───起動シーケンス実行。
Neuro-Implanted-Machine for Protecting Human…作動良好。
身体機能…異常なし。
Accel Unleashed Vanguard FRAME…作動良好。
全機能:オールグリーン。
フェアリーテールモデル08。機体名:スサノヲ、起動開始。
──────────────────────
「──んぅ…もう、朝か…。時間は…まだある。もう少し寝よっと……。」
白い長髪に赤と緑のオッドアイの少女、スサノヲが睡眠欲に従い、二度寝に洒落込もうとする。しかし、そこに黒いボディスーツを着た少女、紅蓮が扉を開けると、断りも無く入り込んできた。
「二度寝とは感心しないな。起きなければそのベッドごと切り捨ててしまうぞ?」
「煩いなぁ…誰ですか一体って、紅蓮師匠!?申し訳ありません、すぐに起きます!!」
「私は君の師匠ではないと何度も言っている筈だが?まあいい、すぐに手合わせとしよう。」
「分かりました、紅蓮師匠!」
「……わかっていないな、君は。」
呆れながら紅蓮が呟く。こうして話している彼女たちだが、人間ではない。ニケと呼ばれる、機械生命体『ラプチャー』への対抗手段として作られた少女の姿をしたヒューマノイドである。
──────────────────────
「ふっ!!」
「危なっ…!?」
「あっ、また紅蓮とスサノヲが手合わせしてる。今日はどっちが勝つかな?」「そんなの決まってるよ、今回も紅蓮が勝つって。」「けどこの前引き分けてたからもしかしたら…。」
彼女達の拠点である飛行船、勝利の翼号。その甲板で、量産型のニケが観戦しているのを尻目に、紅蓮の
そのまま何度も剣戟を続けるが、スサノヲがじりじりと後退する。
(やっぱり師匠は凄いな、一撃が重い上に速い…!性能ではこっちが上の筈なのに…!!)「はあっ!」
「太刀筋はいいが、まだ甘いな。」
「あっ!?」
状況を変えようとスサノヲが
「ま、参りました…。」
「君も剣の扱いに慣れてきたようだな。初めて会ったときの出鱈目な太刀筋とは大違いだ。…何処が敗因になったか分かるかい?」
「……十束剣を大振りで振るったこと、でしょうか?」
「それもあるが、君は攻めより防御に専念する場合が多い。ここぞという時に守ってばかりでは、足元を救われるぞ?それに、初めて会った時に使ったその王冠…レガリア、といったか。それを使えば幾らか選択肢が増えるだろう。精進することだな。」
「は、はい…。善処します…。」
「ここにいたのですね、お二人共。」
彼女達が反省点について話していた所にシスターの姿をした少女、ラプンツェルが近づいてくる。
「シスターラプンツェルじゃないですか、何かご用でも?」
「指揮官が皆を呼んでいますよ。ブリーフィングを始めたいとの事で、私が呼びに来ました。」
「あぁ〜、さっきレッドフード先輩がいつもの所で音楽聞いてたからスノーホワイト先輩が呼びに行ってるだろうし、ドロシー先輩は…下手したら紅蓮師匠と良くて言い合い、最悪喧嘩になりますね…。」
「おい、余計な事を言うな。」
そうしてブリーフィングルームに向かって行く前に十束剣を回収し、到着したのだが。
自分以外はすでに集合しており、何故か綺麗な白い髪の少女スノーホワイトが赤髪の女性レッドフードにヘッドロックをかけられていた。
「すみません、遅くなりました…?紅蓮師匠、何故先輩方はプロr「違います!!」すみませぇん!!」
「おいスノー、後輩相手に言い過ぎじゃないか?」
「…ごめんなさい。全員に同じ事を言われて、つい…。」
「そんな、スノーホワイト先輩が謝ることはないですよ!」
フラストレーションが溜まっていたのだろうスノーホワイトが思わず爆発してしまったのだろう、彼女とスサノヲがお互い謝りあっている所に指揮官がため息を吐きながら呟く。
「ハァ…そろそろブリーフィングを始めたいんだが、いいか?」
「あっ、はい。すみません…。」
「謝りっぱなしだな、君は。気を取り直して、全員揃っているか?」
「紅蓮。」
紅蓮は無言で軽く手を上げた。
「ラプンツェル。」
「はい、指揮官。」
「ドロシー。」
「はい。」
「リリーバイス。」
「は〜い。」
「スサノヲ。」
「はいっ!」
「よし。では、ブリーフィングを始め……どうしてそんなに離れて座っているんだ?仲が悪いのか?」
指揮官が視線をずらすと、レッドフードとスノーホワイトの方を見遣る。
「仲良くなる為には飲み会が必要だよな。前にいつやったのか、
もう覚えてないぞ。」
「1週間前にやったでしょ?」
「……そうでしたっけ?」
「そういえば、珍しくスサノヲも酔い潰されてましたね、悪酔いしたレッドフードに無理矢理飲まされてましたよ。」
レッドフードもスサノヲも記憶が飛んでいたが、実際1週間前に飲み会として指揮官が費用を出していた。因みにスサノヲは下戸である為、酒は飲めない。
「あん?俺そんなことしたのか?」
「いつも酔い潰れるまで飲んでいるのですから、覚えているはずがないでしょう?加えて今回は他人を巻き込んで…。」
「あ、う〜ん……ん…?いや〜、最近ちょっと飲んだだけでぶっ潰れちまうんだが…もしかしてその前に後輩に飲ませたかもしんねぇな。」
「あの時は可哀想でしたよ、無理だって何度もスサノヲが断ってたのにそのまま飲ませてスサノヲが倒れてしまって…。」
ピンク髪のどことなく高貴さを感じさせるニケ、ドロシーとラプンツェルに苦言を挺されたレッドフードはバツが悪そうな顔をする。
「レッドフードはお金を払いたくなくて寝たフリしてるのかと思いました。」
「スノー……あたしを何だと思ってんだ?」
「無銭飲食をして捕まったことがある」
「それは〜……過去の過ちで……。」
「静かに。そろそろブリーフィングを始めさせてくれ。」
指揮官の一声でブリーフィングルームが静かになる。
「よし、それでは。ゴッデス部隊のブリーフィングを始める。……やはり部隊の名前が気に入らんな。『女神』なんて、私が仲間外れみたいじゃないか。」
「指揮官、その言葉私にも聞くんですけど…。」
「ん?そうだったかな?」
「だってフェアリーテールモデル……紅蓮師匠は一旦置いといて、「おい、どういう意味だ?」童話の女主人公の名前から付けられてるじゃないですか。私だけ日本って小さな島国の神話に出てくる男の神様ですよ!?私自身は女性でも、気にするじゃないですか!!」
「おいおい、一旦落ち着け。…リリス、何故スサノヲの所まで拳を握って歩いているんだ?」
「ちょっと静かにさせないと、でしょ?決して、私が童話の主役の名前じゃないからってイライラしてる訳じゃないから。」
「あっ……ちょっと待ってください。違う、違うんですよ決してリリス先輩の事を悪く言ってるんじゃなくて痛ったぁぁぁぁぁぁ!!??」
スサノヲの頭にリリーバイスの拳が振り下ろされた。ゴンッ!!!という痛々しい音がブリーフィングルーム内に響き渡る。
「なんであれで『痛い』で済むんだ、俺の後輩は?あの振り被り方、俺達が受けたら戦闘に支障が出そうな殴り方じゃねえか。」
「本人曰く、『骨格が物凄く特殊』だと聞いた。今の装備より重いものを着けても、近接戦に問題ない速さで動ける出力に加え、それに耐えられる強靭さ…それに加え、まだ他にもあると言っていたが、まだ私も見ていない。」
「ふう…指揮官、ブリーフィングはいつ始まるんですか?」
「………始めよう。」
痛みで悶絶しているスサノヲを尻目に、指揮官がブリーフィングを始める。だが。戦況は依然として厳しい状況である。
4年前、ラプチャーが現れてから、今ではゴッデス部隊により少しずつ勝利することも増えたが、それでも物量に圧倒されている、というのが現状だろう。
「誇りに思え、って言われても…私そもそも実戦をそこまで経験していないんですが…。」
「わりい、後輩は実戦は殆どしてなかったな。そういや、後輩って姉ちゃん達がいるって言ってたよな、そっちはどうなのか聞いてんのか?」
「姉さん…アマテラスとツクヨミからは定期的に手紙が来ていますよ、ほら。写真もついてます。こっちの白い
「スサノヲと装備してる箇所が違いますね…このお二人も近接特化型なんでしょうか?」
「いえ、私とは違い、アマテラスは
「そのオンミョウジュツって何だよ?幽霊でも取りつかせんのか?」
「…話が脱線して来ているな。話を戻すぞ。」
ブリーフィングがシッチャカメッチャカである。この後、何とか話は戻せたものの、ドロシーと紅蓮がまた脱線させることになる。
「他人の視線を気にするとは、幼いことだ。」
「幼い、ですか?棒切れを振り回している方に言われたくはありませんね。」
「…どういう意味だい?」
「木の棒を振り回してケンカごっこをするのは、子供くらいのものでしょう?」
「今の台詞…撤回して下さい、ドロシー先輩。私も同じ、貴方の言う木の棒を振り回してケンカごっこしてるニケです。近接特化型のニケを全て侮辱することになりますよ?」
「三人とも…、ケンカしないでね?」
「………すみません、頭に血がのぼっていました。」
再度、ブリーフィングに戻る。勝つことはできても、ゴッデス部隊のみの話。人類連合軍の物資は尽き、ラプチャーは増加中。
全面戦争になれば勝ち目がない。だが、これまでの行動から、より上位のラプチャー…クイーンの位置に見当がついているという。だが…。
「今、なんて…?最後の戦いってどういうことですか!?」
「ん?ああ、そっか。新人のセンセイと後輩は知らないんだったな。」
レッドフードの目が赤く変わっている。体調が悪いと声も変わるという、それは…。
「あたし、侵食されてんだ。」
スサノヲ自体も侵食については知っている。彼女のとある部隊への移送中も目の前で侵食されたニケをみたからである。
「…重大な作戦。それに加えてレッドフード先輩の最後の戦闘。……重すぎますよ、私には…。」
ブリーフィングが終わり、自身の追加装備の開発の為に艦内を
歩く。自身の初実戦が、思いもよらない事態になってしまった。
「アマテラス、ツクヨミ。…私は、どうすれば良いんだろう…?」
─────────────────────
100年後。物語が始まる少し前の出来事。
とある積雪地帯に、彼女はいた。過去のラプチャーの攻撃を出来るだけ避ける為に軽量さを求めた
「…久しいな、我が師紅蓮。白雪姫、髪長姫も息災か。」
「あぁ、お前も無事で何よりだ。」
「お久しぶりです、スサノヲ。」
「おお、スサノヲかい。君も元気そうだね、今回は何を持ってきてくれたんだい?私も畑で育てた野菜を持ってきたんだ。」
「燻製肉だ。久々に肥えた豚を捌く機会ができたのでな。我が師紅蓮よ、貴殿の野菜も使わせて「これも使うか?」……白雪姫、蜘蛛と幼虫は使わん。貴殿の腹に収めよ。そして気長に待つが良い。」
紅蓮が持ってきていた野菜類に燻製肉を手早く下拵えをしながらも、スノーホワイトが持ってきていた蜘蛛と何かの幼虫を見たスサノヲが止める。
「…なら、そうさせてもらおう。……何を作る気だ?」
「人参、玉葱、じゃが芋と我の燻製肉なら…シチューであろう。この地では丁度良い、身体を温められ、栄養も摂れる。最近製法を知った物が十分使えるだろう。」
話しながらもフライパンと鍋(スサノヲ製、大きいタイプ)を使い、フライパンで野菜や燻製肉を塩コショウを軽く入れてから炒め、鍋にはバターを溶かし小麦粉を入れてルーを作っていく。その様子を見たラプンツェルが話を尋ねる。
「一つ、聞かせて頂きたいのですが……そのバターと小麦粉はどうしたのですか?」
「無論、我が直々に生産した。バターは牛から乳を搾り、小麦は自然に実ったものから収穫し、加工した。地底にいる人間やニケは製法位は記録があるやも知れん。だが実行した事がないとなれば、いずれ地上を取り戻した際に伝える者がいなければどうにもならぬ。」
「乳を……搾る……!?「助平な事を考えるようなら貴殿の分は全て白雪姫に渡すからな?」そ、それは横柄では!?」
話を聞きながらも、鍋に牛乳を少しずつ入れて滑らかになるまで熱し、フライパン側は浄水器でゴミを取り煮沸した水を入れて少し煮たあと、鍋に投入。もう少し煮込み、皿(これもスサノヲ製、事前に準備していた)に盛り付けていく。
「これで完成だ。事前に我が焼いてきたパンを持ってきている。これと共に食すと良い。「頂こう。…こういう時の反応も貴殿は速い。」
先にスノーホワイトにシチューとパンを渡し、紅蓮とラプンツェルに配膳した後、自身の分もよそう。
「先ずは腹拵えだ。ある程度はこのままでも言葉を紡ぐ事も可能であろう。」
「君も変わったものだ。以前の君なら、調理すればボヤ騒ぎを起こすほど料理が出来なかったものを、今では私達より上手くなってないかい?」
「我は生き延びる為に当然の事をしているまでだ。貴殿らもその気になれば出来るのではないか?」
「…思考転換したというのに、作ることに妥協しないのは変わりませんね。」
「エネルギーの補給が出来るなら何でもいい。だが、たまにはこういう食事も悪くはない。」
各々が呟き、情報交換でお互いの失われた記憶の補完をしていく。脳の劣化で記憶容量が劣化している為、過負荷を起こしやすくなっている為である。
「腹も膨れた。言葉も紡ぎ終えた。…我が師紅蓮よ、久しぶりに手合わせ願いたい。」
「いいとも。酒のさかなと食事の礼だ、今の君の実力を見せてもらうよ。」
天叢雲剣を片手で持ち上げ、両手持ちで構える。紅蓮も花無十日紅を構える。
「我が好敵手との死闘の成果……その目に焼き付けさせてもらおう。」
「君はまたニヒリスターにちょっかいをかけに行ったのかい?なんとも今の君らしい。さて、弟子がどう強くなったか、私に見せておくれ?」
そして、スサノヲと紅蓮が刃を混じり合わせる。
皇巫スサノヲ:レガリア
100年前、思考転換をする前のスサノヲ。
フェアリーテールモデルNo.8として、同時期に作られたアマテラス、ツクヨミと同じ特殊な骨格『AUVフレーム』を搭載したニケとして、彼女達と同部隊に配属予定だったが、配備前の襲撃による紆余曲折により、ゴッデス部隊へ加入する。
襲撃の場所が当時内乱が発生した連合基地の目と鼻の先にあった為、紅蓮と共闘。一方的にではあるが、彼女を師匠として慕っている。
当時の最新技術の結晶であり、神御衣は軽く軽量ながらビームへの高い耐性を誇り、頭部に装着した光輪『レガリア』は武装の威力強化が可能。レガリアは他人への譲渡も行える。
AUVフレームは高い出力と強靭さを兼ね備えた特殊な骨格であり、当時の自身の装備を含め、全武装を装備したスノーホワイトを背負いながら全力疾走することが可能。
剣に関しては本気で向き合っている為、侮辱されると静かに怒る。
料理に関しては下手どころの騒ぎでは収まらず、ボヤ騒ぎをおこした。
皇巫スサノヲ
元ゴッデス部隊所属のピルグリム。
傲慢不遜、顔色一つ変えない戦闘マシーンと思われがちになったが、その実力は本物。
過去のレガリア装備から当時のスノーホワイトと自身のアイデアで完成した装備を身につけている。
大剣『天叢雲剣』はその大きさ、重量を使った一撃が高く、当たりどころによれば一振りでロード級のコアを簡単に叩き壊せる。
分割機能により、それぞれスカイウォードアックス、クラウドスマッシャーへと変わる。クラウドスマッシャーは近〜中距離用のビームショットガンとして、又はクラウドウィップと呼ばれる鞭状の装備として使用する。
他装備が和風の名称なのに対して横文字が並んでいるのは、彼女がアークの通信装置等で見た、アークレンジャーに影響されたからである。
また、両肩のマルチアーマメントケープは神御衣と同等のビーム耐性を持ちながらも、両腕に装着することで腕部の出力をさらに増強し、近接戦時には手甲として、又はクローを展開しての斬撃も行える代物となっている。
さらに、背部のグラビティコントロールユニットはごく短時間(2〜3分程度)ではあるが低空飛行が可能となっており、一時エデンに滞在していた時にインヘルト部隊のニケにはその改良型が装備に採用されている。
装備の変形・レイアウト変更により防御力重視の『ヴィジランスモード』、機動力と攻撃力重視の『インセインモード』、守りを捨て、全てを攻撃に回す『ブルータルモード』へのモードチェンジにより、戦況による臨機応変な立ち回りが重要になる。
エデンの機材を借り、装備のメンテナンスを兼ねて機能を追加する改修を定期的に行なっている。
思考転換の影響により、他人の呼び方も(ドロシーを除く)変わり、スノーホワイトを『白雪姫』、ラプンツェルを『髪長姫』、紅蓮を『我が師紅蓮』と呼ぶ。
又、ヘレティックであるニヒリスターには一方的に『我が好敵手』として定期的に死闘をしているが、途中で煩いとの理由でリバーレリオがラプチャーを差し向ける為、決着がついたことは一度もない。
昔から妥協はしないのだが、現在ではそれが悪化しており、装備どころかアークの住民が地上に出た際に伝え広める為に豚や牛等の可食部の解体方法、小麦粉等の製法等を地上に残った文献や、トライ&エラーの繰り返しでやり方を覚え、その内容は自身の書物として記載し、エデンで保管している。