リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

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第五十三話 主夫春日井

 

 

 

 

 

 

 チュンチュン。

 

 スズメらしき鳥の鳴き声に、俺は目を覚ました。

 

「んー」

 

 廊下に敷いた布団から顔を上げると、窓の外に泊まっていた鳥がどこかへ飛び去っていく。その黒いシルエットを見送って、俺は一度大きく欠伸をした。

 

「ふわあ……」

 

 布団を適当に丸めて壁に寄せ、リビングに戻る。

 

 扉を開けると、微かに違和感を感じた。ほんのりいい匂いがするというか。見渡すと、リビングはいつになく散らかっていて、机の下に複数人の衣服らしきものが紙袋に詰めてあった。

 

 極力それを意識しないように洗面所に向かう。

 

 扉の向こうから、ざあざあとシャワーの音がする。誰かが朝シャンをしているらしい。

 

 念のため小さくノックをして声をかける。

 

「おはよう。今大丈夫?」

 

『っ! お、おはよう、ございます……。えと、大丈夫です……』

 

 どうやらシャワーを使っているのは獅子川ちゃんらしい。

 

 大丈夫との事で洗面台で顔を洗う。隣に見える曇りガラスの向こうの人影は気にしない事にする。気にしないったら気にしない。

 

「よしっ」

 

 顔を洗って髭を剃ったら、気分を切り替えて朝ごはんの支度だ。洗面所を後にして、閉ざされたままの部屋をノックする。

 

「おはよう。ガンドレイク、巴さん。起きてる?」

 

「んにゃむにゃむにゃ……起きてるぞぉ……」

 

「…………」

 

 どうやらまだ巴さんは夢の中らしい。

 

 獅子川ちゃんはまだシャワー浴びてるし、んー。朝ごはんのメニューはこっちで決めるか。

 

 確認すると、パンはなんとか四人分あった。トーストで四枚纏めて焼きつつ、薬缶でお湯を沸かし、フライパンで目玉焼きを焼く。調味料は塩、胡椒、醤油、ケチャップの一通りを揃えておく。

 

 簡単な朝食でも四人分となると効率的にやらないといけない。

 

 それでもルーチンワークというか、いつもの流れを熟していると気持ちも落ち着いてきた。

 

「ふんふふーん、ふーん」

 

 フライパンに水をちょっと足して蓋をして、後は蒸し焼きにする。

 

 その間に薬缶の水が沸騰して、ピィーと音を立てはじめた。その音に誘われたように、ガラリ、と寝室の扉が開く。

 

「ふわー。おはよう、トモキ」

 

「ああ、おはようガンドレイク」

 

 でてくるのは寝間着代わりにだぼだぼのTシャツをひっかぶったガンドレイク。髪も荒れ放題、シャツはズレて肩がむき出しになっているというだらしない恰好である。

 

 ふらふらとやってきた彼女は、俺の手元を覗き込んで目を瞬かせた。

 

「なんだぁ。今日はご馳走だな……」

 

「おいおい、忘れたのか。今日は二人じゃないだろ」

 

「……あー。そっか。そういう事か。むむむ……」

 

 俺に笑われてようやく現状認識が追いついたのか、納得するとガンドレイクはむむむ、とこめかみを指で押さえた。

 

 なんでお前がそのあたり気にする必要があるんだ。

 

「なんだ、自分の分の取り分が減る事に今更気が付いたのか?」

 

「そうでもあるし、そうでもないともいえる。うーん」

 

「???」

 

 何が言いたいんだコイツ?

 

 首を傾げていると、どこからか低く地獄の底から響くようなおどろおどろしい呻きが聞こえてきた。

 

「うぅーーーん、まぶしい、朝日まぶしい……うぁあ゙……」

 

「げえ……」

 

 ずるずる、と寝室から這い出して来る黒い何か。

 

 動くワカメみたいなそれは、うん。あんまり考えたくないけど多分巴さんだ。

 

 そうか……朝は弱かったのか……いやでも朝が弱い冒険者って致命的じゃない? 普段迷宮でどうしてんだ?

 

 ちょっと首をひねるが、すぐに自己解決する。そういえば昨日、彼女はお酒を飲んでたね。となるとあれは二日酔いか……。

 

 コンロをちょっと確認して、火元を消す。卵焼きはあとは余熱でいいだろう。

 

 コップに水を注いで彼女の元に向かう。

 

「おはよう、巴さん。水のむ?」

 

「の゛む゛ぅ……」

 

「……はい、どうぞ」

 

 視線を逸らして彼女にコップを差し出す。ふらふらと彷徨った指先が、がっしとコップを掴んでもっていくのを確認するとテーブルに。

 

 心を無にして準備していると、幾分か正気に戻った巴さんの声が聞こえてきた。

 

「あー、水、おいしー……。……あれ? あれれ? え? ここって……」

 

「やっと亡者から戻ってきたか、トモエーン。ところでその服はトモキのだな? どこから引っ張り出してきたのだ?」

 

「え???? あ、え……きゃああああ!!?」

 

 ドタバタ、と寝室に引き返していく巴さん。ようやく正気に戻ってくれたか。

 

 具体的にどういう恰好だったかは彼女の名誉のために思い返さないでおくが、うん、大分煽情的な格好だったとだけ言っておこう。

 

「え、うそ! うそ!? か、春日井さーん、み、見ました? 見たよね?!」

 

「ナニモミテナイデスヨ。ホントダヨ」

 

「ああああああああああああああ……」

 

 地の底から頭を抱えているような呻きが聞こえてくるが、うん、気にしない事にしよう。

 

 カップに四人分、スティックコーヒーを用意してお湯を注ぐ。

 

 と、そこでようやく、風呂場から獅子川ちゃんが戻ってきた。

 

「ふぅ……。シャワー、ありがとうございます、春日井さん」

 

「うん。まあ、ご自由にどうぞ。そろそろ朝ごはんですよ」

 

「はい」

 

 頷いて髪をタオルで拭き、洗面所に戻る獅子川ちゃん。ゴォー、とドライヤーの音が聞こえてくる。

 

 どうでもいいけど、今、彼女がはおっていたのって俺のYシャツだよな……? なんで? あとあんまり白い服を着ないでほしい、肌が透けて見えてとてもよろしくない。主に俺の世間体とか青少年保護育成条例的に。

 

「う、うぅ……か、春日井さん? その、何か服をお借りしても……?」

 

「ああ、はいはい。引き出しから適当に、好きなの見繕っていいよ」

 

「ありがとうござますー……」

 

 扉から顔だけ出した巴さんが、再び引っ込んで部屋の奥でがさごそ。

 

 いやあもうなんていうか、うん。

 

 どーにでもなーれ……。

 

「なんか朝から疲れた顔をしているぞ、トモキ」

 

「実際に朝から疲れてるんだよ……お前は気楽でいいなあ……」

 

「ふぅん?」

 

 首を傾げながら、肩まるだしのぶかぶかシャツのガンドレイクがパンを齧る。こいつはこいつでちゃっかりしているなあ……。

 

 俺はテーブルの上に頬杖をついて、ふかーく溜息をつくのだった。

 

 

 

 

 

「……ねえ、あれはあれでその……なんか腹立って来ない?」

 

「でも逆に言うとアレ、完全に女としてアウトオブ眼中って事ですよね? それはそれで不味くないですか?」

 

「前言撤回。ザバニャンも苦労してるのね……」

 

 

 

 

 

 そして巴さんと獅子川ちゃんはなんか部屋のすみっこでモショモショ話してた。

 

 何なの??

 

 

 

 

 

 

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