リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

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第五十四話 四人で朝ごはん

 

 

 四人でテーブルを囲んで朝食を食べる。

 

 一足先に食べ始めたガンドレイクはいの一番に食べ終わって、何やらニコニコしながら皆を見渡してる。なんだろうね。大家族みたいで嬉しいのか?

 

「しかしよく椅子が四つあったな」

 

「倉庫にしまってた分があったからな。めんどくさがって処分してなかったのが逆に助かった」

 

 もともと一人暮らしだったからな。椅子は四つもいらんとは思ってたが、こういう形で役に立つとは。

 

 人生何が起きるかわからんもんだ。

 

「有り合わせで悪いね」

 

「いえいえ! 人に作ってもらった料理を食べるなんて何年ぶりだろう! 巴ちん感激~、なんちゃって」

 

「そんなおおげさな」

 

 大仰に喜ぶ巴さんに苦笑しつつ、それでも正直まんざらではない。人に喜んでもらえるのは嬉しいよね。

 

 ちらりと視線を獅子川ちゃんに移すと、彼女は神妙な顔でトーストを齧っている所だった。

 

 ハムスターみたいにちっちゃく齧ってるのはなんか可愛らしい。と、そこでこっちの視線に気が付いたのか、彼女ははっと口元を隠した。

 

「あ、ごめんごめん。食べるとこみられるのは恥ずかしいか」

 

「す、すいません……」

 

 まあ考えてみればぶしつけだったかな。

 

 とりあえず、俺も自分の分を食べる事に集中する。

 

 しばらく食卓に静寂が満ちて、それに耐えかねたように巴さんが口を開いた。

 

「……しかし春日井さん、家持ちだったんですね」

 

「俺が建てた家じゃないぞ。じいちゃんが死ぬ前にリフォームしてな。遺言で譲ってもらってそのまま住んでる」

 

「仲が良かったんですね」

 

 どうかな。

 

 死ぬ前に面倒を見てたのは主に俺だったが、果たしてボケ始めた老人にそれがどのように見えてたのか。

 

 当人の心のうちなんてわからないよ。

 

「……ご両親は?」

 

「健在だよ、少し離れたとこに住んでるからそう気軽にあえないけどね」

 

「私もまだご挨拶した事はないぞ!」

 

 そりゃーお前を両親に合わせてみろ、絶対にクソ面倒くさい事になるだけだろうが。

 

 こっちだって要らぬ腹を探られたくはないし。

 

「ご挨拶……」

 

「まだ……」

 

「ふふん。それより、昨日のアレは結局どうなったんだ? 御堂殿から連絡はあったか?」

 

 そういえば、そうだな。

 

 そもそも一応軟禁中だった俺たちが勝手に家に帰ってしまっているのも大丈夫なのか。

 

 携帯を確認しても、あれから彼女からの連絡が入った様子はない。死ぬほど忙しい状況とみられる。

 

 とりあえずはネットニュースを確認しようと、テレビの電源をいれてアプリを起動する。

 

『先日発生した、都心部でのテロについての続報です……』

 

「お、これこれ」

 

 目当てのニュースをさっそく見つけて音量を上げる。

 

「これ……あの街だけじゃない?」

 

「中国地方、四国地方、近畿地方……ほぼ西日本全域の都心部で同じことが……?」

 

「むぅ……」

 

 どうやら、俺たちが知らなかっただけで昨晩は全国的にやばい事になっていたらしい。

 

 内容はどれも同じ。都心部で、突然狂乱した人間が人知を超えた力で暴れ出した、という話ばかりだ。映像に移されるのは横転して燃え上がるビル、爆発したガソリンスタンド、どこもかしこも大多数の暴徒が暴れ散らかした後のような有様だ。

 

 幸いにして現在は沈静化しているようだが……。

 

「実行者の多数は死亡……これって……」

 

「力に耐えられなかったんだろうな。あるいは訳も分からず火元に突っ込んでいって焼死したか」

 

 見た限り、自らの肉体の損壊にも頓着していない様子だった。暴れ方にも躊躇いがなかったし、映像にあるようにガソリンスタンドとかに突っ込んでいったらそりゃあ助からないだろう。

 

 問題は、その力を彼らがどうやって手に入れたのか、どうして同時にこんな暴走が起きたのか、だが……。

 

 一体、何故?

 

「……あの人たち、冒険者だったんでしょうか? あんな力、迷宮の補正でもなければ……」

 

「それはそうだけど、だったら自滅なんかしないんじゃない? なんか歪な感じがするよね」

 

「そうだね……」

 

 ニュースと女性陣の会話を聞き流しながら、私は昨晩の事を思い返す。

 

 ちらりと見えた、金色の粉。

 

 あれが何か関係あるのだろうか? それとも、単なる偶然?

 

 ……わからん。俺には判断が付かない。ここは専門家に聞いてみるか。

 

「ガンドレイク」

 

「うん?」

 

「昨晩の暴徒に、何か金色の粉が付着しているのを見た。……黄金竜が姿をくらましている事と、今回の件が関係していると考えるのは、考えの飛躍だと思うか?」

 

 単刀直入に尋ねる。

 

 「黄金竜?」と首を傾げる巴さんと獅子川ちゃん。そういや彼女達は知らなかったか。たぶん説明しない方がいいんだろうな、これ。

 

「何の話です?」

 

「こっちの話、知らない方がいい事。で、どうだ?」

 

「うーん……なんともいえぬ」

 

 俺の疑問に、ガンドレイクはしっかり熟慮した上で首を振った。

 

「だがありえない話ではない。詳しい話は知らないが、奴が配下の戦士達に酒をふるまい狂戦士を生み出していたという話はあるが……ううむ……?」

 

 どうやらガンドレイクにもわからないようだ。ただ、気になる話は聞けた。

 

 ……酒か。自分の力を溶かし込んだ酒でそういう事ができるなら、効率を重視して粉薬、とか……?

 

 というかそれでいうと、鱗を漬け込んだアルコールとかモロそうじゃない?

 

 今思うと、鱗を漬け込んだスプレーで対象が無力化できたのも意味深に思える。マイナスにマイナスをかけたらゼロになる、みたいな。バーサークの重ね掛けで正気に戻った?

 

 もしそうだったら……いや、だとしても……ううむ。

 

 とりあえず思った以上に特級呪物だったぽいのであのスプレーは慎重に処分しておこう。

 

『それでは、次のニュースです。国会では今回の一件を受けて緊急事態宣言をめぐって紛糾しており……』

 

 そうこうしているうちにニュースが変わる。

 

 どうやら、昨晩の一件をめぐって政治家同士がもめているようだ。いつものように野党が血気盛んに無責任な事をわめきたてて、与党がそれをのらりくらりと交わしている。

 

 まあ、建設的な会議な事でいらっしゃる。ほかにやる事あるんじゃないの?

 

「結局緊急事態宣言は出さなかったみたいですね」

 

「ま、暴徒が暴れてるだけだしね……さて、かたずけようか。お皿はこっちに」

 

「あ、はい」

 

 皿を積み重ねて流しに向かう。

 

「私も手伝いますっ」

 

「あ、私も私も」

 

「いいから。お客さんは座ってて、ね? まあ何もないけど……」

 

 二人を宥めて席に戻らせる。

 

 流し場からはテレビと机が一望できる。なんだか家族が増えたみたいな妙な満足感に浸りながら、食器を水につけて洗い始める。

 

『「今回の一件は人災である! 政府の杜撰な管理体制が、今回の一件を……」』

 

 画面では前々から冒険者を危険な暴徒予備軍として管理するべきだという過激な主張の野党党首がカメラマンの前で熱弁をふるってる。

 

 その背後には秘書らしき者たちが控えている。

 

「ん?」

 

 その中の一人、金髪の美女が目に入って、俺は思わず目を瞬かせた。

 

 スーツをパリッと着こなした、日本人離れした容姿の白人女性だ。あんなタヌキみたいな親父の秘書なんて到底似合わない、超大手ベンチャー企業の社長の秘書でもしていた方が似合いそうな美人。カメラのフラッシュに向き合っていたその女性が、すっと視線を動かす。

 

「……」

 

「どうした、トモキ。夜の魔女に背筋をくすぐられたような顔をして」

 

「あ、ああ。いや」

 

 ガンドレイクに声をかけられて我に返る。

 

 なんだろ、今の。

 

 まるで、テレビ越しに彼女と視線があって、微笑みかけられたような……。

 

「そんな、まさかね」

 

 俺は苦笑して頭を振った。自意識過剰にもほどがある。

 

 ちょっと昨晩から予想外の出来事が続いて神経が参っているのかもしれない。俺は小さくため息をついて家事に集中する事にした。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

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