リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

53 / 53
第五十二話 お泊り会決定

 

 混乱に包まれる夜の街。

 

 そこかしこで立ち昇る炎を前に俺達は茫然と立ち尽くす。

 

 その中で真っ先に立ち直り、動き出したのは御堂さんだった。

 

「とりあえず皆さんは避難を優先してください。この男は私が連行しますので」

 

「御堂さん……でも……」

 

「私は大丈夫です。訓練を受けてますので」

 

 無抵抗の男を小脇に抱え、きりっとした顔で答える御堂さん。

 

「いいですか。春日井さんは一般市民なんです、冒険者である前に。ここは、私の指示に従ってください。これでも公務員ですので」

 

「……っ、わかりました……」

 

「はい。それでよろしい。それに……」

 

 そこで彼女は厳めしく整えていた顔をふわりと緩めて、俺の背後に視線を向けた。

 

「女の子を守るのも、男の人の甲斐性でしょう? いい所見せてあげてくださいな」

 

「そういうの今の時代コンプライアンス的にどうなんですかね……?」

 

「そういう所だけしっかりしてなくていいですから」

 

 軽口を叩き合って、互いに苦笑。

 

 まあそれで、俺も緊張がほぐれた。

 

 彼女の言う通り、俺は単なる一市民だ。立場に似あった行動というのがある。英雄になんてなろうだなんて、元から思っちゃいない。

 

「わかりました、俺達は避難します。御堂さんもお気をつけて」

 

「はい、どうかご安全に」

 

「ええ」

 

 彼女に別れを告げて、早速行動に移す。まずは足の確保だ。男を引きずってどこかに向かう御堂さんをよそに、俺は背後で状況を見守っていた女性たちに声をかける。

 

「巴さん、獅子川ちゃん、とにかく街から離れよう。ガンドレイク」

 

「うむ! 周囲の警戒は任せろ!」

 

「わ、わかりました……この状況じゃホテルもやってないでしょうしね……」

 

「私も……。流石に、このなかを家のものに迎えに来いとは言えませんし……」

 

 よし。皆、異論はないらしい。

 

 まずは俺の車が無事か、確認しにいこう。

 

 

 

「お、あったあった。俺の車は無事か」

 

 街角の有料パーキングエリア。俺の車は壊されたりする事もなく、変わらず停車したままだった。安いからと繁華街から遠く離れた場所を選んだのが幸いしたという事かな。

 

 ちゃっちゃと支払いを終えて、道路に出す。

 

「ほら、乗って乗って。狭くて汚いかもしれないけど、そこは我慢してね」

 

「はい、失礼しまーす」

 

「はわわ……」

 

 後ろの座席に二人が乗り込み、助手席にはいつものようにガンドレイクが。そうそう一杯になる事のない定員に、ずしりとタイヤが沈み込むのを感じる。

 

 ……うん。口には出さないでおこう。

 

「出すよ! バイパスは……駄目か。下道を通る」

 

「よろしくお願いしますー」

 

 ぎゃるるる、と車が発進する。いつもは人がうろうろしている道も、今は伽藍としている。なんだかんだで、皆危険には敏感なもんだ。ただそこら中に車が乗り捨てられている様は、異常事態を感じさせて薄ら寒い気分になる。

 

「人の姿が無いな」

 

「今調べましたけど、街のシェルターはいっぱいらしいです。公共交通機関も止まっているみたい」

 

「市議が緊急事態宣言をしたみたいです……この街だけじゃなくて、あちこちで……」

 

 どうやら思ったよりも大ごとになっているらしい。急ぎつつも安全運転で、乗り捨てられた車を避けながら道路を行く。

 

 一体何があったのやら……。まあ、それを気にするのは安全を確保してからだ。

 

 幸いなのは地震や大雨といった天災ではない事で、道路状況は落ち着いている事か。まあこれでもバイパスあたりは逃げる車が殺到して大変な事になっているかもしれないが、こっちの下道はガラガラだ。代わりに、夜の曲がりくねった山道、という悪条件だけど。

 

 しばらく無言で車を走らせる。

 

 やがて街の喧騒が山の向こうに消えて、静かな山道を直走る。前後に車の姿はない。バイパスが通ってから、こっちの道を通る車はほとんどいなくなった。

 

 周囲を山に囲まれているからラジオも入らない。ちょっと気まずい静寂が車の中に満ちる。

 

「……そういえば、これからどうしよう」

 

「え?」

 

「何も考えずに自分の家に戻ってたけど、そういや二人をどうすりゃいいんだろ。希望はある?」

 

 少し落ち着いた事で、肝心な事を忘れていた事を思い出す。

 

 そう、後ろに乗せている巴さんと獅子川ちゃんである。まさかこの二人を家に連れていくわけにもいくまい。

 

 と思ったのだが。

 

「わ、私は荷物もなにもかもホテルに置いてきちゃって……よ、よかったら春日井さんのおうちに泊めてもらえれば……!」

 

「え゛?」

 

「……私も今、家のものに連絡しました。あちらも色々トラブってるようなので、今日は友人の家に宿泊すると」

 

「え゛??」

 

 まって。

 

 まって?

 

「え、えっと。その……ガンドレイク!! どこかビジネスホテル検索して!!」

 

「私にそのすまほとやらが操作できる訳なかろう?」

 

「いいから!!」

 

 このままだとあの狭い家に女の子二人を泊める事になっちゃう!! それは色々と不味い、主に世間体的な意味で! あとあの家、人を泊められるほど片付いてない!!

 

「ええーいいじゃないですか私は気にしませんよー」

 

「俺が気にするの!! だ、大体そっちはいいの!? 男の家だよ! それも俺みたいなおじさんと一つ屋根の下! 嫌でしょ普通に!!」

 

「だから気にしませんってば、緊急事態ですし。それにガンドレイクちゃんはずっと住みこんでるんでしょ、今更じゃないですか」

 

 ガンドレイクはその……色々と別! 別だから!!

 

「大丈夫ですよ、春日井さん。何も起きなかったって、私がちゃんと証言しますから。大体緊急避難なんですから、男だ女だ気にするほうが不誠実ですよ」

 

「むぅ……」

 

「獅子川ちゃんまでぇ……」

 

 どうやら困った事に女性二人はノリ気らしい。俺は最後の希望を込めてガンドレイクに縋った。

 

「が、ガンドレイクも嫌だよな? 部屋が狭くなるし……」

 

「? 私は気にしないぞ? ふふ、人が多くなると賑やかだしな! 楽しみだ!」

 

「…………そっかあ……」

 

 どうやら、家主であるはずの俺に拒否権はないようである。

 

 もうどーにでもなーれ。

 

 虚無の心で、俺は家に向かって車を直走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~(作者:SIS)(オリジナルSF/冒険・バトル)

 友人の勧めで『ビルドロボオンライン』なるゲームを始めたサラリーマン小鳥遊将也(たかなししょうや)。▼ 最初はそこまで乗り気ではなかったものの、作りこまれたゲーム内容に魅了された彼は、文句を言いながらもなんだかんだとゲームを楽しみ、独自の道に突き進んでいく。▼ 彼は知らない。▼ 後に、自分が廃人ゲーマー達から正体不明、野生のレイドボス、なんて呼ばれるようにな…


総合評価:1383/評価:8.02/連載:84話/更新日時:2026年07月08日(水) 06:00 小説情報

ヒロイン矯正!【完結済】(作者:アールエー)(オリジナルファンタジー/コメディ)

乙女ゲームのモブ娘に転生したおっさんが、持ち前の拳法と知識を使い、平穏に生きようとしていた。しかし何の因果か同じくヒロインに転生した女の子と出会ってしまい、シナリオを知り尽くしたと思い上がったヒロインを叩き直す物語。▼ちなみに、おっさんは原作ゲームの知識ゼロ。▼性転換おっさんは作者の趣味で、必然ではない。作者の心の中では必然だが。▼精神的BLは念のため。そこ…


総合評価:839/評価:8.76/完結:64話/更新日時:2026年07月05日(日) 18:00 小説情報

底辺配信者、スキル〈TS(爆乳)〉でおっぱい系ダンジョン配信者になりバズる 〜できればおっぱいじゃなく戦いを見てほしいんですが〜(作者:夏川優希)(オリジナル現代/コメディ)

【戦いを見てほしいTS(爆乳)配信者VSおっぱいしか見ないリスナー ファイッ!】▼男子高校生、相模原カオルは底辺ダンジョン配信者だ。▼ユニークスキル〈TS(爆乳)〉で手に入れた体はダンジョンのモンスターを容易く屠ることができる。しかしその代償として美少女(爆乳)化してしまうのだ。▼そんな姿を晒したくない、純粋に戦闘センスを評価してほしいと姿をさらさず配信を続…


総合評価:813/評価:7.91/連載:17話/更新日時:2026年07月07日(火) 21:06 小説情報

TSした俺と交友関係NTRアンハッピーセットを食らって女性不信拗らせた親友(作者:北京院)(オリジナル現代/恋愛)

幼馴染の親友に彼女ができたので最近はあまり遊んでいなかった。▼久々に顔を見た親友は死にそうな顔をしていたものだから、詳しく聞くと彼女と先輩と後輩を寝取られたんだという。▼もう女なんてこりごりだぜ、と強がるけれど死にそうな顔をしているので少々優しくしてやることにした。久々に泊まり込みでゲームをするのは楽しかったし少しは元気が出たようで安心した。▼――で、翌朝起…


総合評価:2480/評価:8.48/連載:12話/更新日時:2026年07月04日(土) 20:03 小説情報

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:708/評価:7.62/連載:39話/更新日時:2026年07月07日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>