魔法科高校の劣等生 深雪と達也の心を救う者   作:ネギ王子

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追憶編はラストの構成に納得いってないので先に入学編出します


入学編 1話

 

2095年4月3日

 

桜舞い散る校舎に向かう道に三人の姿がいた。

深雪は達也に食ってかかっていた。その二人を真司は苦笑いで見ていた。

 

深雪「納得いきません。なぜお兄様が新入生総代じゃないのですか?真司さんは勉学苦手なので仕方ありません。」

真司「そこは嘘でもいいから真司さんも新入生総代じゃないのかとは言ってくれないのか。」

深雪「真司さんもお兄様になにかおっしゃってください」

真司「無視された!?」

 

真司と達也は目を見合わせる。深雪をどう説得しようか無言の会話をする。

 

真司「深雪、言いたいことは分かる。俺も同じ気持ちだ」

深雪「そうですよね。真司さんもそう思いますよね」

真司「達也を正しく評価できないシステムのほうが間違えてる。そう思うのはどうだ?俺もお前も達也がすごいやつだと知ってるそれだけじゃダメか?」

 

深雪は少しクールダウンする

 

深雪「それはそうですけど⋯」

真司「達也を正しく評価できないシステムは遅かれ早かれ限界が来るはずだ。その時が来るまで高みの見物していればいい。お前たちは達也の何を見ているんだってな」

「それに達也の存在で既存の制度の一つや二つ変えてしまうだろう。今は評価されなくてもそのうち評価される時が来ると思ってる。」

 

深雪は真司の意見に心のどこかで納得できない部分を残しながら鎮火した

 

深雪「二人ともご迷惑おかけして申し訳ございませんでした」

 

真司と達也は苦笑いしつつ、真司は深雪を慰めるつもりでしょんぼりしている深雪の頭を撫でる

 

真司「入学式の新入生総代の演説の役目あるんだろ?深雪の晴れ姿を俺たち二人に見せてくれ。俺はそれを楽しみにしてる」

深雪「はい。真司さんに褒めてもらえるように頑張ります」

真司「一時的に別れるけど、ちゃんと深雪のことは注意深く警戒してるから、いつでも駆けつけるからな」

深雪「よろしくお願いいたしますね」

 

深雪は真司と達也と別れて一人校舎に向かう。その姿を二人は見送った。

 

二人は近くのベンチに座り入学式が始まるまで時間を潰すことにした。

達也は携帯情報端末を開いて書籍データを見ていた。真司は深雪の気配を探りつつ周囲の人間を観察していた。

 

時折二人の前を通り過ぎる生徒が達也の制服を見てヒソヒソと「ウィードじゃない?」とか「スペアなのにな」とか話す声が聞こえてくる。

 

そんな姿を見て辟易とする。

お前たちは見た目だけでしか人を判断できないのか。

そもそも、この国に魔法師を遊ばせておく余裕なんてあるのだろうか。

魔法科高校に入学できる人間は、全国九校合わせても一年で千二百人しかいない。

そのうち三百人もの二科生を、「劣っている」の一言で切り捨てていいほど、この国は豊かでも平和でもないはずだ。

……そういうことを考えたことはないのだろうな。

 

入学式開場が近づいてきたころ、一人の女子生徒が真司と達也に近づいてきた。

 

真由美「新入生ですね。開場の時間ですよ。」

 

真司「わざわざありがとうございます」

 

真司は先ほどまで達也を見て下に見るような差別意識の感じない態度に好感を抱いていた。真司が観察している間にも真由美と達也との間で情報端末に関する会話が繰り広げられていた。

 

真由美「あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。よろしくね」

真司「自分は葭葉真司と申します。よろしくお願いいたします。」

達也「自分は司波達也です。」

 

真由美「司波達也くんと葭葉真司くん⋯君があの司波くんね⋯」

「先生方の間では、あなたたちの噂で持ちきりよ」

「入学筆記試験、七教科平均、百点満点中九十六点。⋯(中略)⋯前代未聞の高得点だって」

「そして入学実技試験1位、2位でも通年の1位を超えた記録にも関わらずそれをはるかに越える記録をたたき出した。第一高校始まって以来1位の記録だってこちらも先生の間では騒がれていたわ。入学筆記試験は普通だったから新入生総代にはならなかったんだけどね」

 

真司の内心(ここでも俺の筆記の成績の話か)

 

達也「そろそろ時間ですので⋯失礼します」

真由美「あなたは行かなくていいのかしら?」

真司「いえ、少し考え事していたものでして。これで失礼させていただきます。」

 

そう言って達也の後を追うように真由美と別れた。

 

 

 

 

真司「達也置いていくなんて酷いじゃないか」

達也「すまん」

真司「まぁいい。七草先輩とお話してたから、かなり埋まってるな」

 

会場の座席の多くがすでに埋まりつつあった。しかしその席の座り方には特徴がある。

 

真司「見事に前半分が一科生、後ろ半分が二科生になってるな。どうせ差別意識あるなら図々しく前列に座ればいいのにな」と小さくつぶやく

 

真司「達也、お前はどうする?⋯って答えは決まってるか。」

達也「ああ」

真司「俺はどうするかな⋯」

達也「深雪のためにも最前列に行ってやれ」

真司「そうだよな。一番目立つところで立って深雪から見つかりやすいところにいるわ」

達也(無言)

真司「なんでそこで無言なんだよ」

達也「いや、お前らしいなと思ってな」

真司「おい、どういう意味だコラ」

達也「深雪のためなら目立つのも厭わないということだ」

真司「当たり前だろ深雪の視線を独占していいのは俺かお前だけだ」

 

達也はため息で返す

 

真司「じゃああとでな」

 

真司は立ち去る。達也は適当な後ろ寄りの座席に座った後、中央の階段最前列で仁王立ちする真司を見る。相変わらず深雪のためなら周りから目立とうがどう思われても気にしない図太い神経には脱帽する気持ちだった。

 

 

 

 

 

深雪は流石に緊張していた。新入生総代として一年の代表にふさわしく振る舞えるのか心配だった。

 

新入生総代として名前が呼ばれる。舞台脇から登壇場まで歩く。観客席を見ると、中央階段最前列にとてもよく目立つ人がいる。自分の想い人の真司だった。

 

その姿を見た瞬間に先ほどまで考えていた緊張は全てどこかにいった。

 

真司さんのことだから、どうせ私から見つかりやすい一番目立つところにいればいいのだとか思ってるのだろう。周りの生徒から注目を集めていたことなんて手に取るように分かる。そんなことを露ほども気にせず私のためを思って行動してくれる真司さんに心が温かくなる。少し目線を奥にずらせばお兄様の姿も見える。

 

改めて私は真司さんを見つめて笑顔を向ける。

 

私は気づかなかったが、その笑顔は花のようなとびっきりの笑顔だったらしい。その笑顔を真司さんに向けていたから、私と真司さんの関係についてすぐに気付いた人も多かったらしい。

 

そんなことは知らず新入生総代として演説を終えた。

 

達也が新入生の女子生徒4人と話しているのを遠目から眺めていた真司が近づく。

 

真司「達也、俺とは待ち合わせてないのか!俺はお前のことをあんなに思っているのに⋯⋯」

達也「勘違いされるような事言うな。お前は俺がどこにいようが見つけて近づいてくるだろうが」

真司「おおー、絶大な信頼が身に沁みる」

達也「心に沁みるじゃないのか⋯」

真司「お前のツッコミが身を突き抜けていったから身を沁みるじゃないのか」

 

そんな漫才をしていたら見ていた4人の女子生徒から見られていることに気付く

 

真司「達也、こちらの女性陣は?ナンパしたのか?」

達也「ナンパっていつの言葉だ。失礼だろ。座席で横になっただけだ」

真司「それはそうだな。お嬢さん方、私の失礼な発言どうか許していただきたい。達也の親友で葭葉真司という。真司と呼び捨てにしてくれて構わない。どうか私とも友人になっていただけないだろうか」

 

達也からため息が聞こえた気がするが無視した

 

エリカ「流石、中央最前列で目立ってるだけあるわね。千葉エリカよ。真司くんよろしくね」

美月「柴田美月です。真司さんよろしくお願いします。」

他二人からも自己紹介を受ける

 

真司「達也、俺は深雪の側に行ってくる。もうしばらく囲まれてそうだが、一人にしておけない」

 

真司は深雪の側に向かう。

 

 

 

 

 

人に囲まれている深雪に近付く。

 

真司「深雪」

 

その言葉に途端に純粋な笑顔になる深雪。先ほどまでの愛想笑いとは雲泥の差である。

 

深雪「真司さん、迎えに来てくださったのですね。」

 

周りは真司が中央最前列で目立っていた男子生徒だと気付いたし、新入生総代の美少女とただならぬ関係であることに気付いた人が多かったから即座に深雪と真司との間の人だかりが開いた。

 

真司「迎えに来た。お前の側にいるのが俺の役目だからな。」

 

歯が浮くような言葉だが、真司が言えば嫌味に聞こえない。深雪は真司の側に寄る。周りの男子生徒はよほどの鈍感でないなら深雪の笑顔が意味することに気付いた。女子生徒は言うまでもない。幾分か熱気は収まったようだ。

 

真司「深雪、もういいのか?達也のところに一緒に戻るか?」

深雪「はい。真司さんとお兄様の側にいたほうが安全でしょうから」

真司「分かった。じゃあ行こうか」

 

人だかりを連れて二人は達也の元に戻る。

 

真司「達也」

深雪「お兄様」

 

深雪は達也と話している二人に気付いた。

 

深雪「お兄様、そちらのお二人は?」

達也「こちらが千葉エリカさん、こちらが柴田美月さん、同じクラスなんだ」

深雪「千葉さん、柴田さん、はじめまして、司波深雪と申します。わたしも新入生ですので、お兄様と真司さん同様、よろしくお願いしますね」

美月「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします」

エリカ「よろしく、わたしのことはエリカでいいわ。あなたのことも深雪って呼ばせてもらってもいい?」

深雪「ええ、苗字だとお兄様と区別できないものね」

エリカ「あはっ、深雪って見掛けによらずに実は気さくな人?」

深雪「そう思ってもらえるなら真司さんのおかげかもしれませんね。貴女は見た目通りの、開放的な性格なのね、よろしくエリカ」

真司「そう言えば、さっき自己紹介のとき呼び方聞いてなかったな。俺もエリカと呼んで構わないか?」

エリカ「真司、いいわよ。わたしは呼び捨てするけど構わないわよね?」

真司「自己紹介したときにも言ったけど、呼び捨てで構わない」

 

達也「深雪、生徒会の方々の用事は終わったのか?まだだったら適当に時間潰しているぞ」

深雪「お兄様と真司さんにご相談したいのでこちらに来ました」

 

深雪への回答は異なる相手から返された。

 

真由美「今日はご挨拶させていただいただけですから。深雪さん⋯⋯とわたしも呼ばせてもらってもいいかしら?」

深雪「あっ、はい」

 

深雪は外面の仮面を被り直す

 

真由美「深雪さん、詳しい話はまた、日を改めて」

真司「七草先輩、お気遣いありがとうございます」

 

明らかに深雪に用事があったのは明白だが、深雪と達也と自分を気遣ってくれたのは分かりきっていたからきちんと礼をすべきだと判断した。

 

真由美「葭葉くん、ご丁寧にどうもありがとうございます」

 

そう言って真由美は後ろに控えていた男子生徒を抑えて踵を返した。

 

真由美「それでは、深雪さん、今日はこれで。司波くんも葭葉くんもいずれまた、ごゆっくりと」

 

そう言って会釈して立ち去った。男子生徒は達也に対して敵意を向けているような気を真司は感じていた。

 

真司「じゃあ帰ろうか」

 

 

 

 

 

先ほどの男子生徒の態度に深雪も気付いたようだった。

 

深雪「お兄様すみません、私のせいでお兄様の心情を悪くしてしまったようで」

達也「お前が謝ることじゃないさ」

真司「深雪、あれは元々差別意識持ってるやつだ。遅かれ早かれ達也の性格ならどっかでああいった人に敵意を持たれる。むしろ俺が真由美さんに謝罪したから悪化したか?」

 

達也は深雪の頭を撫でていた。

 

深雪「お兄様に撫でられるのは嬉しいですけど、真司さんに比べると下手ですね」

 

まさかの深雪からの評価に止まる達也。

 

達也「真司」

真司「はいはい。お姫様のご機嫌は俺に任せてくれ」

 

真司は達也と交代で深雪の頭を撫でる。深雪は目を細めて陶然の表情で受け入れている。そんな様子に初対面故に言葉を挟めないエリカと美月。

 

真司「どこかでお茶飲んで帰らないか?せっかく新しい友人ができたし、交流したいと思う」

エリカ「いいね、賛成。美味しいケーキ屋さんがあるらしいんだ」

 

そのフレンチのカフェテリアでは深雪・エリカ・美月がメインで会話していた。気付けば日が傾き夕方になっていた。真司は時折会話に参加しつつ達也と会話していたが達也はついぞ女性陣の会話に参加することはなかった。

 

深雪「真司さん、どこかに行ってらっしゃったのですか?」

真司「ああ、穂波さんに帰りが遅くなる連絡をしていた。夕食の準備もあるからな。」

深雪「そうですね。忘れてました。真司さん、ありがとうございます。」

 

エリカ「じゃあそろそろ解散するか」

美月「そうですね。日も傾いて来てますし。」

真司「今日は俺が奢る。もう会計も済ませてきた。2人とも楽しい時間をありがとう。」

美月「そんな、ダメですよ。ちゃんとお金出しますから。」

真司「男が奢るときは、女性は笑顔でごちそうさまでしたって言ってくれるのが男冥利に尽きるってもんだ」

美月「ええっ?」

深雪「真司さん、ごちそうさまでした」

 

深雪はとびっきりの笑顔で真司に言う。

 

真司「深雪のごちそうさまでしたが一番の礼だな。それだけで十分だ」

エリカ「真司くん、ごちそうさまでした」

美月「真司さん、ごちそうさまでした」

真司「2人ともありがとう。そう言ってもらえて十分価値があるよ。おい最後の一人は何もないのか?」

 

真司に睨まれる達也。若干怯みつつも。

 

達也「真司、ごちそうさま」

真司「おう、それでいい」

 

女性陣3人とはまるで違う態度を見せる真司に笑う3人。達也は苦笑いしていた。

 

店から駅までの道を5人で歩く。途中真司が持っている箱に気付く深雪。

 

深雪「真司さん、その箱は?」

真司「ん?お土産、家で待ってくれてる穂波さんへの。美味しかったし、穂波さん喜ぶと思って。ちゃんと4人分買ってあるから食後のデザートに食べよう。」

 

深雪はそんな気遣いができる真司に嬉しくなって真司の横に寄る。

 

深雪「真司さんのそういうところ好きですよ。ありがとうございます。」

 

そんな会話をしながら駅でエリカ・美月と解散した。

 

 

 

 

司波家自宅

 

穂波「達也さん、深雪さん、真司さん、おかえりなさい」

深雪「穂波さん、ただいま戻りました」

真司「穂波さん、ただいま。いつも通りありがとうございます。これ穂波さんへのお土産。今日帰りに寄ったお店のケーキ美味しかったから持って帰ってきた。食後のデザートにでも食べましょう。」

 

穂波「真司さんありがとうございます。いつも気遣ってくださいますよね。私は使用人で家政婦なんですよ?こんなお気遣いしなくて構いませんのに」

真司「したくてしてることなので気にしないでください。穂波さんも家族の一員でしょう?なら気遣うのが当たり前です」

穂波「相変わらずですね。達也さんは何もないのですか?将来が心配ですね」

 

いつもの達也いじりが始まった。達也は苦笑いしかできない。

 

穂波「そんな達也さんでも受け入れてくれそうな深雪さんは真司さんのものですし、達也さんの結婚相手困りますね」

 

穂波の「深雪は真司のもの」発言に深雪は真司の袖を掴んで顔真っ赤にしたままフリーズする。真司は深雪に構うべきか悩む。

 

いつものように夜が更けていく。

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