全十四話、約五万文字。
完結まで書き上げてから投稿しています。
毎日投稿予定です。
よろしくおねがいします。
僕の名前はロゼといいます。
僕を拾ってくれた商隊が運んでいたのが赤ワインと白ワインで、僕は樽の間に挟まるように寝かされたので、目が覚めたら護衛の冒険者さんにそう呼ばれていました。
川の中洲の流木に人間が引っ掛かっていると、目の良い
その日を誕生日にしているので、来月で取りあえず十四になります。
記憶も何も無い、人家も無い荒野の川を流れていた僕を拾ってくれた商隊の人は神さまみたいだし、世話を焼いてくれた冒険者さんたちにもとても感謝しています。
商隊の立ち寄り先、この国サウスシャディーダで僕は降ろされたのですが、南国気質でおおらかなので余所者でも住みやすいと、冒険者さんたちは教えてくれました。
言われた通りギルドに登録して身分証を作り、ここで一人で暮らし始めました。
街の人たちは本当におおらかで親切で、住む所も食べ物も、いっぱい助けて貰いました。今でもとても感謝しています。
しばらくして隣国ノースフレイクへ移動しました。
商業を中心とした国で湖沼地帯の景色がとても美しく、この街からも観光で行った事のある人、多いんじゃないかな。
湖を真紅に染める夕陽が素敵で、その時間が一番好きでした。
そこのギルドで受けた依頼、小さな商店のビラ撒きを頑張ったら、大きな商会のオーナーさんに気に入って貰え、マネキンとして正式採用されました。
川で拾われて以来、運の良い事ばかりで、きっと川に落ちるまでの僕って、よっぽど運の悪い日々を送っていたんだろうな。
それから夢のようでした。
観光客の集まる橋の上で、綺麗な衣装を着て唄って踊って、欄干で宙返りなんかしたら拍手喝采で、楽しくてしようがありませんでした。
オーナーに連れられて、貴族さま主催の夜会にも行きました。キラキラの別世界でした。
ダンスにも誘われて、頑張って踊ったら貴族さまがたにも喜んで貰えて、嬉しかったです。
ああ、僕、ずっと女の子の格好をしていました。
最初に会った冒険者さんの魔導師の女の人に、そうした方が安全だと勧められたからです。
勿論、周囲の人たちには正直に性別を伝えていました。皆、魔導師さんの判断は正しいと同意してくれました。
一度、男子の衣装で夜会に出たら、知らない男の人たちに、嫌な言葉を掛けられ続けました。
オーナーがすぐに気付いて助けてくれたけれど、
『連中は、女の子が傷付くのと同じ事を男の子にしても傷付かず、何だったら笑い話で済ませられると勘違いしている』
と怒っていました。
僕の為に怒ってくれて嬉しかったです。
ある日、偉い人たちを招いての晩餐会で唄ったら、主賓の外交官という人に望まれて、僕の
相手の身分的に断れなかったそうです。
オーナーは謝りの言葉をくれたけれど、『貴方の利になれたのなら僕は嬉しい』と答えました。
そういえばその食事会で、どこかの貴族の護衛で来ていた強そうな冒険者さんに、『君は、魅了魔法を使っているのか?』と話し掛けられました。
魅了魔法って、迷宮の魔物が使う奴ですよね。
それは人間が使える物なんですかと聞いたら、その人も、『聞いた事はないが……だいいち君は人間なのか?』と言われました。
こちらが絶句している間に、『いやそんな訳はないよな、すまん、忘れてくれ』って、よく分からないまま去って行きました。
本当に、そんな訳ないんです。
だって僕、魔力は皆無なんだもの。
僕の新しい主は、サウスシャディーダの九番目の王子さまで、図らずもこの国へ戻って来る事になりました。
逆らえない身分の人に金銭で買われて、一体どんな扱いになるだろうとビクビクしていたけれど、全然心配なかったです。
新しい主は、僕に教育を与え、侍従として一人前になれるよう考えてくれる人でした。
そして、もう女の子の服装をしなくてもいい、と言ってくれました。
外交官のその人は、色んな国に連れて行ってくれ、見たこともない美しい風景をふんだんに見せてくれました。
今までで一番、安心で幸せな日々でした。
僕は、川で死ななかった分、残りの人生はおまけだと思っています。
そのおまけが、沢山の人のお陰でこんなに幸せに彩られて。
本当に、感謝しかありません。
***
この文章が主要新聞に載り、早朝の街角で号外も配られた朝。
サウスシャディーダの王宮の門前には、多くの人間が押し寄せた。
文章は牢獄でしたためられた手記で、トップ見出しが、『賓客に無礼を働いた子供の刑が本日執行』であったからだ。