壊れた如雨露といつか花咲く大輪の花   作:坪継

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3話

 

瑠璃乃「バイバイ!ぐっばーい!ぐっどらっく!はばないすでー!」

 

 夏も暑さが増してきた7月。空港の前で、少し久しぶりな聞き慣れた声がする

 

瑠璃乃「ふぅ……」

 

明人「瑠璃乃」

 

瑠璃乃「あっ!アキ君!!」

 

 金髪の少女は荷物を放り出して抱きついてきた

 

明人「っとと……。久しぶりだな」

 

瑠璃乃「うん!!」

 

 今日は、瑠璃乃が日本に帰ってくる日だ

 

    ◇

 

瑠璃乃「いやーアキ君の車は快適ですなー。まだ社会人二年目だってのに、何でこんないい車持ってんの?」

 

明人「スクールアイドルクラブの話したら、親が勝手に買ったんだよ。それでクラブの人乗せてあげなさいって」

 

瑠璃乃「あははっ!おばさん達っぽい!」

 

明人「まあおかげで色々楽できてるから、何も言えねぇや」

 

瑠璃乃「ねえねえ!スクールアイドルクラブってどんな所なの?楽しい?」

 

明人「……ああ。楽しいよ」

 

 楽しいのは、事実だ

 ……うまく誤魔化せているだろうか

 ルームミラーから見える顔は

 ーーまあ悪くない

 

瑠璃乃「そうなんだ!楽しみだな〜。めぐちゃん元気してる?」

 

明人「………ああ。元気にやってるよ。補習」

 

 少し言葉を選んだ。でも嘘は言ってない。元気ではある。昨日も補習に文句言ってたくらいには

 

瑠璃乃「あはは……。昔は悪い方ではなかったんだけどにゃぁ……」

 

明人「ったく……。瑠璃乃は入るのか?スクールアイドルクラブ」

 

瑠璃乃「うん!めぐちゃんと一緒に、世界中を夢中にするんだ!!」

 

明人「……そうか」

 

 結局、

 瑠璃乃が帰ってくるまで、どうにもならなかったな……

 

    ◇

 

 学校に戻り、部室の扉を開く

 

明人「客だぞー」

 

梢「客?」

 

瑠璃乃「たのもーう!」

 

明人「道場破りかよ」

 

瑠璃乃「ここがスクールアイドルクラブでお間違いないですかー!?」

 

梢「え、ええ、そうだけれど」

 

綴理「アキ。と……誰?」

 

瑠璃乃「大沢瑠璃乃!入部志望です!」

 

花帆「し、新入部員だーー!」

 

 日野下の嬉しそうな声が、学校中に響き渡る

 

    ◇

 

瑠璃乃「大沢瑠璃乃って言いまーす。今月から、蓮ノ空に転入してきました。ぺーぺーの一年生です!」

 

梢「へぇ、これまでカリフォルニアの学校に通ってたのね」

 

瑠璃乃「いえす!ほんとは夏休み明けに転入してくる予定だったんですけど、待ちきれなくてきちゃった!あ、来ちゃいましたです!」

 

梢「いいのよ、堅苦しくしないで。普段通りの言葉遣いで、構わないわ」

 

明人「梢、やっぱ後輩には甘いんだな。去年だったら絶対キレてたぞ」

 

綴理「うん。こずは優しい」

 

 耳打ちする相手を間違えたらしい。梢全肯定モンスターに話しかけてしまった

 

綴理「よろよろ、るり」

 

さやか「流石の順応力……ええと、よろしくお願いします、瑠璃乃さん」

 

花帆「はいはい!!」

 

 日野下が勢いよく手をあげる

 

瑠璃乃「なんだね花帆ちゃん!」

 

花帆「瑠璃乃ちゃんはさっき先生と一緒に入ってきたけど、どうして?」

 

瑠璃乃「ふっふっふっ……ルリとアキ君は所謂昔馴染ってやつでしてな」

 

明人「3年くらい近くに住んでただけだ。蓮ノ空に来るっていうから、空港まで迎えに行ってたんだよ」

 

瑠璃乃「スクールアイドルクラブのことはアキ君から聞いてます!なんか楽しそうなんで来ました!!」

 

さやか「た、楽しそう……?」

 

花帆「わかる!いいよね、スクールアイドル!」

 

瑠璃乃「そうそう!みんなでわーって盛り上がって、うおーって感じになっています、キラキラーって輝いて!それがなんかもうメッチャ眩しくて!すごーい!いいじゃーん!って、ルリ思った!ゆえにルリ有り!」

 

花帆「うんうん、だよねだよね。なっちゃうよね!」

 

明人「瑠璃乃はまだ所属ユニットが決まってないから、そっちでうまくやってくれ。……まあまだ自己紹介タイムにしとくか。終わったら練習な」

 

梢・綴理・花帆・さやか・瑠璃乃「はい!」

 

 軽く流れを伝えて部室を出る

 

明人「まだ大丈夫そうか。………慈、もう時間残ってないみたいだぞ」

 

慈「なにが?」

 

明人「っ!!……なんや、おったんか。珍しいな、部室に来るなんて」

 

慈「たまたま通りかかっただけでーす。……るりちゃん、帰ってきたんだ」

 

明人「ああ」

 

慈「……私行くね」

 

明人「……おう」

 

慈「ほんっと……そういうとこだよ……。優しすぎんだっての」

 

 そう言い残し、慈は去っていった

 

明人「…………まずは、瑠璃乃からだよな」

 

    ◇

 

瑠璃乃「あ……アキ君……」

 

明人「……何だ、意外と早かったな」

 

 翌日、部室で作業を終え、廊下に出るとちょうど瑠璃乃が通りかかった。昨日の瑠璃乃からは考えられないくらい肩を落とし、テンションの下がった瑠璃乃がそこにいた

 

瑠璃乃「花帆ちゃん達にいろんな所連れ回されて、もう限界です……」

 

明人「あぁ……。もう少し遠慮を覚えさせた方がいいかもな……。ほれ、入れ」

 

瑠璃乃「………あいあいさー……」

 

明人「ったく……もっと容量増やさないとなー」

 

瑠璃乃「返す言葉もござーやせん……」

 

 パイプ椅子を1つ出すと、瑠璃乃はそれを引き寄せて隣に座ってくる

 

明人「……隣に座るの、好きなのか?」

 

瑠璃乃「うん……」

 

明人「……そか」

 

 机に突っ伏す瑠璃乃の頭に手を伸ばす

 

瑠璃乃「んっ……んー……?」

 

明人「ま、これからだ」

 

瑠璃乃「ん」

 

    ◇

 

瑠璃乃「それじゃあその、ちょっと失礼しまーすー!」

 

 中庭でレッスンしているのを見かけ、近くまで行ってみると瑠璃乃がダッシュでその場を離れていっているのが見えた

 

明人「……え、何あれ?」

 

花帆「あっセンセイ!」

 

さやか「こんにちは」

 

明人「こんにちは。で、瑠璃乃はどうしたんだ…」

 

梢「お手洗いにと」

 

明人「……そうか。日野下、村野、瑠璃乃が帰ってこないようなら探しに行ってやってくれ。その場合は多分迷ってる」

 

花帆「はーい!」

 

さやか「分かりました。蓮ノ空の校舎は広いですからね」

 

 しばらく待ったが、瑠璃乃は帰ってこない。日野下と村野は瑠璃乃を探しに行った

 

明人「俺も少し席外す。先に自分たちの練習しといてくれ」

 

梢「花帆さんたちは……」

 

明人「あー……俺の予想だとしばらく帰ってこない。まあ理由は……その内わかる。じゃ」

 

綴理「いってらっしゃい」

 

 さて、いい方向に進めばいいけど

 

    ◇

 

瑠璃乃「あー……やっちったなぁ……」

 

 バッセンのベンチに座り、ぼんやりする瑠璃乃

 そこにはハイテンションのハの字も見えない

 

明人「お手洗いにしては随分な遠出だな」

 

瑠璃乃「アキ君……ルリも戻ろうとは思ったんだぜー……?」

 

明人「で、日野下と村野を向かわせたのは正解だったか?」

 

瑠璃乃「あんなピンポイントで2人が来るかねーとは思ってたけど、アキ君だったんだ……」

 

明人「別に言わなくても勝手に行ったと思うぞ。……まあ、間違いではなかったっぽいな。ったく……飛ばしすぎなんだよ」

 

瑠璃乃「完全に手のひらで踊らされてる気分だぜー。……アキ君には、話したことあったっけ?」

 

明人「ないな。そういうもんなんだろ?」

 

瑠璃乃「やっぱアキ君には敵わねー。……花帆ちゃんがね、また明日、クラブに来てって」

 

明人「そうか」

 

瑠璃乃「どうするべきかな……」

 

明人「……それは俺が決めることか?」

 

瑠璃乃「……違う。うん、分かった。ルリが決めるよ」

 

明人「おう。ほら、帰るぞ。勝手に外出したことは、不問にしといてやるよ。……寮母さんをどうやって誤魔化そうかね」

 

瑠璃乃「うっ……さーせん……」

 

明人「ふっ……。悪いと思ってるなら明日部室に来ることだな」

 

瑠璃乃「……はーい」

 

明人「心配すんな。なんだかんだやってける」

 

瑠璃乃「……ん」

 

    ◇

 

 日野下たちの考えが上手くいったのかと考えながら、部室の扉を開く

 

明人「……何で段ボール……?」

 

さやか「あっ、中に瑠璃乃さんが入っているので気をつけてください」

 

明人「……は?」

 

花帆「どうです?名付けてぼっちハウス!今は瑠璃乃ちゃんが練習前に充電回復しとくーって入ってます!」

 

明人「……取り合えず、解決?」

 

花帆「はい!」

 

 日野下は胸を張って答える。それに対して苦笑いで返すことしか出来ず、視線を梢に向けてしまう

 

梢「先生、私にそんな目を向けても何も言えませんよ」

 

明人「……綴理は……無理か……」

 

綴理「ボクなんなの?」

 

 綴理からの文句を華麗に無視して椅子に座る

 

瑠璃乃「……ん……」

 

花帆「あっ瑠璃乃ちゃん!充電回復……瑠璃乃ちゃん?」

 

さやか「どうしたんですか?」

 

 瑠璃乃は段ボールから出てフラフラと立ち上がると、そのまま隣の椅子に座ってくる

 

瑠璃乃「ん………」

 

 そのまま机に突っ伏し、だらけ始める

 

明人「……結局ここか」

 

瑠璃乃「ん……」

 

梢「あらあら」

 

綴理「ふふっ、るりはアキのことが大好きなんだね」

 

花帆「る、瑠璃乃ちゃん段ボールを捨てた……!?」

 

さやか「ほ、ほら!先生がいない時は使えますから!」

 

明人「……はぁ……今だけな」

 

    ◇

 

瑠璃乃「というわけで、よければ正式入部させてもらいたいんですけど……。ど、どうでしょーか!」

 

梢「ええ、もちろん歓迎するわ。充電切れに関しても、大丈夫よ。コミュニケーションが取れるだけ、十分すぎるほどありがたいわ。ねぇ、綴理」

 

綴理「ボク取れてるよね?コミュニケーション」

 

明人「……ギリギリだな」

 

梢「ギリギリね」

 

さやか「ギリギリですね」

 

綴理「ボクなんなの……」

 

瑠璃乃「あはははっ、うける!」

 

綴理「うけたよ。よかったね……?」

 

 綴理は凄く不安そうな顔で首を傾げる

 

梢「まあ最悪、水瀬先生の近くなら急速充電できるみたいだし、問題はないわ」

 

瑠璃乃「うぅっ……それは……恥ずかしいでごぜーます……」

 

梢「ふふっ」

 

花帆「そういえば瑠璃乃ちゃんって、どうするんですか?蓮ノ空って、みんなユニットごとに活動するんですよね」

 

明人「っ…」

 

さやか「それは、梢先輩か綴理先輩が掛け持ちをする、ということになるんでしょうか」

 

瑠璃乃「え?ううん!ルリはめぐちゃんと組むよ!だって、そのために日本に帰ってきたんだもん!」

 

明人「……っ……」

 

綴理「アキ……」

 

明人「っ……大丈夫や……」

 

花帆「…………………めぐちゃん?」

 

さやか「って、どちらさまですか?」

 

瑠璃乃「え!?!?」

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