻ってくる。

 

達也「壬生先輩に呼ばれたから、ここで別れよう」

深雪「お兄様、お気をつけてお帰り下さいね」

達也「じゃあ気を付けて帰れよ。あとお前目立ってるから気を付けろよ。周りの人間はお前のこと一挙手一投足見ているだろうから噂にならないようにな」

 

真司は達也に不吉なことを言い残して深雪を連れて生徒会に向かう。残された達也は真司があのようなことを言ったときは間違ってないことを言うので警戒することにした。

 

達也は壬生との会話を終えた後、一人で自宅に帰る。穂波が達也の帰宅に気づいて声をかけてくる。

 

穂波「達也さん、お帰りなさい。今日は深雪さんと真司さんは晩御飯はいらないそうです」

達也「聞いています。二人から『今日は早く帰れ』と圧をかけられましたから。おそらくそのままデートでしょう」

 

穂波は思わずくすりと笑った。

 

穂波「やっぱりそうでしたか。あの二人らしいですね。ところで達也さんは、良い方はいらっしゃらないんですか?」

 

達也は一瞬だけ言葉に詰まる。

 

達也「……いませんよ」

 

穂波「達也さんも、早く素敵なお相手が見つかるといいですね」

 

 


 

 

2095年4月14日 木曜日 

お昼休み 生徒会室

 

 

真司、深雪、達也、真由美、摩利、あずさの6人で昼食を取る。

この時期になると皆がお弁当を持ち込んで食事するようになっていた。

相変わらず真司が事前に自宅で淹れたお茶を深雪が真司や達也に給仕する光景もいつも通りだった。

 

昼食を食べ終わったあたりで摩利が達也に話しかける。

 

摩利「達也くん」

摩利「昨日、二年の壬生をカフェで言葉責めにしたというのは本当かい?」

 

その言葉に真司は笑いを我慢できない。

 

真司「達也が…言葉責め…ぷぷぷ」

 

達也はジト目で深雪を挟んで座る真司をにらむ。

 

達也「真司、何がおかしい?」

真司「お前に昨日別れるときに悪目立ちしてるから注意しろって言ったのに結局うわさが立っててめっちゃ面白い」

 

真司はついに堰を切ったかのように大笑いし始める。そんな真司を無視して達也と摩利の会話は進められる。あずさはそんな真司を珍しそうに見つめ、深雪は真司の隣で必死になだめていた。

 

深雪「真司さん、面白いのは分かりますがそろそろ落ち着いてください」

真司「いや、だって、あれだけ注意しろって言ってこれだ。笑わずにいられるか」

深雪「真司さん」

真司「…分かった。深雪すまない」

 

ようやく落ち着いた真司は達也たちの会話に参加する。壬生先輩の風紀委員の点数稼ぎ疑惑に関する話題だった。

 

真司「それで2科生の達也は点数稼ぎのために取り締まりとかしたのか」

達也「お前、話聞いてたのか」

 

呆れた声色で返す。

 

真司「ちゃんと聞いてたさ。点数稼ぎしたって何のメリットもなさそうだけど、達也ぐらいならメリットがあるのかと思ってな」

達也「俺がもしやってたら壬生先輩がわざわざこの話を俺にしないだろう」

真司「2科生で一番メリットがありそうなお前がやってないのに他の風紀委員がやるメリットあるのかって話だよな」

 

その真司の言葉に誰もが納得しかなかった。2科生の達也がすれば一番点数稼ぎとして意味があるのにそれをしない、そしてそれを達也に言う辺りでなにか違和感がある。

 

真司「少し考えたら違和感があるのに違和感を覚えない。思考が誘導でもされてるんだろうか」

 

真司の予想を含んだ言葉に達也と真由美は何か引っかかるところがあったようだ。

 

達也「真司それは…」

真司「あくまでも、俺の予想だ。それ以上の意味はない」

 

真司の含みのある言い方されたので達也は黙る。達也には真司が何か気付いたことがあると感づいた。深雪も真司と達也のやり取りで真司が何かに気付いてる可能性に行きついたようだが口を出さない。

 

そのあとは反魔法国際政治団体「ブランシュ」やその下部組織の「エガリテ」などの話まで発展したが先ほどの会話以降真司は一言も発しなかった。

 

最後解散する前、放課後に達也が壬生先輩に課した『宿題』の答えを聞きに行くらしいと聞いた真司は——

 

真司「また壬生先輩を言葉責めしてくるのか?頑張れよ」

 

そんな言葉を口にして達也を呆れさせる。

 

達也「真司、お前なあ…」

 

そんな達也の様子に深雪も真由美も摩利も肩を震わせていた。

 


 

夜 司波家自宅リビング

 

 

夕食後、深雪は真司を連れて珍しく達也の部屋を訪れていた。

 

深雪と真司がデートでよく行くお店の、深雪が好きなチョコレートケーキが届いたので自室にいた真司を誘い、その足で達也の部屋に向かったのだ。

 

深雪「お兄様、深雪です。真司さんもいます」

 

この家には達也含めて四人の人間が生活しているが、基本的に達也の部屋を訪問するのは深雪だけだ。だからわざわざ声をかけなくても誰かは分かるが、律儀に深雪は声をかけてくる。そして今日は珍しく真司まで同伴していることに少し驚いていた。

 

達也「二人とも入っていいよ」

真司「ジャマするぜー」

深雪「私の好きなケーキが届きましたのでお茶にしませんか?」

真司「達也は飲み物何にする?俺と深雪、穂波さんはロイヤルミルクティーの予定だが」

達也「俺はコーヒーでいい、すぐ行く」

 

リビングルームにて。チョコレートケーキを食べてる達也がリビングのディスプレイを操作しつつ口を開く。

 

達也「深雪や穂波さんはともかく、真司もケーキが相変わらず好きだな」

真司「深雪と普段からデートでスイーツ店巡りしてるのは知ってるだろ。今日のもその時に見つけた穴場店のケーキだ。それに好きな異性の食べ物を共有したいと思うのは当然だろ」

 

まだケーキを食べ続けてる深雪は真司の隠さない愛情表現に頬が赤い。

 

真司「それにこの世界では砂糖や甘味は一般的でも異世界じゃ砂糖は貴重品でなかなか毎日食べるようなものでもなかったからな」

 

深雪「ところでお兄様は何を?私たちも見てもよろしいのですか?」

 

穂波「邪魔なら席を外しますが?」

 

達也「深雪も穂波さんもいてくれて大丈夫だ」

 

「ブランシュ」のデータがディスプレイに表示される。

 

達也「前に襲われたと言った生徒がつけていたリストバンドの所属組織『エガリテ』はこのブランシュの下部組織に当たる」

 

お昼の会話と合わせて深雪はいろいろ達也に質問を重ねる。深雪の質問に達也は答えていく。そしてブランシュのスローガンである「魔法による社会的差別の撤廃」を説明する。そのスローガン自体は正しいと達也はいい、深雪も同意する。

 

達也「では差別とは何だろう?」

 

その質問に深雪は答えるが、一般論で考えるべきではないと諭す。それまで黙っていた真司が口を出す。

 

真司「差別とは何かしらの目的を果たしたい者が言葉にする都合の良い幻想だ。都合の悪い部分をそれらの者は差別とは言わない」

 

達也は魔法師の所得水準が一般的サラリーマンのそれを越えている事実、つまり平均収入の格差を魔法師優遇の証拠とするブランシュの主張を話す。しかしそれは一部の魔法師が平均を押し上げているだけで、大多数の魔法師は平均からはるか下の水準しかない事実には目を向けない。魔法資質が高いだけで裕福な暮らしができるほど魔法師の世界は甘くないと語り、深雪にも確認して深雪も同意する。この場の四人は一般より高い魔法資質を持つがいずれも四葉に縛られている者たちである。

 

そして魔法による金銭の報酬をなくし無私奉仕しろというのがブランシュの主張だと達也は結論付ける。

 

達也「真司が言ったようにブランシュは都合の悪い部分は言わない。そして前に真司が言った通り聞こえの良い言葉を掲げて、平等という耳障りの良い言葉で他人を騙し自分をだましている」

 

真司「やはり他国の息がかかった組織か」

深雪「真司さんそれは…」

真司「この国の魔法師が弱体化して喜ぶのはどいつだ?自国の人間が自国の戦力が弱体化して喜ぶわけがない。つまりそういうことだ」

 

深雪は絶句して黙る。

 

真司「俺たちは幸いにして誰もがなにかしら才能を有しているから、こんな連中の言葉には騙されない。でも才能がないものにとっては甘美な毒になる」

真司「人は自分が他者より劣っているという事実を簡単には直視できないし受け入れることなんてできない。優秀な人間が努力してその地位にいる事実にすら目を向けられない」

真司「だから『平等』という幻想に騙されてしまう。達也は何の才能もなかったとしたら、この『毒』を拒否できたか?」

 

達也「少なくとも断言はできないだろうな」

 

深雪はそんな二人の会話を黙って聞くしかない。

 

達也「そんな連中は十師族が放置しておくわけがない。特に四葉が、な」

真司「気を付けないといけないだろうな。深雪は俺が全力で守るが」

 

 

 

しばらくして空気が落ち着いてきたころ、達也から真司に質問される。

 

達也「真司、今日の昼休みのことだが、壬生先輩が思考誘導されているような口ぶりだったのはなぜだ?」

真司「俺の眼はお前と同じようにいろいろ特殊でな、人間の精神支配、思考誘導みたいなものがある程度見分けられるんだ」

達也「ほう」

 

達也の目が興味深そうな獲物を見る目に変わる。深雪からも質問される。

 

深雪「差し支えなければどのように見えるのか教えてもらっても大丈夫でしょうか?」

真司「それは問題ないんだが、うーん」

 

しばらく腕を組んで考え込む真司。

 

真司「そうだな。色で例えるのが分かりやすいかな。あくまでもたとえ話と聞いてくれ、実際にそう見えてるわけじゃない」

 

そう念押ししてから話し出す。

 

真司「例えば深雪の脳内の思考や精神が青色に見えるとする」

深雪「私の色が青色ですか?」

真司「まあ個人的な深雪のイメージを当てはめてるだけだから色は気にしないでくれ。青色と言っても均一な単色ではなくグラデーションがある青色だ、水色もあれば紺色もあるイメージと思ってくれ」

達也は口を挟まずじっと真司の言葉を聞いている。

 

真司「思考誘導されていたりすると、この青色の一部に赤色の靄みたいなもので上塗りされてるように捉えられる。青しかないところに全く別の色が重なって見えたら明らかに異常だと分かるだろう?」

深雪「そうですね、青色に赤色が重なって見えればおかしいと思います」

 

深雪は納得したように頷いた。達也は腕を組んだまま、次の言葉を選ぶように少し間を置く。

 

達也「精神支配されていたら、全体が赤色に見えるのか?」

 

達也から核心を突いた質問をされ真司は口角を上げる。

 

真司「達也いい質問だな。まさに精神支配されてると赤一色に見えることが多い感覚だ」

達也「同じ単色でも元の色が分からなければ精神支配されているか判別できないのではないのか?」

真司「そこが重要だが、最初に言ったグラデーションが肝なんだ。精神支配された色にはグラデーションが少ないんだ。均一な単色に見えることが多い」

達也「なるほど、そこで見分けるのか」

 

得心がいったように達也は小さく頷く。真司はそんな達也を見ながら続けた。

 

真司「達也みたいに元々グラデーションが少ないように見えるタイプもいるから一概には言えない。感覚的なものだから漠然とした直感で精神支配されたタイプなのか元からそういう資質の持ち主なのかは大体は分かるんだが」

 

達也は自分のことを言われて微妙な顔をした。深雪はそんな達也を横目に、興味深そうに真司へ問いかける。

 

深雪「私を例に出したのってグラデーションが多いからですか?」

真司「個人統計的にグラデーションの多さと感情の豊かさは比例関係にある。だから深雪はグラデーションが多いが達也は少ない」

 

そのやり取りを黙って聞いていた穂波が、控えめに手を挙げる。

 

穂波「ちなみに私は?」

真司「穂波さんは多い方ですね。女性はグラデーションが多い人が割合高いですね」

 

納得したところで、達也がふと真剣な顔に戻った。

 

達也「話を戻すが、洗脳されてる人間とかはどうなる?」

真司「それは判別できないことが多い。この眼はあくまでも相手が今の自分の状態が異常だと認識できることが基準になっていると考えていて、洗脳されたりして相手自身が自分の思考や精神状態を正常だと認識している場合は、こちらから見ても異常として判別できないことが多い」

達也「そこは万能ではないのか」

 

真司は肩をすくめる。

 

真司「万能な能力の方が稀だろ、この能力も異世界で得たスキルだが一日に起動できる時間が決まってるタイプのスキルだし、ずっと使えるわけじゃない」

達也「時間制限型なのか」

真司「スキルには色んなタイプがある。一日ごとに使用時間が回復する時間制限型、一日ごとに使用回数が回復する回数制限型、一生で使用回数が決まっているタイプ、スキルを得た時点で常時適用され続けるタイプなどな」

 

大まかな説明が終わったところで、深雪がふと何かに気づいたように真司を見た。

 

深雪「真司さん、そんなふうに壬生先輩のこと見えてたのに、私とふざけあってたんですか?」

真司「達也相手だったしな。目的が深雪じゃない時点で終わった話だ」

達也「おい」

真司「達也の唯一の弱点は搦め手だからな。俺なら深雪以外の異性と二人きりになんてなりたくない。深雪に勘違いされたくないから。でも達也は堂々とほぼ初対面の壬生先輩と二人きりになってるからなぁ」

 

真司のその言葉で深雪や穂波が笑って場は大分和やかになった。

 

 




9月発売の最新刊のあらすじに結婚式の準備の話出てたから急いで真司と深雪が恋人関係になるところまでは書き上げたい
できれば四葉継承編までやりたいけど間に合うか分からん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。