段階的に章が進むごとに少しずつ出していきたい
四葉継承編が終わっても全容は出ない予定
第一魔法科高校最寄り駅
いつもより早く起床した3人は自宅をいつもより早く出て魔法科高校の最寄り駅で真由美が登校してくるのを待つ。そこで真由美から聞いたのは、昨日の話し合いの結果、明日の24日土曜日に公開討論会が行われるという内容だった。
真由美は一人で討論会に出席し、ほんの少しの揚げ足取りもさせないためだと語り、相手が自分を論破することができるほどの信念を持っていることを期待するような態度であった。
夕食後、達也が九重八雲の元に行き、司甲についての情報を調べてもらうと言って出かけるらしいので、真司もリッチャーズカンパニーの本社に出向くことにした。深雪はどちらについて行くか悩んでいた。
真司「深雪はどうする?達也に着いて行くか俺に着いて来るか」
深雪「真司さんはリッチャーズの本社に向かわれるのですよね?」
真司「達也と同じようにブランシュの情報がないか聞いてこようと思ってな。ついでに回収しておきたいものもあったしちょうど良かった」
深雪「真司さんに着いて行ってもお邪魔じゃないですか?」
真司「俺は全然構わないよ」
深雪「なら真司さんについて行くことにします。お兄様そういうことなのですみません」
達也「大丈夫だよ」
達也は自動二輪で向かうようなのでその準備をしている。真司も一人なら走っていけばすぐに着くけど深雪がいるので、助っ人を呼ぶことにした。
真司「深雪、俺の前世からの相棒を呼びたいと思うが構わないか?」
深雪「私は構いませんが、わざわざ確認取るほどのことなのですか?それに相棒とおっしゃる方を呼んだところで移動手段になりうるとは思えないのですが」
真司「ちょっと驚くかもしれないから、一応確認しておこうと思ってな。まぁ会えば分かるよ」
3人は準備を終えて外に出る。穂波も真司の相棒と呼ばれた存在が気になったようで外にまで出てきている。達也は自動二輪を駐車場から出してまたがるが出発しないようだ。どうやら達也も真司の呼ぶ相棒が気になるらしく見てから行くようだった。
深雪「何か合図とかいらないんですか?」
真司「いや、深雪と繋いでる『念話』の魔法みたいな意識上で呼ぶだけで来るよ。それより認識阻害の結界とかかけとかないと」
真司はそう言いながら、周囲から認識されなくなる認識阻害の結界を展開する。これは異世界由来の魔法なので、サイオンを使わない。魔法の検知装置には引っかからない魔法である。
しばらくして自宅前の道に雷が落ち、とてつもない轟音と共に雷光が周囲に走る。深雪や穂波はその眩しさに目を閉じた。二人が目を開けた先には体長5メートルは越え、体高が2メートル以上もある巨大な蒼白毛の狼がいた。
蒼白毛の狼「『久しいな相棒』」
その巨大な狼が人間の言葉を話すことに深雪も達也も穂波も驚く。そして常識を超えたあまりの大きさの狼に生存本能が警鐘を鳴らしていた。狼の言葉に真司も応える。
真司「急に呼び出して済まないな」
蒼白毛の狼「『構わない。リッチャーズ本社まで送っていってほしいとのことだったな』」
真司「よろしく頼む」
真司は巨狼の元に近付き、その巨狼の頭を撫でたり顎下を撫でたりする。その様子に真司以外の3人は少し落ち着く。襲ってくるわけでもなければ、まるで普通の犬のような反応を示すのを見たからだった。
しばらく撫でたあと真司は深雪たちの方に向き
真司「深雪、達也、穂波さん紹介する。俺の相棒の雷王狼種と呼ばれる狼だ。名前は…すまないが教えられない。少し事情があってちゃんと名前はあるのだが異世界でこの種の生物の名前を気安く呼ぶことは良くないことでな」
そう言ってから巨狼の方に再び向き直り話す。
真司「紹介するよ。こちらの3人が司波深雪、桜井穂波、自動二輪にまたがってるのが司波達也だ」
蒼白毛の狼「『話は聞いている。よろしく頼む深雪殿、達也殿、穂波殿。それで相棒よ、この娘がお前の番か?』」
その言葉に真司は少し照れながら答える。
真司「まぁ…そうなったら嬉しい相手だな」
真司のその言葉に深雪が茹でダコのように顔を赤くする。
その後は復活した深雪や穂波が狼から許可をもらって体を撫でたりした後、達也は九重寺に出発し真司たちも出発することにした。
真司は狼の背中に乗って
真司「深雪俺の前に跨ってくれ。後ろから抱きしめる形で支えるから」
深雪を引っ張り上げて自分の前に座らせる。
真司「穂波さん、行ってきます。留守番よろしくお願いしますね」
深雪「行ってまいります」
穂波「お気をつけて」
巨狼は真司と深雪を乗せたまま高速で、住宅の上に飛び上がり屋根を伝っていくように走り抜ける。しかし全く巨狼の重さや音を住宅の屋根に伝わらないほど繊細な移動であった。
リッチャーズ本社敷地に到着し、先に真司が降りる。
真司「深雪おいで」
そう言って深雪を巨狼の背中から降ろして抱きとめる。
深雪「ありがとうございます」
そう言いながらも嬉しそうに真司に抱き着いたまましばらく真司に甘える。
真司「(帰りもよろしく頼む)」
深雪の邪魔をしないように口の動きだけで巨狼に言葉を伝え、巨狼も二人の邪魔をしないように無音で立ち去る。真司は深雪の好きなようにさせた後、深雪は真司の腕を組んで本社建屋に向かう。本社建屋前に警備の男が二人おり、真司たちに気付いて駆け寄ってくる。
男1「陛下、お疲れ様です!」
男2「お疲れ様です!」
大きな声と共に直角に礼をする二人。その姿を苦笑いで見る。
真司「二人とも、ご苦労さま。こっちの用事聞いてる?」
男2「はい!訪問の事情は伺ってます。魔法局と諜報局に用事があるとか。地下施設入り口の方に迎えが来ています!」
男1「深雪様、お久しぶりです。この前は確か第一魔法科高校の入学祝いで来られた時でしたね。歓迎いたします!」
深雪は第一魔法科高校の入学祝いで、真司と共にリッチャーズ本社に来ており、本社社員から祝ってもらっていた。
真司と深雪が通り過ぎた後
男2「陛下に労って貰えた!夜勤した甲斐があるってもんだ。あいつらに自慢できるぞ!」
口々に「やったぜ!」とか「ヤッホー」とか雄叫びあげる二人の声が背後から聞こえてくる。真司も深雪も苦笑いだった。真司は深雪を連れて地下施設の入り口に向かう。
深雪は先ほど気になった部分を真司に聞く。
深雪「真司さん、リッチャーズには地下施設があるのですか?」
真司「ある。本社の社員の一部つまり俺の前世から付いてきてる家臣・配下しか知らない施設があるんだ。かなり巨大な秘密施設だから知る人間は少ないという判断で外部には一切委託せず完全に内部だけで作ってあるから秘匿されてる」
深雪は真司の言葉に驚いた。そんな施設があるとは何度もリッチャーズに来ていた深雪ですら気づかなかった。
少し歩くと、一人のメイド服を着た女性が黒く長い髪を靡かせながら立っている。
「お待ちしておりました、ご主人様」
その言葉と同時にカーテシーをしながら礼をするメイド。深雪は警戒した。そのメイドはかなりの美人だったため、真司を渡すまいと腕を抱く力を強くする。
真司はそんな深雪の様子に気付きながら内心苦笑いしつつ、メイドを紹介する。
真司「深雪、こちらのメイドはネモフィラと呼ばれている」
深雪は明らかに花の名前で呼ばれていることにかなり疑問があった。人の名前とは思えなかったからだ。
深雪「ネモフィラさん…ですか?」
真司「そうだ。生体パーツでできた自動人形だな。正式名称はAutonomous Combat and Household Assistant Maid-type Automata、(自律戦闘・家事支援侍女型自動人形)通称アチャマ・アカマと呼ばれている。その中のフローラシリーズのネモフィラと呼ばれているタイプだ」
深雪「メイドロボットのHARに近いタイプですか?」
真司「あれよりもっと高性能なメイドロボットだよ」
深雪「そんなメイドさんをなぜ?」
真司「今回の訪問にあたっての深雪の世話係。なんでも指示していいから」
ネモフィラ「深雪様はじめまして。ネモフィラと申します。この度は深雪様にお仕えして世話するようにと言付かりました。よろしくお願いいたします」
深雪「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
深雪の警戒が解けたところで、リッチャーズの本社地下施設用入り口から地下内部に降りることにする。
地下施設への入り口から中に入り地下へ階段を2、3階分降りた後
深雪「あの……真司さん?これは……?」
深雪の目の前には巨大な黒い縦穴が広がっていた。しかし自然な縦穴ではなく、機械仕掛けの金属でできた巨大な縦穴である。深雪は穴を覗いたが底が見えない。
真司「輸送用垂直坑」
深雪「いえ、そういうことではなく、それは機械でできているのでなんとなく分かります。問題は大きさなのですが…」
真司「直径約350メートル、深度10キロメートルの縦穴」
深雪は真司の告げた数値は何かの間違いだったのではないかと思った。深さはともかく直径に関しては真司のいうサイズはある気がする。え?本当に地下10キロの深さあるの?これ? そんな思考が頭を埋め尽くしていた。
深雪が大混乱の最中に真司は深雪を連れてエレベーターに乗る。これからどこに向かおうと言うのだろうか。深雪はある意味で不安だった。
深雪はなんとか再起動して飲み込めてない気がするが、飲み込んだと思い込んで真司に再度尋ねる。
深雪「あの…輸送用の垂直坑ってなんでそんな大きさと深さなんですか?」
真司「深さは海底より深い位置まで通すためだったらしい。大きさはこの地下開発工場で作った兵器を地上に輸送するための大きさらしい」
深雪は真司の伝聞気味の話し方に疑問だったが深く聞くのはやめておいた。
深雪「なんで海底より深い位置まで?」
真司「なんか資材輸送用のトンネルを通すためにそこまで掘る必要があったらしい。らしいっていうのは配下のアホどもに任せてたから詳しくは知らない、聞きたくない」
真司すら現実逃避染みてるので、それ以上聞くのはやめた。もう一つの方も一応聞くことにした。
深雪「兵器というのは?」
真司「浮遊航空空母とか浮遊航空戦艦の話。全長200メートル超えのサイズだからこの大きさらしい」
深雪「(浮遊航空空母?浮遊航空戦艦?いったい何の話でしょうか?)えっとその浮遊空母、戦艦というのは?」
真司「そのまま空飛ぶ戦艦とか空母だけど、多分見たほうが早いと思う。いつか生で見れると思う」
そんな会話していると目的のフロアに付いた。豪華な装飾品が並べられた応接室のような部屋に着いた。深雪は真司に案内されてロングソファまで歩く。そしてそのソファに真司と共に座る。
深雪「このソファふかふかですね。もしかして真司さんの部屋にあるソファと同じタイプですか?」
真司「サイズは違うけどそうだよ。この地下施設で作られてるソファだ。表には出してない家具だけど」
そこにネモフィラが尋ねてくる。
ネモフィラ「ご主人様、深雪様飲み物はいかがしますか?」
深雪「…真司さんのオススメとかありますか?」
深雪は何があるのか分からなかったから、とりあえず真司にオススメを聞いてみることにした。
真司「人工ドラゴンミルク使ったロイヤルミルクティーとか持ってきて、あと美容に効くデザートとかを深雪に。俺は適当に頼む」
ネモフィラ「かしこまりました」
ネモフィラは部屋のトビラの一つから出ていく。しばらく深雪は真司と会話してドラゴンミルクとはなんなのか聞き出したりしていた。ネモフィラが戻ってくる。
ネモフィラ「深雪様、こちらドラゴンミルクを使ったロイヤルミルクティーとなります。そしてこちらのデザートは人工の異世界産のフルーツを使ったものとなります。どうぞご賞味下さい」
そう言って深雪の目の前にミルクティーとデザートを並べていく。
ネモフィラ「ご主人様にはお水を用意しました」
真司の前にコップに入った水を置く。
真司「なんか俺だけ対応違うくない?」
ネモフィラ「なんでも良いとおっしゃられたので」
真司「だからって水はないのでは?」
ネモフィラ「適当にと言われましたよね?」
真司「いや言ったけど、だからってこれはないでしょ」
ネモフィラ「ご主人様はわがままですね」
真司「お前のせいだよ」
深雪「(本当にロボットなのでしょうか?真司さんと漫才できるほどの知能を持つロボットなんて)」
ネモフィラは十分に真司をからかったあと、ちゃんと地球産のフルーツと異世界産のフルーツを使ったミックスジュースを持ってきていたのを真司に提供する。そんな対応まで含めて見てもロボットのようには思えない、まるで人のような仕草をネモフィラから深雪は感じ取っていた。
ネモフィラは深雪の座る位置の斜め後ろに立って待機しており、深雪がデザートを使った食べ終わるころ、ネモフィラが出ていったトビラとは逆側のトビラから一人の男性が入ってくる。
男性「陛下お待たせしました」
深雪は立ち上がろうとしたが真司に静止される。
真司「深雪、俺とお前はここでは主の立場だから立たなくていい」
そう言われたので浮き上がらせていた腰を下ろす。
男性「深雪様、はじめまして。私共にご丁寧な対応は必要ありませんよ。あごで使う感じで構いません」
真司「それでブランシュの情報は?」
男性「そうでしたな、こちらの資料にまとめておりますのでどうぞお読み下さい。深雪様もどうぞ」
真司と深雪は男性から渡された資料を熟読する。ブランシュ日本支部リーダーの司一と第一魔法科高校の3年司甲の関係や明日の土曜日の襲撃計画、銃器等による武装の情報などがまとめられている。その中で特に目を引いたのは、司一の魔法についてだ。
真司「振動系光振動魔法による催眠か。壬生先輩や放送室をジャックした生徒の不自然な精神誘導はこれによるものか…」
男性「そうですね。本人は邪眼を自称してらっしゃいますが、本当に邪眼と呼ばれるようなものなら陛下に不自然だと気付かれないでしょう。そんな違和感すら残りませんから」
真司「まぁこんなものか。小物にしか見えないな。達也を狙っていた理由とか分かるか?」
男性「おそらく部活勧誘期間中の剣術部と剣道部のいざこざに際して、キャストジャミングを使ったのを司甲に見られ、それが司一に伝わったものと考えられます。あくまでも予測の域ですが」
深雪は一言も口を挟まなかったが、真司の配下が第一魔法科高校内で起こった事件の詳細な内容まで把握していることにとても驚いていた。
真司「助かったありがとう」
男性「いえいえ、我々諜報情報収集解析局はこのための組織ですから。陛下のお役に立てられて光栄です。我らが王は陛下の訪問までにはご帰還できなかったので私めが対応させていただきました」
真司「あいつにもよろしく言っておいてくれ」
男性「承知いたしました。すみませんがそちらの資料は廃棄をお願いいたしますね。一応社外に持ち出せない規定なので。では陛下、深雪様お先に失礼いたします」
そう言って男性は元来たトビラから退出していった。
諜報局の男性が退出した後、真司は立ち上がる。それを見た深雪も立ち上がろうとしたが真司に止められる。
真司「少し取りに行きたいものがあるから、行ってくるが深雪はここで待っていてほしい」
深雪「どうしてですか?見せたくないものでも?」
真司「見せたくないと言えばそうだが、どちらかというと秘密というものではなく、心情的に見せたくないものだ。四葉の第四研究所跡地を彷彿とさせるような重い空気が漂う場所だからな。深雪には行かせなくないんだ」
真司の深雪を想っての言葉を聞いたら深雪は自分も行きたいとは言い出せなかった。その理由が四葉を彷彿とさせるものだと聞けばなおさら。
深雪「わかりましたここでお待ちしております」
真司「ありがとう。ネモフィラ、深雪に特製のチョコレートケーキを出してやってくれ。あとはよろしく頼む」
ネモフィラ「深雪様のことはおまかせください」
そう行って真司はエレベーターの方に向かうがエレベーターに乗るわけではない様子に深雪は疑問が浮かぶ。エレベーターのトビラ横の謎のトビラを開けるとそのまま投身するように自由落下して真司が降りていった。
深雪「真司さん!」
驚いて深雪が駆け寄ろうとしたがネモフィラに止められる。
ネモフィラ「深雪様、ご主人様は大丈夫です。ここでは上位存在の方々はあのように移動されてます。エレベーターでの移動は遅すぎるので自由落下や壁を蹴ったりなどしてさらに加速して降りられるのです。日常茶飯事なので慣れることをオススメします」
そう言ってネモフィラは再びデザートの準備のために部屋を退出していった。あまりの非常識さの連続に深雪の頭はパンクしそうだった。
深雪は大好物のチョコレートケーキを食べて少し落ち着いた。真司が特製のチョコレートケーキを用意してくれていたが、過去真司とのデートで色んなお店のチョコレートケーキを食べたがそれらに劣らない美味しさだった。
十分堪能した後、先ほど真司が投身したトビラが開く。そこから真司が帰ってきた。
深雪は真司に対してとても不満と怒りが湧き上がる。
深雪「真司さん!あのようなことをするなら先に言ってください。とても心配したんですから」
真司「すまない」
さすがの真司もこれには謝ることしかできない。深雪が正論だからだ。いくらここでの常識だと言っても深雪にとっては常識じゃなかったことを失念していた。素直に謝る。
「もう真司さんったら」と言いながらプンプン怒る深雪の機嫌を取りながら、再度飲み物を飲んでから帰ることにした。
深雪と上がるときは普通にエレベーターを使って上昇する。
深雪「そう言えば目的のものは回収できたのですか?」
真司「ああ、回収できた」
深雪「手に持ってないということは異空間倉庫に入れてあるのですか?」
真司「まあね。大きいし邪魔だから」
そんな会話をしつつ地上まで戻った。
ネモフィラ「ご主人様、深雪様、私はここまでです。お二人がご無事に帰宅できるように祈っています」
ネモフィラに見送られつつ帰りもまた蒼白毛の巨狼が迎えに来ていた。
真司「家まで頼む」
蒼白毛の狼「『うむ、任された』」
来たときと同じように跨って自宅まで帰り、先に帰っていた達也にリッチャーズで聞いた情報を共有してから就寝する。
深雪は今日一日にリッチャーズで見聞きしたことの衝撃が強すぎたのかベッドに入るや否やすぐに眠りに着いた。