壊れた如雨露といつか花咲く大輪の花   作:坪継

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1話

 

 

明人「なーんあいつ、また授業聞いとらんかったな。あんまりだらなことやっとるんなら、個別指導せんとね……」

 

 教材を抱え、小さく文句を言いながら廊下を歩く

 

綴理「あっ、アキ」

 

さやか「綴理先輩?」

 

 反対側から歩いてるのは二年の夕霧綴理と一年の村野さやか

 どちらもスクールアイドルクラブに所属しているれっきとしたスクールアイドルである

 

明人「ん?何だ、綴理か。どうした?それに後ろの……。ああ、一年か」

 

綴理「やほ」

 

さやか「一年の村野さやかです」

 

明人「綴理、俺一応教師な。村野、この前のFes×Live良かったぞ」

 

さやか「えっ……あっ、はい。ありがとう……ございます……」

 

 目の前の光景に村野は少し疑問を隠せずにいる

 

明人「……まさか綴理、俺のこと説明してないな?」

 

綴理「……いるの?」

 

明人「いるだろ。こんなんでも一応顧問だぞ」

 

さやか「顧問!?」

 

綴理「……わからない。だってスクールアイドルクラブってことはアキがいるはずだ……」

 

明人「それやと俺、全国のスクールアイドルクラブにおることになってしまうがいね……」

 

綴理「さや、説明……必要?」

 

さやか「えっ……はい。お願い、します……?」

 

綴理「わかった。がんばる。えっとね、アキはね…………なに?」

 

 早々にギブアップ。どうやら説明する言葉が思いつかなかったらしい

 

明人「オッケー分かった。部室に行って梢に説明してもらおう」

 

綴理「はっ、そうすればいいのか。アキはすごいね」

 

明人「今回は梢じゃないか?」

 

綴理「なら、こずは凄い」

 

明人「ああ。ほれ、行くぞ。村野、ぼーっとすんな」

 

さやか「は、はい!」

 

    ◇

 

梢「水瀬先生、久しぶりに顔を出したと思ったらなんですか、先生について説明しろ、とは」

 

 まさに鬼

 目の前の梢は鬼神のごとく怒りを滲ませていた

 

明人「いやー、その、そろそろ顔出した方がいいかな〜と思っとって……。綴理おったし、その、ちょうど良かったというか……。綴理に俺のこと説明してもらおうと思て……」

 

 部室入った瞬間恐怖のあまり正座してしまう

 鬼の形相の梢に、珍しく言葉が長くなる

 

梢「無理だったから私の所に来た、という訳ですか」

 

綴理「ごめん……」

 

梢「つ、綴理は悪くないのよ?」

 

明人「綴理を泣かせるなー」

 

梢「水瀬先生は黙っていてください」

 

明人「はい……」

 

 キッと睨む梢に反論の言葉が見つからない

 

花帆「さ、さやかちゃん……これはどういう状況……?」

 

さやか「わ、分かりません……」

 

明人「こ、梢さーん……後輩たちも困惑してる所ですし説明を……」

 

梢「そうですね。お小言はこれくらいにしておきましょうか」

 

明人「出来ればもう二度と喰らいたくない」

 

梢「それは先生次第です」

 

明人「はい……」

 

 勝てない……

 梢の言葉を聞いて、教師とは思えない情けないことを思ってしまう

 

梢「さて、花帆さんと村野さんには水瀬先生の事を説明しないとね。この人は水瀬明人先生。この蓮ノ空スクールアイドルクラブの顧問よ」

 

花帆「顧問!?いたんですか!?」

 

明人「いるんだな〜これが」

 

梢「去年、先輩に引きずられて来たクセによく言いますね」

 

明人「聞こえ悪いな。誘拐されたって言えよ」

 

さやか「どっちも変わらないと思います……」

 

 困り眉になった村野がおずおずと答えてくる

 

綴理「アキはね、凄いんだよ。ボクたちの心と喋ってるみたい」

 

明人「状況に応じてそれっぽいこと言ってるだけだよ」

 

梢「それで当たってしまうのだから怖いわ」

 

 梢は片手でをこめかみを抑えるが、そういう反応をさせるとこちらも困ってしまう

 

花帆「はい!質問いいですか?」

 

 勢いよく手を挙げたのは日野下花帆。スリーズブーケに所属する一年生だ

 

明人「いいぞ。えっと……一年の日野下花帆だったか?」

 

花帆「はい!センセイは何で今まで来なかったんですか?」

 

梢・綴理「!」

 

梢「か、花帆さん……それは……」

 

明人「いや、新年度ってなると結構忙しくてな。俺一応教師二年目だからさ、慣れない部分が多くて仕事が終わんなかったんだよ。梢居るし大丈夫だろうな〜って思ってたら6月になっちまった」

 

花帆「ってことは、もう顔を出せるってことですか?」

 

明人「ああ。これからは出すぞ」

 

さやか「水瀬先生はダンスや歌の経験は?」

 

明人「ほぼ無い。歌の知識は最低限。ダンスは……まあどうにか頑張った」

 

梢「大丈夫よ、さやかさん。水瀬先生はこんな風に言ってるけど、アドバイスはしっかりしてるから」

 

明人「いうて去年はどうこう言った記憶無いけどな。全員元から出来てたし」

 

梢「そうだったかしら?」

 

明人「ま、今年の一年も特に言うことなさそうだけどな。村野は今でもレベル高いし、日野下には梢が付いてるし。……俺の出番なくない?」

 

綴理「大丈夫、アキは凄いよ」

 

明人「あんた、それしか言わんげんねぇ……」

 

花帆「げんね……?」

 

梢「金沢弁よ。先生、金沢出身なの」

 

 梢が日野下に耳打ちする

 

さやか「綴理先輩がそこまで言うなら。水瀬先生、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」

 

明人「堅い堅い。もっと緩くていいぞ。綴理なんてタメな訳だし。いや別にオッケーしたこともないけどな?」

 

綴理「アキはアキだよ」

 

明人「はいはい。そうだな。で、今から練習か。ほれ、行った行った」

 

花帆・さやか・梢・綴理「はい!」

 

    ◇

 

梢「先生」

 

 部室にひとり残った梢に声をかけられる

 

明人「梢?もう全員行ったぞ。部長が行かないんじゃ意味ないだろ」

 

梢「そのっ……もう大丈夫、なんですか……?」

 

明人「それを決めるのは俺じゃない。……なあ、歌うのか?綴理と」

 

 ダメ元で問いを投げかけてみる。返ってくる答えは分かってる。もう、何度も聞いた

 

梢「はい」

 

明人「っ!」

 

 返ってきた答えは、前とは違った

 

明人「……そうか、日野下達か。いい後輩持ったな」

 

梢「ええ。本当に」

 

明人「……伝えておいてくれ、ありがとうって。……このまま、続けばいいな」

 

梢「……練習に行ってきます」

 

明人「ああ。………慈……」

 

 右手首についた純白のミサンガを優しく撫でる

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