5月
剣術部に行ってみたい。 ブランシュ事件の際、剣術部の桐原先輩と少し話した時に悪い人間ではないと感じたのと、魔法を絡めた剣術というものに興味が出てきたので見学でもいいから見てみたいと思った。
生徒会には服部副会長のように、他の部活に所属しながら、生徒会所属の役員もいるので両立は可能だろう。 桐原先輩と連絡先を交換していたわけでは無いので、達也か十文字会頭を通してアポイントメントを取ろうと考える。
達也は、壬生先輩を通してお願いしてくれるとのことだったので、お願いした。
十文字会頭にも話をしたら、向こうからも桐原へ話をしてくれるとのことだったので感謝を伝えた。
後日
少し減らしてもらった生徒会の仕事を終わらせて、剣道場を訪れる。
代わりの仕事は深雪がしてくれるとのことだったので、後日埋め合わせする約束だけして生徒会室から出てきた。
深雪からは、生徒会の仕事が終わったら迎えに来てくれるとのことだった。
達也は先に帰らせるらしい。
そこは深雪の自由なので、任せることにした。
剣道場に着くと、桐原先輩が待ってくれていた。
「おう、葭葉久しぶりだな。十文字会頭と司波兄から話は聞いてるぜ」
「桐原先輩、本日は無茶なお願いを聞いてくださりありがとうございます」
真司は丁寧にお辞儀する。
桐原は手を挙げて応えるだけだ。
「それで、見学だけでもいいって話だが、それじゃ物足りないだろ?少し打ち込まないか?」
「よろしいのですか?」
「構わんぜ」
「ありがとうございます」
桐原先輩の好意で、見学だけでなく、剣術部の立ち合いにも参加させてもらえることになった。
葭葉は竹刀を右手で正眼の構えをして、空いた左手は軽く添えている。
その構えを見て、程よく力の抜けた構えであり、隙が無いように見えた。
「(こいつ隙がねぇな。剣と魔法を組み合わせた剣術に興味あるって話だが、ズブの素人じゃない)」
桐原から何もアクションがないことに気付いた真司から、どうしますか?、と訊ねられる。
「(どこに打ち込んでも返される未来が見えるな)葭葉、お前から打ち込んでこい」
葭葉の方から、打ち込ませることにする。
その言葉を聞いても葭葉の構えは変わらない。
聞こえていたか?と一瞬考えた瞬間、葭葉の姿が掻き消えた。
視界の端で影を捉えたことで、背後に回られたと気付いて瞬時に竹刀を背中に回す。
間一髪受け止められたが、冷や汗が背中を伝う。
葭葉は受け止められるや否やすぐに距離を取った。
「お前何をした?」
「打ち込んでよいとのことだったので、桐原先輩が瞬きした瞬間に踏み込みました」
こいつ只者じゃねえ。
打ち込んでこいと言ったあと少しも力んだり踏ん張りする様子なく、俺の瞬きした瞬間を狙って動いた?
予備動作を見せず、数メートルある距離を一息に詰めて背後に回る技術。
間違いない。葭葉は俺より剣の腕は上だ。
剣術部の誰でも勝てる相手じゃない。
魔法を絡めた剣でも負ける気がしたが、そこはまだ確かめてない以上意地でも認めないつもりだった。
桐原と真司の立ち会いを見守っていた、剣術部の誰もが目を疑う。
今日、十文字会頭からの仲介と桐原の知り合いの後輩からの紹介で後輩の一人が見学に来ると話を事前に聞いていた。
真司を見た誰もがよく知っている顔だと思った。
生徒会役員であることもそうだが、1年生で一番美少女である司波深雪の隣にいる男子。
深雪とどう見ても恋人の距離感にいる男子の存在は、どの学年であっても知られている。
そんな人物が見学に来たので、最初は内心笑っていた。
だが、桐原との立ち会いを見ればそんな嘲笑など吹き飛んだ。
あの桐原がずっと押し負けてる。
そんな姿を見せつけられる。
最初の攻撃もそうだ。瞬きの一瞬の隙を突いて、背後に回って攻撃を加えた。
そう語るが、桐原の防御が読み違えていれば普通に一本取られていた。
あのとき、真司は桐原の首を狙うように薙ぎ払った。
それを受け止められたから良かったが、もし袈裟斬りされていたら、桐原に攻撃は当たっていた。
桐原が汗だくで膝に手を付いて、竹刀を持てなくなっても、真司は汗一つかかず、平然と立っている。
そんな対照的な二人の姿を見れば、誰だって真司に敵わないことを理解させられた。
しばらくして、深雪が剣道場に姿を見せる。
その姿を見て剣術部の部員はざわつくが、深雪の目的は真司だけである。
深雪は剣術部員に挨拶してから真司に声をかける。
当然真司に嫉妬の視線が向けられるが、真司はその程度でどうこうするような神経はしていない。
桐原に真司は見学と立ち会いのお礼を述べてから、剣道場を後にしようとしたが、桐原が止める。
「葭葉。お前さえ良ければ、今後も顔出していい。生徒会の仕事があるだろうから、出れるときだけでいいし、司波さんのこともあるだろうから好きなタイミングで帰ってくれていい」
「よろしいのですか?」
「他の部員には俺が話しておく。お前の腕は俺たちには必要な刺激になると思った。だから気にしなくていい」
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
真司は桐原の誘いに感謝してから深雪を連れて剣道場を出ていった。
桐原は部員達に、真司の剣の腕は剣術部の中で一番で真司の持つあらゆる技術を少しでも吸収できるチャンスはあった方がいいと説得した。
それに関してはほとんど反対意見は出なかったが、深雪のことに関して文句が出た。
桐原のお前達馬に蹴られたいのか?のひと言で、皆理解して黙り込んだ。
地の文練習文章投稿
ちょうどいいから、剣術部周りの話を練習用に書いた。
入学編の本編の地の文は、各キャラの呼び方にムラがあったから、読みにくかったと思う。
だからある程度、誰の視点をベースにした地の文なのか統一することにした。
今回は、真司視点→桐原視点→第三者視点で切り替わってるようにしたつもり。
各視点ごとにキャラの呼び方も変えてある。
ただ厳密にやると書くのが疲れるので、多少の表記ゆれは許してほしい。