リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

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第三十八話 蛇のいぬ間に

 

 

 なんやかんやと激闘に汗を流しつつ、横穴を奥に進んでいく俺達。

 

 なかなかの怪物ぞろいの連戦に、視聴者さんもどんどん増えている。それに伴って変な事を言う奴もおおくなってくるが、これだけ衆目を集める事が出来れば本来の目的である冒険者への注意連絡、というのは達成出来たと言える。万の言葉よりも一の事実、ってね。売れない冒険者相手に行政コラボ生配信なんていう博打は、どうやら成功のようだ。

 

 

 

『こんな危険要素を国民に隠していた政府を許すな』

 

『はいはい。しっかし、この横穴もおっかないが、もしかして見つけたのってこのおっさんとガンレイクちゃんのコンビなのか?』

 

『だろうな。だから案内人としてコラボしてるんだろうけど……よく生き残れたな。ガンドレイクちゃんが異様に強いからだろうけど』

 

 

 

 実際の所は、この場所がある事を最初から知ってたガンドレイクに付き合わされた感じなんだけどな。いやまじで、これだけの危険地帯なら俺だけでも帰して欲しかったんだが……。何が「トモキは勇士だから大丈夫だ!」だよ。俺に出来る事なんてほとんどなかっただろうが。

 

 それはそれとして、そろそろ頃合いか。

 

「御堂さん、ここらで休憩しましょう」

 

 流石に連戦が続くと疲労も蓄積してくる。特に、慣れていない御堂さんはなかなか辛そうだ。

 

 歩みが遅くなったとか、肩を落としているとか、そういう分かりやすい感じはしないが、確実に襲撃の度に反応速度が落ちているのがありありと分かる。

 

「え? い、いいえ、私はまだまだ大丈夫です」

 

「だからです。余裕があるうちに休んでおきましょう。そもそもガンドレイクに合わせていたら潰れますよ、あいつはしんどい時ほど楽しそうにしてるんで」

 

 おかげペース管理はすっかり俺の仕事である。

 

 特に何がタチ悪いかって、ガンドレイク本人も自分のそういう所を理解した上でそのあたりの判断を俺に全部丸投げしているって事だ。そりゃあ俺は後ろで見てるだけだから状況を一番把握してるし、体力の一番少ない奴に合わせるのは道理だけどさあ。

 

 素人にそんな大事な事をまかせるんじゃないよ。

 

「ガンドレイクもそれでいいな」

 

「異論はないぞー」

 

「でも、こんな通路の最中で休憩なんて……ああ、そうか。確か、この先すぐに……」

 

 思い当たる節があったのか、提言を途中で取り下げる御堂さん。その通り、この先ちょっといった所に休憩できそうなスペースがある。どうやら参考資料として動画もしっかり見てきているようだ。流石だね。

 

 まあそうなると最後まで見た筈で、ラストのアレをどう思ったか聞いてみたい所だが。それはまた今度の話にしよう。

 

 後ろをふよふよ浮遊しているドローンにちらりと視線を向けて、先に進む。ガンドレイクが早足で先行して安全確認をしてくれた。

 

「うむ、大丈夫だ! 問題ない!」

 

「よっこいせ、と。はい、御堂さん、お手を」

 

「ど、どうも」

 

 ちょっとした段差があるので、御堂さんの手を引く。そしてその先に広がっているのは、ぽっかりと空いた広大な地下空洞だ。

 

 体感だと広さはちょうど体育館ぐらい。球状の空間は、しかし半分ぐらいが水で満たされている。壁際にはいくつもの穴が開いていて、俺達が出てきた通路もその穴の一つ。

 

 足元には白い砂が溜まっていて浜辺のようだ。

 

 一言でいうと、文字通りの地底湖という奴である。相変わらず謎の発光で照らされる中で、透明度の高い湖の水は水底まで一望できる。

 

「これが、動画にもあった……」

 

「そうです。あの時はちょっとした試練でしたが、今は休憩所みたいなものですね」

 

「だ、大丈夫なんですか? 復活していたりする可能性も……」

 

 不安そうにきょろきょろする御堂さん。おっかない感じのペストマスクなんかつけてるのに、そういう仕草は妙に可愛らしくみえるのが不思議だ。

 

「その心配はありませんよ。水底を見てください」

 

 そういって指さす先、ドローンが追従するように湖の上に移動する。

 

 そうすれば、見えるはずだ。透明な水底に沈んだ、得体のしれない巨大な骨の残骸が。

 

 

 

『なんかクソでっかい蛇の骨が沈んでるように見えるんだが……』

 

『あとワニみてーな魚がその骨の間を泳ぎ回ってるな……』

 

『もしかして、ここのボスだったとか? ははは、そんなまさかな』

 

 

 

 そのまさかなんだよな。まあ正確には中ボスって言うべきなんだろうけど。

 

 この奥にある、横穴の真実を守る為の門番というか。生きている時は、何匹もの巨大な白ヘビの怪物が絡まり合ったヘビ玉とでもいうべき脅威だった。

 

 圧倒的な執拗に加え、それぞれの蛇が独立して襲い掛かってくる。ヒュドラみたいに根っこで繋がってる訳じゃないから、頭を一つ二つ潰されたぐらいで動きが鈍る事もない。

 

 滅茶苦茶殺意の高いボスだった。

 

 まあ、全盛期の男ガンドレイクの前だと大した脅威ではなかったけど。襲い掛かってくるヘビの頭は、逆に「手間が省けた」と言わんばかりに噛みつきにいった端から跳ねられて、ご覧の有様である。残った首無し胴体は湖に沈み、こうして魚の餌になった、という訳だ。

 

 そして曲がりなりにもボスの部屋だったからか、ここには他の怪物はどうも寄ってこないようだ。だから休憩にはちょうどいい、はず。

 

「……やはり生で見ると迫力が違いますね」

 

「今は骨ですけどね。ほら、休憩にしましょう。お姫さま方、椅子をどうぞ」

 

「うんむ!」

 

 背負った鞄から折り畳み式の椅子を二つ広げると、真っ先にガンドレイクがどっかと座り込んだ。促されて、おずおずと御堂さんも座り込む。

 

「あれ、春日井さんは?」

 

「俺は元気あるから別に。体力ありあまってるので」

 

 カラーボール投げるぐらいしかしてないしね。なので、二つしかない椅子は戦闘要員に譲るのだ。

 

 それよりもさっさと軽食でも用意しますか。

 

「ガンドレイク、何か希望はあるか?」

 

「肉!!!」

 

「……まあ予想どおりだな、あいよ」

 

 

 

『なんか始まったぞ』

 

『支援要員というか、なんというか……主婦?』

 

『多分家でもこんな感じなんだろうなあ』

 

 

 

 ええいうるさいよコメントの皆さん。家でもガンドレイクの世話焼かされてるのは事実だけど!

 

 とにかくちゃっちゃと仕上げてしまおう。換気の怪しい洞窟の中では火も起こせないから、あくまで簡単なメニューに限る。

 

 コンビーフの缶詰を取り出して皿に開け、マヨネーズと混ぜ合わせて黒コショウを振り、パンにはさむ。んでもってインスタント味噌汁を紙コップに溶いて、保温瓶からお湯を注いで、はい。

 

 冒険者サンド、味噌スープを添えて。完成である。

 

「どうぞ、簡単なものですが」

 

「うむ!!」

 

「ご、ご馳走になります……」

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