リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

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第三十四話 役所コラボ配信!

 

 そんなこんなで、俺とガンドレイクは慌ただしくも平和な日常に戻ったのであるが。

 

 しかしながら、現実というのは無慈悲に、冷酷に、機械的なまでに迫ってくるものである。

 

 目を逸らしていても事実は消えない。

 

 そういう訳で、とうとう引き延ばすにも限度があり。

 

 俺は観念してお役所コラボに引っ張りだされる事とあいなった。

 

 

 

 迷宮の2層。砂漠地帯の隅っこにある、横穴の入口前。

 

 そこで俺達は待ち合わせていた役所の担当スタッフと待ち合わせていた。

 

 そこで待っていたのは……。

 

「ふふ。今日はよろしくおねがいしますね、春日井さん」

 

「……ええと。……はい……」

 

 ニコニコ笑う御堂さんに、俺は所在なさげに頭を下げる。

 

 そう。実際に迷宮に潜るにあたって、戦力かつ監視員として派遣されたのは、ほかならぬこの案件を持ち込んできた御堂舞さんその人であったのだ。

 

 柔和な笑顔が素敵な彼女だが、今は役人としてのスーツではなく、冒険者としての装備に身を包んでいる。印象的なのは、体をすっぽり隠す襟の高い黒いコート。具体的にロシアとかの北の国の人が着るというか、某人型生体兵器が偽装の為に装備しているあれっぽい外套は、彼女の体系やその下に閉まった装備をそのシルエットの内に隠してしまっている。首元には何の冗談かペストマスクらしきものを下げているが、それを除けば全体的に没個性。いかにもお役所仕事の装備らしいというか、どっちかというと暗殺者か何かである。

 

 武器の方は、どうやらクロスボウをメインウェポンにしている模様。俺達一般市民には許可が下りないタイプの武器で、流石は役人といったところか。ただ、流石にこれだけ、という事もないはずだ。恐らくはコートの下に、近接武器を隠しているのだと思われる。

 

 ……やっぱこれ対人装備じゃない? 問題のある冒険者を迷宮の中で狩ってたりしないよね?

 

「……ええと、そんなじろじろ見られると恥ずかしいんですが……」

 

「おっと、失礼しました」

 

 流石に不躾な視線だったか。反射的に目を逸らしながら、自分の装備と比較する。

 

 俺の恰好ときたらいつものジーパンにトレーナー、革鎧という、駆け出し冒険者とそう変わらない装備である。あくまでカメラ担当、荷物運び、なので防御力よりも動きやすさを重視したこれはこれで考えての結果なのだが、目の前のガチスタイルと比べると恥ずかしくなってきた。

 

「うむ、よろしく頼む、御堂どの」

 

「ザバーニャスさんも。今日は頼りにしてますね」

 

 親し気に話すガンドレイクと御堂さん。ガンドレイクはいつもの、コートに籠手と脚甲、そしてドレスといった装備である。いつもの装備というか、一張羅なので変わる事はない。

 

 俺と並ぶと異物感の激しい恰好だが、バリバリに決めた御堂さんと並ぶと凄腕冒険者パーティーといった感じで実に映える。若干、コミケのコスプレエリア感はあるが。

 

「……しかし正直意外でした。御堂さんが出てくるとは」

 

「あら、そうでしたか?」

 

「ええ。失礼ですが、以前あった時は荒事に慣れているようには伺えませんでしたので。てっきり、委託を受けた熟練冒険者パーティーか何かと同道するものかと」

 

 そりゃあマル暴の人達は自ら事務所に乗り込んでいったりするけども。流石に、迷宮と事務所を同列に並べて語るのも問題だろう。なんせ、迷宮の怪物達には権力なんか通じない訳で……いや暴力団の事務所もそんな変わらんか?

 

 どうなんだろ?

 

「いやまあ。侮ってる訳ではないですが……役所の人が、どうしてそんなに戦い慣れてる感じなんです?」

 

「あら、わかります? なるほど……なかなか、目が肥えてるんですね」

 

「ガンドレイクを普段から見てるので」

 

 一見するとただの銀髪美少女だが、中身は異世界の勇者様(蛮族)だからな。女体化したあとのちょっと調子崩してるのも見てるから、なおさらの事である。

 

 その審美眼でいうと、うん。

 

 御堂さんは、かなり出来る方だと思う。

 

「うふふ、ありがとうございます。ここだけの話、迷宮管理課には結構、元冒険者の人が多いんですよ。特に黎明期、配信とかが無かった頃にやっていた人が多いので、あまり世間に知られていない人が多いんです」

 

「そうなんですか。あれ、でも……」

 

 確か迷宮黎明期って、一般人が迷宮に入るのは禁止されてなかったっけ? すぐに有耶無耶になったけど……。

 

「(にっこり)」

 

「をほん。ええと、じゃあとりあえず、早速始めましょうか」

 

「ええ、はい」

 

 触らぬ神に祟りなし。底冷えする笑みを向けられて、俺はさっさと話題を逸らした。普通に怖い。

 

 がさごそと、地面に置いたコンテナを開封する。その中に入っていたのは、撮影用の飛行ドローン、それも最新型のものだ。スイッチを入れると、自動的に浮上し、俺達を上空からぐるぐる回りながら撮影している。

 

「動作は順調なようです。通信を確認してくれますか?」

 

「あ、はい」

 

 続けてコンテナの中に入っていた透明なサングラスのようなものを顔にかける。

 

 そう、巴さんも使っていた、実況生中継用のバイザーである。何度か位置を調整して目が慣れてくると、透明なグラス越しに見る視界の中に、白い文字がゆっくりとスクロールしていく。

 

『ここか、役所配信』

 

『知らん配信者だな。役所内の人か?』

 

『なんでこんな無名がコラボに?』

 

 流れてくるのは、チャンネルに書き込まれたコメントだ。

 

 普通だったら、実況生中継を許可されるような冒険者は実力者であり、それ相応のファンがついているものだが、俺は無名のモブに過ぎない。書き込んでいるのも何人かいるフォロワーではなく、市役所からの発表を受けて見に来ただけの人達の様だ。

 

 結構辛辣な事言われてる。悲しみ。

 

「どうだー、トモキ。見えてるか?」

 

「あ、ああ。大丈夫、通信ラインは繋がってるみたいだ。色々コメントも流れてきてる……つけてみるか?」

 

 一度バイザーを外して、ガンドレイクの顔にかけてやる。

 

 が、現代社会一年生な上に目が良すぎて眼鏡なんぞとは無縁なガンドレイクは苦戦している模様。最終的に諦めたのかバイザーを傾けて付けたまま、彼女は浮遊するドローンに向けて手を振った。

 

「おーす、私はガンドレイク・ザバーニャス! 今日はよろしく頼む。私の詳しいプロフィールはトモキのチャンネルで確認してくれ!」

 

 ぴーす! とポーズを決めて満足したのか、いそいそとガンドレイクはバイザーを返してくれた。受け取ったそれを顔にかけると、案の定コメントは混乱に陥っている。

 

『何だ今の美少女』

 

『いやそれもそうなんだがなんだこのカオスなキャラ設定!?』

 

『コスプレ……いやあの髪と目はマジもんか!?』

 

 うむうむ。気持ちは分かる。突っ込みどころが渋滞してるもんな……。俺が言うのもなんだが、アイツは正直属性を過積載しすぎだと思う。

 

 まあいいや、お仕事を始めよう。

 

「えーと、そういう訳で、チャンネル実況主の春日井です。本日はお日柄もよく、というのは冗談として置いといて。役所コラボという事で、チャンネルをご存知ない方も大半だと思います。今回はどちらかというと、役所からの皆様方への注意連絡、という意味合いが強いので、出来れば普段皆さんがご視聴なさっているチャンネルの主さん達にも、ご連絡頂けると助かります」

 

「はい。担当の御堂です。概ね、概要は春日井さんがお伝えくださった通りです。今回は迷宮管理番号XA-253ー74にて発見された、特殊なイレギュラーケースについて、コラボ配信させて頂きます。なお、本中継は行政案件という事もあり、想定外の突発的な事態などにより中継が強制的に遮断される事もあり得ますので、ご了承ください」

 

 にっこり笑顔で微笑みながら、何やら検閲的な事を口にする御堂さん。まあ、そういうもんだからしょうがないんだけど。

 

『え、何? もしかして思ってるよりヤバイ話?』

 

『管理番号XA-253-74って、こないだレインボー巴がいってた場所じゃん』

 

『おっさんこないだ巴ちんと突発コラボしたと思ったら、今後は行政コラボ? どうなってんの?』

 

『ガンドレイクちゃんペロペロ』

 

 早速コメント欄が反応している。いやあ、うちのチャンネルだと現時点で、普段の平均的なコメント数を軽く突破してるなあ。すごいねこれ、コラボ効果って。

 

 終わった後、落差で鬱になりそ。

 

「それじゃ、春日井さん。行きましょう」

 

「はい」

 

 眼鏡を仕舞ってペストマスクを装備する御堂さんに促され、俺とガンドレイクも横穴の出入口に向かう。

 

 以前と違い、監視カメラが設置され、開閉可能なゲートで封鎖されている横穴の入口。御堂さんが監視カメラの前に立つと、ピピ、という音と共にガラガラとゲートが解放された。

 

 さて。

 

 ここからが本番だ。

 

「いくぞ、ガンドレイク」

 

「うんむ!」

 

 

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