花帆「月火水木金土日 君となら Holiday
Nonstop で最前列からお願い一緒に
君の世界へ連れてって」
レッスンルームに響く、日野下の歌声
キュッと、床と靴の擦れる高い音がだんだん掠れていく
明人「……」
花帆「っ!」
音楽を止める。日野下は動きを止め、肩で息をしながらこちらを見てくる
明人「ほれ」
花帆「わわっ。……タオル……」
タオルを投げかける。困惑した様子でそれを使って汗を拭いていく
明人「休憩な」
花帆「っま、まだできますよ!梢センパイも頑張ってるんだから、あたしもーー」
明人「ダメだ」
花帆「ひゃっ」
首筋に冷えたペットボトルを押し当て、言葉を抑える
明人「……そうだ、なら言い訳を作ろう」
花帆「言い訳?」
明人「俺が日野下と話すために練習を止めた。これなら梢に怒られるのは俺だけだな」
花帆「え、え?で、でも……」
明人「怪我するぞ。……4月みたいにはなりたくないだろ」
思わず声が低くなってしまう
花帆「っ!は、はい」
日野下は少し驚いたような表情をしつつも、壁を背に座って休憩を始める
明人「……悪い」
少しだけ怯えた様子の日野下に謝りを入れ、俺もその隣に座る
明人「どうだ、楽しいか?」
花帆「はい!」
明人「聞くまでもなかったな。いいよなー、日野下。楽しそうに踊るもんな」
花帆「そ、そうですかね〜?えへへ……」
少し照れながら答える日野下を見て、少し頬が緩む
明人「配信頑張ってるんだったか?」
花帆「はい!もう楽しくって楽しくって」
明人「そりゃよかった。配信は楽しいのが一番だからな。心配だったんだぞ?梢がちゃんとスクコネについて教えらるか」
花帆「あ、あー……。そこは、綴理センパイに教えてもらいました……」
少し視線を逸らし、気まずそうに答えてくる
明人「やっぱダメだったんだな……」
花帆「で、でもでも!梢センパイも一生懸命教えようとしてくれて!」
明人「そうだな、梢だもんな。あいつ、後輩には甘いだろ」
花帆「えぇ!?た、確かに優しいですけど〜……練習は……」
明人「朝練遅刻して説教されたことあるか?」
花帆「ない、です」
明人「去年までなら2時間お説教コースだな」
花帆「そんなに!?あ、あたしそんなことされたことないや」
明人「ほら、後輩には甘いんだよあいつ。同級生と上には厳しいのになー」
花帆「あ、はいはい!センセイって去年からクラブにいるんですよね?」
日野下は元気よく手を挙げ、質問してくる
明人「ああ」
花帆「去年までの梢センパイのことを教えてほしいなー、なんて〜」
明人「ははっ、梢のこと大好きだな。いいぞ。あ、怒られない範囲な」
花帆「はーい!ならならーー」
◇
花帆「梢センパイがポニーテール……!」
明人「そればっかりだな」
花帆「だってだって!ぜったいに、可愛いじゃないですか!!」
明人「はいはい」
目を輝かせ、今にも梢の良さを語りだしそうな日野下を若干体を引きながらなんとか抑える
明人「ほら、そろそろ練習戻れよ」
花帆「あ、もう20分も休憩してる」
明人「日野下」
花帆「はい?」
明人「よく頑張ってるよ、ほんと」
花帆「ありがとう、ございます……?」
首をかしげながら礼を言ってくる
明人「振りのキレが出てきたな。振り付け、少し梢を意識してるのか?声も通るようになってきてるし。きっといいものになる。楽しみにしてるぞ、撫子祭」
花帆「ーー!はい!!」
勢いよく立ち上がった日野下は、駆けるように練習に戻っていく。さっきよりも笑顔で、楽しそうに
◇ ◇ ◇ ◇
あっという間の20分
センセイが、梢センパイのことをたくさん話してくれて、話に出てくる梢センパイはどれも凄くて、かっこよくて、可愛くてーー
花帆(あ、まだいる)
ステップを少し変えて、センセイの方を向いてみる
明人「!」
花帆(驚いてくれた!えへへっ)
驚いた様子のセンセイがどこか面白くて、いつもより楽しくなってしまう
練習してたウィンクをセンセイに向かって飛ばして、すぐにいつもの振り付けに戻る
花帆(見てくれてる。……なんか、もっとできる気がする)
振り付けを少しだけ大きくしてみる
梢センパイとは違うかもしれないけど……。でも、これがあたしだもん!
花帆(えへへっ、頑張らないと!)