壊れた如雨露といつか花咲く大輪の花   作:坪継

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6話

 

明人「ほい、申請通ったぞ」 

 

 梢「ありがとうございます、水瀬先生」  

 

 梢から渡された申請、それは温泉旅館の手伝いのための二泊三日の外泊許可だった  

 

明人「……旅館の手伝いにミニライブ。しかも市内ライブの前日か。ギリギリだな」  

 

梢「慈が勝手に決めてしまって……」  

 

明人「流石慈。自己中ギリギリ3ミリ手前……」  

 

梢「あはは……。瑠璃乃さんと全く同じことをいうんですね……」  

 

明人「俺も、裏方になるが、いけるだけ手伝いには行く。なんかあったら言えよ」  

 

梢「はい。お願いします」  

 

    ◇  

 

明人「なじしてそうなが……」  

 

慈「だーかーらー!一番貢献したユニットがライブと豪華夕食の権限なの!」  

 

 慈たちが旅館に向かってしばらく

 様子を見に行くと、慈が『ゲームを始めた』と言い出した

 

明人「いや、見せてもらったメッセージにはーー」 

 

慈「いーから!アキ君はそこら辺で見てるの!」

 

明人「はぁ……なにする気だ?」  

 

慈「べっつにー」  

 

明人「へいへい」  

 

 慈に流されるがまま、フロントの適当な椅子に座る  

 

花帆「あっセンセイだ!」  

 

梢「来ていらしたんですね」  

 

明人「おう、スリーズブーケ。その様子だと……一仕事終えたって感じか?」  

 

花帆「はい!」  

 

梢「花帆さんのおかげで、いいものができましたよ」  

 

花帆「えへへ〜それほどでも〜」  

 

梢「ふふっ、本当に頑張っていたじゃない」  

 

花帆「こ、梢センパイがいうなら〜。っそれに!国産牛のためですから!」  

 

明人「国産牛……ああ、夕食の話か」  

 

花帆「そうなんです!慈センパイが、国産牛が食べられるのは一つのユニットだけって言い出して!!慈センパイってすっごくいい人なんだって思ってたのに、花帆、残念です!」  

 

 日野下は頬を膨らませ、慈への不満を漏らす。梢が宥めるがどうやら腹の虫が治まらないようだ  

 

明人「ははは……。梢、慈の意図わかるか?」  

 

梢「やっぱり、なにか企んでるんですね」  

 

明人「なんだ。気づいてなかったのか?」  

 

梢「なにか企んでること以外は。まあ、あまり酷いことにはならないと思っているので」  

 

明人「そうだな」  

 

慈「ちょっと、スリーズブーケ!そこでサボってると勝てなくなるよ!」  

 

花帆「はっ!国産牛!!梢センパイ、いきましょう!」  

 

梢「ええ」

 

    ◇

 

明人「ふぅ……いい湯やった」

 

 旅館の方のご厚意で温泉に入らせてもらい、その余韻に浸りなが廊下を歩く

 

慈「どうしよー……」

 

明人「慈?」

 

慈「アキ君。……入ってきたの?」

 

明人「ああ。旅館の人が入っていいって言ってくれてな。………なにやった?」

 

慈「なんもやってないし」

 

明人「ふーん……。計画は失敗か?」

 

慈「まだ失敗じゃないし!!」

 

明人「しかけてんじゃねえかよ」

 

慈「うぐっ……。図ったな……?」

 

明人「自爆しただけだろ」

 

瑠璃乃「めぐちゃーん!」

 

慈「あっるりちゃん!」

 

明人「じゃ、俺学校に戻るから。結果は明日のライブ前にでも聞こうかね」

 

慈「はーい。いくよ、るりちゃん」

 

瑠璃乃「うん。アキ君、また明日ー」

 

明人「明日な」

 

    ◇

 

明人「……だらぶち」

 

慈「うぅっ……」

 

明人「露天風呂で騒ぐからそんなことになるんだよ」

 

慈「べ、別にいいでしょ!今日のミニライブが成功すれば!」

 

瑠璃乃「まあまあ、めぐちゃんにも考えがあったわけだし」

 

明人「きっと大層立派な考えだろうな」

 

慈「……別に、『ライブに出られるのが当たり前』だって思って欲しくなかっただけ。………余計なお世話、だったけど」

 

明人「!」

 

瑠璃乃「へーきだよ、めぐちゃん。ほら、聞こえる。みんな一生懸命がんばってる」

 

 慈と瑠璃乃がなにか喋っている

 ……上手く、聞き取れない

 

明人「…ほれ、スリーズブーケも最後の曲だぞ。そろそろ準備してこい」

 

慈「やばっ。るりちゃん行くよ!」

 

瑠璃乃「りょーかい、めぐちゃん!」

 

 2人は駆け出していく

 

明人「……そうか。っ……」

 

 2人の背中が遠くに見えた気がした

 心の中でなにかが……

 

綴理「次はボクたちDOLLCHESTRAがーー」

 

    ◇

 

 翌日、市内のライブの機材や衣装を運ぶため、車で集合場所に向かう

 

明人「……来ないな」

 

 時間になっても誰も来ない。梢も、村野も

 

花帆「センセイ!!」

 

明人「あ、やっと来ーー。どうした?」

 

 全員が額に汗を浮かべ、肩で息をする

 

さやか「はぁ……はぁ……。と、取り合えず機材と衣装を!」

 

瑠璃乃「車デッカイから何人かは乗るよね!?なら……。あれ?めぐちゃんは?」

 

明人「バスで行ったんじゃないのか?」

 

梢「まさかーー」

 

花帆「っ梢センパイ!慈センパイから……!!」

 

梢「『ごめん、ちょっと遅れる。みんなはライブの準備がんばって』……慈、まさか1人で旅館の手伝いをする気じゃないでしょうね……」

 

明人「旅館の手伝い?いや、それは昨日で終わりだろ?」

 

さやか「はい。終わりました。なんですけど……」

 

綴理「めぐの動画がバズって、予約、沢山来たらしい」

 

梢「なので慈なら……」

 

瑠璃乃「まずい、めぐちゃんならやりかねない!!」

 

花帆「い、急いで旅館に戻らないと!」

 

さやか「それだとライブの準備が……」

 

明人「っ取り合えず機材と衣装積め!んで全員乗れ!5人なら入る」

 

花帆「それだと慈センパイが……」

 

梢「いえ、急いで準備を終わらせてきましょう。このまま戻っても慈に申し訳ないわ」

 

明人「出すぞ」

 

 全員が乗ったのを確認し、アクセルを強く踏み込む

 

    ◇

 

 とにかく全員で急いでライブの準備を済ませ、旅館まで戻る

 

瑠璃乃「ヤバいヤバい!動画の再生数どんどん増えてるよ!!予約しましたってコメントでいっぱい!」

 

花帆「センセイ、旅館はまだ着かないんですか!?」

 

明人「もう着く」

 

梢「ならすぐに身支度をすませましょう。先生は旅館の前で待機していてください」

 

明人「ああ」

 

梢「いきましょう!」

 

 全員急いで車から出ていく

 

明人「……っ……。まだ、だな」

 

 まだ一息つくには早い

 

明人「………なんだろうな………」

 

 ……なにか、落ち着かない

 

慈「アキ君、会場まで!早く!!」

 

明人「っ慈!?旅館はーー……1人か?」

 

慈「後で説明するから早く!!間に合わなくなっちゃう!」

 

明人「っああ」

 

 慈に急かされ、車を動かす

 

明人「なんで慈だけ……。他はどうした?」

 

慈「みんなまだ旅館の手伝い」

 

 段差を踏み、車体が少し揺れる

 

明人「っはあ!?ってことは……慈1人でライブするんか!?」

 

慈「私が場を繋ぐの。絶対に!」

 

 バックミラーに写る、大量の車の姿

 

明人「っ……あの量を捌いてから来たんじゃ間に合わない」

 

慈「なら間に合うまでつなぐ!」

 

明人「……無茶だ……」

 

慈「無茶なんて知るもんか!!みんなが私に繋いでくれたから……今度は私の番!!会場着いたらアキ君はすぐ旅館に戻って。絶対にるりちゃんたちを連れてきてよね!」

 

明人「っ………知らねえぞ」

 

    ◇

 

梢「水瀬先生!」

 

 旅館の手伝いを終わらせた5人が走ってくる

 

明人「乗れ。……出すぞ」

 

瑠璃乃「めぐちゃん、大丈夫かな……」

 

花帆「間に合いますかね……」

 

 日野下の問いに呼吸が止まる

 

綴理「アキ……?」

 

明人「……さあな」

 

 不意にハンドルを握る力が強くなる

 

綴理「……怖いの?」

 

明人「……うるさいげん」

 

さやか「とにかく、急がなくては……!」

 

明人「だからっ……。そんなん………間に合うわけないがいね」

 

綴理「アキ?」

 

明人「……なんでもない」

 

 また、アクセルを強く踏み込む

 

    ◇

 

 会場の空気は切れかけていた

 帰ろうと席を立つ人で視界が回る

 

瑠璃乃「めぐちゃ〜ん!」

 

慈「と、ゆーことで!ここからは、スクールアイドルクラブのステージが、始まるよ!」

 

 ライブが始まる

 いくらトーク力の高い慈でも無理だった

 いくら揃っても、人は帰ってこない

 ……そう思っていた

 

慈「まずはめぐちゃんたち!」

 

瑠璃乃「みらくらぱーく!で」

 

慈・瑠璃乃「ココン東西」

 

 無事ライブが始まった

 まずは良かった、と思った

 本当に

 

 なのに、なんで……

 

梢「次は私たちスリーズブーケが」

 

花帆「みんなに笑顔の花束をお届けしちゃうよー!」

 

梢・花帆「Holiday∞Holiday」

 

 人々は出口の先で振り返る

 

 通りかかった人さえも

 

 誰もがステージへ視線を向けている

 

綴理「最後はボクたち、DOLLCHESTRA」

 

さやか「精一杯頑張らせていただきます」

 

綴理・さやか「Mirage Voyage」

 

 隣にいたはずなのに

 同じ景色を見てるはずだった

 

 なのにーー

 

 

 

 

 

 ステージに立つあいつらって

 こんな遠かったっけ

 

    ◇

 

花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈「はぁ……」

 

 夜道を走る車の中、6人のため息が響く

 

明人「お疲れさん」

 

花帆「な、なんとかなりました〜……」

 

梢「流石にこれは堪えるわね……」

 

綴理「……ねむい………」

 

さやか「綴理先輩、今寝たら後で寝れなくなりますよ……!」

 

瑠璃乃「ルリ、もう限界……」

 

慈「めぐちゃんも〜……」

 

 機材と衣装にクラブの6人、そして俺

 ぎゅうぎゅう詰めになった車の中でくたびれた空気が流れる

 

慈「アキ君、ありがとね。何度も車出してもらっちゃって」

 

明人「……ああ。……慈ーー」

 

瑠璃乃「めぐちゃん、ありがとね」

 

梢「今回のライブの成功は慈のおかげよ。あなたがつないでいてくれたから、間に合ったの」

 

慈「そっちも頑張ったんでしょ」

 

綴理「みんな、がんばったよ……アキ……も……」

 

 うつらうつらとする綴理がふやけた声で答える

 

さやか「綴理先輩」

 

綴理「あれ……?さやがたくさん……」

 

さやか「綴理先輩!」

 

 ルームミラーの向こう

 疲れ切ってるくせに、笑ってる6人

 

 

 道路に視線を戻す

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