壊れた如雨露といつか花咲く大輪の花   作:坪継

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11話

 

梢「ということなんです」

 

 地方大会で手伝ってくれた人たちにお礼がしたい

 それが梢たちからの提案だった

 

明人「いいじゃんか。具体的になにするとか決まってんのか?」

 

さやか「本当は、優勝出来ればそれが一番だったんですが……」

 

梢「それで、私たちで考えたんです」

 

明人「ほーん?」

 

綴理「わからない?」

 

明人「……まあ」

 

 若干嬉しそうな顔で聞いてくる綴理にノってみる

 

綴理「アキ、ボクたちはスクールアイドルなんだ」

 

慈「だったら、やることはひとつでしょ?そ、れ、はーー」

 

瑠璃乃「やっぱライブっしょ!!」

 

 瑠璃乃の声が部室に大きく響く

 

慈「あー!ずるい!私が言おうとしてたのに!」

 

綴理「ボクも言いたかった……」

 

瑠璃乃「えっ!?あっ、さーせん!」

 

慈「ほらるりちゃん、ちゃんと謝んな」

 

瑠璃乃「うぅっ……って、めぐちゃんもじゃん!」

 

慈「めぐちゃん言い切ってないしー」

 

綴理「めぐも、いじわるするの……?」

 

 綴理は涙目になり、上目遣いで慈に迫る

 

慈「くっ……。こいつわかってやってんのか……?」

 

さやか「慈先輩!綴理先輩を泣かせましたね!」

 

慈「ひいっ!?綴理のママが怒った!?」

 

綴理「ボク、いじわるされた。しくしく」

 

慈「こいつわかってやってるだろ!!」

 

さやか「慈先輩!」

 

慈「あーん、ごめん!ごめんって!」

 

 鬼の形相の村野に屈したのか、慈がヤケクソ気味に謝る

 

梢「あなたたちねぇ……」

 

明人「ははっ、楽しそうだな」

 

梢「水瀬先生も止めてください」

 

明人「楽しそうなんだからいいだろ」

 

梢「水瀬先生!」

 

 梢が顔をしかめた瞬間、部室の扉が開く

 

花帆「いいこと考えましたー!」

 

梢「あら、どうしたの、花帆」

 

花帆「えっ、あっ。そーですよ、花帆ですよー……えへへ……」

 

 日野下は梢に名前を呼ばれると、嬉しそうにモジモジしだす

 

明人「なあ、アレなに」

 

慈「私も花帆ちゃんのこと花帆って呼ぼうかな」

 

瑠璃乃「こずこずパイセンに怒られると、ルリ思うな」

 

 みらくらぱーく!の会話を苦笑いで流し、スリーズブーケのふたりに視線を戻す

 

花帆「あのですね!閃いたんです!お世話になった人たちに、お礼のライブをしませんか」

 

 日野下の提案は、さっきまで話していたことと全く同じだった

 

梢「やりましょう、ライブイベント。今年度の私たちを支えてくださった方々のために、ぜひ」

 

花帆「はいっ!」

 

 日野下は小さくガッツポーズにして、元気よく答える

 

梢「それなら、まずはライブでなにをするかを考えましょうか」

 

花帆「はいはい!新曲!!新曲がやりたいです!」

 

 席についてライブの話し合いを始めると、日野下がまた大きく提案をする

 

さやか「新曲、ですか」

 

慈「たしかに、お礼を伝えるってなったら新曲もアリかもね」

 

瑠璃乃「なんなら、そっちの方がもっと伝わるんじゃね?」

 

梢「そうね。ならまずは新曲をーー」

 

花帆「梢センパイ!」

 

梢「花帆?」

 

花帆「あたしに作らせてください!」

 

 またしても大きく手を挙げた日野下が勢いよく発言をする

 

梢「花帆が、ひとりで?」

 

花帆「はい!って言っても、まだ作曲は無理ですけど……。作詞は、あたしひとりでやらせてください!」

 

梢「花帆ーー!なら、お願いするわね」

 

花帆「はい!なら早速、作ってきまーす!!」

 

 日野下は勢いよく部室を飛び出していった

 

梢「ふふっ、花帆ったら」

 

瑠璃乃「おー!花帆ちゃんやる気だねえ」

 

慈「逆に心配になるんだけど……」

 

明人「……なあ、梢」

 

梢「はい?」

 

明人「いつも作詞ってどうやってる?」

 

梢「いつもは私が先に作曲して、二人三脚で作っていますけど……」

 

明人「さ、参考にならねー……」

 

梢「?」

 

さやか・明人「……」

 

 なにもわかっていない浮かれポンチを横目に、村野と一緒に頭を抱える

 

    ◇

 

明人「取り合えず……なにする?」

 

慈「って、なんにもわかってないんかい!」

 

 話もまとまり、指示を出そうとしたが出す指示が思いつかず梢に聞いてしまう

 

梢「あはは……と、取り合えず、お礼のライブですから協力してくれた方々に招待状を書く、なんていうのはどうでしょう」

 

綴理「すごくいいと思う」

 

さやか「決まり、ですかね」

 

瑠璃乃「なら早速書かないとじゃん!人数多いかんね。急がないと」

 

慈「ステージ制作もでしょ?結構時間足りないかも……」

 

明人「そこはどうにかするしかないな……。取り合えず、俺は先にステージ制作に入ってるから」

 

梢「なら急いで書きましょうか」

 

 それぞれがライブに向けての準備に動き出した

 

    ◇

 

 あれから数日、日野下が曲ができたと見せに来た

 梢の持つノートを中心に、全員が覗き込む

 

花帆「……!」

 

さやか「な、なんだかこっちまで緊張してきました」

 

綴理「ん」

 

 全員が息を呑み、梢の言葉を待つ

 瞬きの音すら聞こえそうになった時

 

梢「うん。素敵な歌詞だわ。あなたらしくて、まっすぐな気持ちが伝わってくる。これでいきましょう」

 

花帆「あっ、ありがとうございます!」

 

 梢の言葉に、日野下は嬉しそうな声を出す

 

瑠璃乃「やったじゃん、花帆ちゃん!」

 

慈「まさかほんとにひとりで書いてくるなんてねー」

 

明人「もう少し詰まるもんだと思ってたけどな」

 

梢「がんばったのね、花帆」

 

花帆「ま、まあ!梢センパイを優勝させるって誓いましたから、ね!これぐらいできるようにならなくっちゃ、ですよ!」

 

梢「ふふっ、ずいぶん頼りになる後輩だこと」

 

 日野下がドヤ顔で答えるのを、梢は嬉しそうに見つめている

 そんなとき、部室の扉が開く

 

慈「よーし!これで曲のめどがついて、ステージ制作もあとひと踏ん張り!いや、ふた……よんふんばりぐらい!」

 

さやか「今回、招待した人数が多くなってしまって、音楽堂が使えませんからね……」

 

瑠璃乃「でっかいステージ作る労力ぱねえー!これからもこれが続くとなるも、ルリ、ワクワクしてきちゃった!」

 

綴理「いっぱいいっぱい、トンカンしようね」

 

慈「まあ、なんとかなるでしょー!」

 

 慈の楽観的な発言と共に、扉から入ってきた人影は日野下の後ろに回る

 

沙知「いやあ、みんな元気すぎだねい」

 

花帆「うわぁ!びっくりした!いつの間に!?」

 

沙知「作詞の出来派あましも気になってからね。なんせ花帆はものすごーく苦労しててーー」

 

花帆「わーわーわー!なんでもありません!なんでもありませんからね!?梢センパイ!」

 

梢「え?ええ」

 

 困惑する梢を横目に、沙知の隣まで行く

 

明人「なんだ、沙知が手伝ってのか」

 

沙知「別に。あたしは気分転換に散歩させただけですよ。まあその前にノート3冊もダメにしてましたけど……」

 

明人「やる気だけは十分だったからな……。それでも、思ったりやるようになってんだな。日野下も」

 

沙知「ほれほれぃ、教え子の成長は嬉しいだろう?」

 

 沙知はニヤニヤしながら聞いてくる

 

明人「まだわかんねぇよ。でも……怖くはなくなった」

 

沙知「なーっはっはっは!明人先生もすっかり花帆たちに巻き込まれてますねぃ」

 

明人「全くだ。教師使いの荒いやつらめ。……でも、少しくらいは頼ってほしかったな」

 

沙知「ほ〜?」

 

 心底憎たらしい笑みを浮かべる沙知を見て、続けようとしていた言葉を止める

 

明人「……ほら、お前ら。ここに人手がいるぞ、逃がすな」

 

沙知「あ、ちょっ」

 

慈「綴理、るりちゃん、つかまえろー!」

 

綴理・瑠璃乃「おー」

 

 驚いて逃げようと動き出した沙知だったが、綴理と瑠璃乃に囲まれあっさり捕まる

 

沙知「つかまっちゃったかぁ。しょーがないなー。なにやればいい?」

 

さやか「ええ!?いいんですか!?」

 

沙知「あたしはむしろ、キミたちに助けてもらった立場だからね。もう少しでやってきたことが、無駄になるところだったんだ。もちろん手伝うさ」

 

さやか「生徒会長……。ありがとうございます!」

 

 村野が深く頭を下げる

 

瑠璃乃「ほんで、さちパイセンは、なにができるんですかー?」

 

綴理「なんでもできるよ」

 

 瑠璃乃の問いかけに、綴理がサムズアップしながら答える

 

沙知「いやさすがになんでもは!どれも70点ぐらいだよ!当時から、歌は梢!ダンスは綴理!トークは慈!キミらのほうがずっとうまかっただろうに」

 

梢「ふふっ、ご謙遜を」

 

慈「なんたって沙知先輩は、ひとりで私たち3人とユニットを組んでた、バイタリティモンスターだからね!」

 

 慈はドヤ顔で答える

 

さやか「3ユニットぜんぶやってたんですか!?」

 

瑠璃乃「覚える量も3倍じゃん!すーげー!」

 

沙知「むしろいちばん大変だったのは、ライブでの早着替えだぜ!3組連続の時なんか、ひたすらMCで繋いでもらったねぃ」

 

 沙知を中心に、思い出話に花を咲かせる

 

慈「はいはい、そこまで。続きは手を動かしながらにするよ!」

 

明人「ステージ制作間に合わないぞ」

 

 慈と用具を取り出しながら指示を出す

 

沙知「ステージ作りか!それなら確かにあたしの得意分野!」

 

綴理「ボク、釘打つのも、ペンキ塗るのも、すごく上手になったよ」

 

沙知「そうかそうか!よーし、そんじゃ久々に腕を振るうとしますかねい!明人先生も働くんでしょう?」

 

明人「残念、と言いたいところだが。生憎人手が足りないから俺も参加だ」

 

沙知「久しぶりに作業の速さで競争でもします?」

 

明人「やだよ、負けるじゃんか」

 

沙知「あっははっ。なら、早速行くとしますかね」

 

    ◇

 

沙知「いやぁ、大っきくなったもんだ。スクールアイドルクラブも」

 

梢「掛け合ってみたのは、正解だったみたいですね」

 

 石川県立図書館。今回の、1月度Fes×Liveの会場でステージ制作を進める

 

明人「図書館でライブとか聞いたことねー、とは思ったけどな」

 

梢「ふふっ、そこは花帆ですから」

 

花帆「梢センパーイ!これにみんなで寄せ書きしましょう!」

 

梢「今行くわ」

 

 日野下に呼ばれて、梢は奥へ向かっていく

 

沙知「うんうん、梢もいい顔をするようになった。これであたしも、安心して卒業できる」

 

明人「急だな。いきなり卒業とか言うなよ」

 

沙知「いきなりでした?」

 

明人「いきなりだよ。それに、言葉にしては表情暗かったし」

 

沙知「……マジか」

 

 沙知は苦笑いしながらこっちを見てくる

 

明人「アレで隠したつもりか」

 

沙知「こういう時だけ勘が鋭いなぁ」

 

明人「ひとこと余計だ」

 

沙知「……別に、卒業が嫌とかじゃないんです。でも、桜の木を見るたびに、四度目の桜が頭を過るんです」

 

明人「四度目の、ねえ……」

 

沙知「あたしは先輩たちにたくさんのものを貰った。本当に、たくさん。だから、かな……」

 

 一瞬懐かしむような表情になったが、すぐに暗いものに戻る

 

沙知「……あたしはあの子たちに、先輩たちから貰ったように、なにか残せたんですかね」

 

明人「俺は沙知の先輩を知らないから、沙知がどれだけのものを貰っのかは知らない。でも、今のクラブ見てそうは思わないぞ」

 

沙知「どう、ですかね……」

 

 沙知の顔はまた暗くなる

 

明人「3月の蓮華祭までいるのか?」

 

沙知「え?まあ、はい」

 

明人「なら蓮華祭のライブ、見に来いよ」

 

 用具を持って別の場所に向かいだす

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