リストラ社会人&TS銀髪少女のダンジョン探索、コラボ配信で実力者に一目置かれる   作:SIS

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第七十五話 惚れた強み

 

 罠だらけの古代遺跡風の迷宮。

 

 そこら中にスイッチらしきものがあって、ただ進むだけでも厄介極まりない。

 

 それでいて、しっかり怪物も出てくるのが、なかなかに容赦がない階層と言えた。

 

「来るぞ! 前後挟まれてる!」

 

「ええい、厄介な。迷路のせいで視野が通らぬ!」

 

 無数に枝分かれした道の先、こちらを嗅ぎつけて姿を現す多数の怪物。これまで探索してきたような、森だとか砂原とかは、隠れている事こそあっても比較的見通しが良かった。洞窟だって、注意していれば不意打ちを受ける事はそうそうない。

 

 だがここは違う。

 

 直角に曲がりくねった壁の向こう、曲がり角の向こうに怪物が潜んでいてもわからない。かと思えば、壁一枚挟んだ向こうの脅威が、随分と遠回りしなければ遭遇できない、なんてこともある。

 

 主観視点での迷宮は、一歩先に何があるか分からないくじ引きのようなものだ。万全を期する事なんてできやしない。

 

 おまけに、通ってきた道も一本道ではない。故に、普通に背後に敵が姿を現す事だってありうる。

 

 それが今回、最悪のパターンで発生していた。

 

 

 

『まずいって、まずいって。挟み撃ちじゃん!』

 

『ああー、ゲームとかでよくあるバックアタックってこういう事なのかあ……』

 

『これだけ複雑で罠だらけの迷路を、全部クリアリングなんてする訳にもいかんしなあ』

 

 

 

 前からは毒針を振りかざして迫りくるサソリ。後ろからはゆっくりとした動きで確実に距離を詰めてくるオオトカゲ。どっちも見るからに一筋縄ではいかない相手。

 

 ガンドレイクであれば対応できるだろうが、彼女は一人しかいない。もう片方を、残る巴さんと蘭ちゃん、俺で支え切れるか?

 

「ち……」

 

「トモキ、私が後ろの蜥蜴をやる! 三人はなんとか前のサソリを押さえてくれ!」

 

「それしかないか……やるよ、蘭ちゃん!」

 

 仲間達はやる気だが、俺はちょっと危うさを感じた。

 

 何か、もっといい方法はないか? センサーを駆使して、周囲の罠の位置を確認する。

 

 ふむ、ふむ、ふむ……なるほど。だったら。

 

「待った、皆。後ろの蜥蜴はいい、前のサソリに集中攻撃だ!」

 

「え? ……わかりました!」

 

「おっけー、トモキンの仰せのままに!」

 

 突然の指示にも、仲間達は疑う事なく即座に対応してくれた。

 

 蘭ちゃんが矢を放ち、それに巴さんとガンドレイクが続く。矢は鋏でガードされたものの、それで動きが止まったサソリをガンドレイクが下から斧でカチあげる。両の鋏を粉砕されたサソリは毒針を振り下ろして反撃するが、その切っ先を巴さんが華麗な剣さばきで切り飛ばす。

 

 直後、蘭ちゃんの二の矢がサソリの額に突き刺さり、続けてガンドレイクの振り下ろしがその巨体を床にめり込ませた。

 

 

 

『わーお、瞬殺』

 

『? 先に前の奴に火力を集中させて排除する戦略か?』

 

『いやでも、トカゲがすぐ後ろに!』

 

 

 

 そう、サソリを全力で排除しても、背後の蜥蜴への対応が間に合わない。

 

 それに立ち向かうのは俺唯一人。一応ナイフを引き抜いているが、この質量の突撃を受け止められるものじゃない。

 

「智樹さん!」

 

「大丈夫、蘭ちゃんは離れて!」

 

 フォローに入ろうとする彼女を押しとどめて、俺は壁を叩いた。

 

 複雑な彫刻が施された壁面、俺が触れたその一部がズゴゴ……と音を立てて凹んでいく。

 

 トラップの発動スイッチ。

 

 直後、俺のすぐ目の前の床がパズルのように分解し、底なしの落とし穴が口を開く。周辺の瓦礫が、流砂のように穴へと流れ込んでいく。それに巻き込まれ、奈落へと落ちていく蜥蜴と俺の体。

 

「とっ、トモキッ!」

 

「なんの!」

 

 ここで腕のアンクルをぽちっとな。

 

 腕輪から射出されたワイヤーが、壁面の彫刻にひっかかる。それによってがくっ、と体の落下が停止。見下ろすと、遥か下方の穴底へ蜥蜴がじたばたしながら落ちていくのが見えた。

 

 ドンマイ。また来世。

 

 俺は小さく哀れな怪物に手を振って、よいしょ、とワイヤーを手繰って上に昇り始めた。

 

 と、その体が凄い勢いで上に引っ張られる。わ、と思った時には、俺は吊り上げられた魚みたいに引き上げられていた。

 

 硬い地面に体が放り出される。

 

「いって!? な、なんだよもう……」

 

「トモキィッ!」

 

「おぅわ!?」

 

 そして気が付けば目の前にはすごい剣幕のガンドレイクの顔。彼女はらしくもなく深刻な顔で、がっと俺の肩を両手でつかんだ。って、力入れすぎ、痛い痛い痛い。

 

「お前という奴は! その、思い付きで危険な自己犠牲に走る悪癖はいい加減にしろといっただろうが!」

 

「いたいいたいいたい、肩がつぶれる! しゃ、しゃーねーだろ、危なかったんだから!」

 

「私らと引き換えにおぬしが危険な目にあったら何の意味もないという事がわからんか!?」

 

 

 

『おおう修羅場』

 

『まあでも今のはしゃーない。ひやっとした』

 

『ちぇっ、死んだかと思ったのに』

 

 

 

 ううーん。ガンドレイクがちょい過保護気味なのは今日に始まった事ではないが、今日はいつになく怒ってんな……。

 

「ま、まあまあ。俺的には十二分に勝算があったからであって、別に分の悪い博打をした訳じゃあ……」

 

「タイミングが少しずれたら? 上手く蜥蜴が落ちなかったら? ワイヤーが上手くひっかからなかったら? 本当に確率が高かったと言えるのか、なぁ?」

 

「えーと……」

 

 駄目だなんか怒りのあまり知能指数が上がってる気がする。上手く言いくるめられなさそう、と判断して俺は助けを求めて女性陣に視線を向けたが、返って来たのはガンドレイクと同じ非難の視線だった。

 

「智樹さん。人の信頼をそういう形で裏切るの、よくないと思います」

 

「私はトモキンのそういう所に救われた形だからあんま強くいえないけどさー。そういうのは一人の時にやってくんない?」

 

「ハイ、ゴメンナサイ……」

 

 どうやら俺の味方はここにはいないらしい。

 

 ごめんなさい、反省します……。

 

「多数決で負けたから頭を下げるのは反省とはいわんぞ?」

 

「ひーん……」

 

 

 

 

 

『草』

 

『立場が弱すぎる』

 

『そのうち首輪とかつけられてそう』

 

 

 

 ええい、楽しそうだなコメントの連中! 大の大人がしょぼくれてる様がそんなに楽しいか、ええい楽しいだろうな!

 

 畜生!

 

 

 

 

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