「また繰り返すの?」
ピンク色の髪をした長い時を一緒に過ごしてきている女の子が俺に問いかける。。
「ああ、でもしょうがないんだ、もうこうするしかない……」
そう、すべてを解決するにはこうするしかない。このワルプルギスの夜を越えるには。
「待って!まだ他にも方法があるはずよ」
彼女の名前はリッカ・グリーンウッド。≪孤高のカトレア≫の異名を持つカテゴリー5の魔法使い。カテゴリーとは、魔法使いのランクを示す数値で、すべての魔法使いは1から5のランクに分類される。ちなみに、最高位のカテゴリー5に分類される魔法使いは世界に五人しかいないといわれている。つまり、リッカは、世界で五本の指に入るといわれるほどの実
力を持つ魔法使いだということになる。そんな彼女の可憐な立ち居振る舞いを、洋蘭の女王に例えて人は≪孤高のカトレア≫なんて呼んだりしている。
「そうよ、まだ誰も犠牲にならずにすむ方法がきっと……」
彼女はシャルル・マロース。俺達が通っているロンドン王立魔法学園、通称『風見鶏』の生徒会長であり、プレゼントという特殊な魔法を使うサンタクロースの一族の長女。
「そうです、まだ、まだ何か……」
「ヒロさん……あなたが犠牲になる必要などないじゃないですか!」
「そうだぜヒロ、これは……これは俺達の問題なんだから」
魔法の名門、クリサリス家のサラ・クリサリス。
その身に鬼を封じているといわれている有名な葛木家の長女、葛木 姫乃。
そして葛木家の養子で姫乃の兄、葛木 清隆。(旧姓は芳乃)もそれに続いて俺を思いとどまらせようしてくる。(いや、別に自殺しようってわけじゃないんだけど……)
「清隆、ここにきて俺を仲間外れにするなよ?友達だろ?」
「ああ、親友だよ」
「ならさ、せめて最後まで親友でいさせてくれよ。それに、この禁術をほっといた俺も悪い。清隆たちがいなくても俺はこれを何とかしなくちゃならない」
だから何を言おうと無駄だよ。言外に俺はそう伝えた。
「皆さん……すいません……。私がただのわがままで……死にたくない……というだけで禁術を発動させ、こんな取り返しのつかないことになってしまって……」
そしてこの元凶。夢で自分が死ぬ未来を見てしまった少女、陽ノ本 葵。
「ねぇ、生きたいと思うのは悪い事かな?」
俺は優しく語りかける。
「わから……ないです。私が生きたいと思った結果がこれなのに……。」
彼女は顔を伏せて涙を流しながら静かに答えた。
「じゃあ、君は今死にたいと思う?」
俺の問いかけに皆が息を呑んだ。そうきっとこんな問いをしたら彼女は……。
「私は……わた……しのせいで、皆が……こんなに苦しんだのに……もう生きていられないです」
彼女なら選ぶことは決まっている。
「だから私は、死に……たいです。いいえ、死ななければなりません……」
「「そんなっ……」」
皆が彼女の予想通りの言葉に唖然とする。
そう、ここで心優しい彼女が選ぶ答えは分かりきっている。
「君ならそう言うと思ったよ。でもね、もう君は自分の意思で死をえらんではいけない。そんな愚かなことはしてはいけないよ」
俺が告げた言葉に彼女は戸惑いの表情を浮かべた。
「どうし……て」
「君はもっと早くから気付いていたはずだよ。霧の都『ロンドン』の霧の正体に」
「えっ」
「嘘……でしょ?」
「なん……で」
そこにいた全員が驚いた。清隆は違うことに驚いたようだが。
「けど君は知っていたけど何もしなかった。何もできなかったんだ(もとからそこにあったんだからしょうがない、私には何もできない)といって苦しんでいたんだろう?」
「な……んで」
彼女は眼を見開いて俺を見る。それはそうだろう、図星なのだから。
「ヒロ、お前も見れるのか?」
清隆が信じられないといったような顔でつぶやく。
「清隆、『夢見』のマホウが使えるのは自分だけだと思っていたのか?」
「じゃあお前も……」
「ああ、多分同じものを見たんだろうさ。あと清隆が俺のを見れなかったのは、俺の方が上だからだよ」
清隆は驚き、そして申し訳なさそうな顔をした。
「済まなかった。情報を集めるために必死だったんだ」
「責めてはいないよ、まさかエリザベスの夢に入り込むとは思わなかったけどね。まあ、エリザベスがわざと1部分だけ見せたんだろうけど」
清隆がさらに驚いた。
「……何でもお見通しか」
清隆の言葉に俺は
「当然さ、私はオルメスなのだから」
「オルメス?」
皆が訳がわからないといったような顔をする。
「まあ、気にしないで」
「さて葵ちゃん、確かに君は霧については何もできなかった。けれど君は少しでも俺たちの助けになるために一生懸命に働いていたよね」
「はい、私にできるのは……それだけしかなかったので」
「そして君は清隆に自分のことを打ち明け、皆に協力してもらい、何とかしようとした。つまり、皆は君に生きて欲しいから協力した。確かに禁術を止めるためだったのもあるだろう。でも清隆たちにとってそれは二の次だったんだよ」
彼女の眼からまた涙が溢れ出してくる。
「そう……でした。皆は私の為に何とかしようとしてくれていたのにっ。それなのに、私が死にたいなんて……そんなこと言ってしまっては清隆さんたちに失礼じゃないですかっ……それに気付かなかったなんて」
やっと彼女は、葵ちゃんは気付いた。皆の思いに。もう大丈夫だろう。
なら俺もそろそろ覚悟を決めよう。
「ヒロ!?」
俺の雰囲気が変化したのに気付いたのだろう。リッカが驚いた声を上げる。
「言っただろう?この夜を越えるって」
俺の言葉に皆はハッとした表情を浮かべる。
「でもヒロ、そうしたらあなたは!」
リッカが必死に叫ぶ
「ごめんなリッカ、もう他に方法がないんだ。納得してくれ」
「そんな……嘘でしょ?桜の研究手伝ってくれるって言ったじゃないっ」
「ごめん」
リッカは呆然とした表情で膝を地面につけた。
「ヒロさん、いえ、オルメス様」
葵ちゃんが話しかけてくる。
「さすが非公式新聞部、知っていたのか。でも葵ちゃんヒロでいいよ。あとごめんなさいもいらないからね?」
「えっと……」
どうやら言おうとしていたらしい。
「葵ちゃん」
「はい」
「どうかこれだけは覚えておいて欲しい。未来を見ることができるのが魔法なら、その未来を覆すことができるのもまた魔法、つまり想いの力なんだよ。君の見た未来が本当だとしたら、この夜を越えたとき君が生きているかどうかは分からないからね」
辛いはずのこの言葉に、葵ちゃんはとびっきりの笑顔で
「はいっきっと未来を、死ぬ運命を覆して見せます。だからヒロさんも――」
「ごめんね」
そう言って俺はリッカのもとに行く
「リッカ」
「な…によ」
リッカは泣いていた。あのいつでも強いリッカが……
「ヒロは人の感情には疎いですからね」
ピンク色の髪をした最初に問いかけてきた少女が現れる。
「ヒロ…なにそれ?」
「精霊みたいなものだと思ってくれればいいよ。名前はサクラだ」
「よろしくね、みなさん。っていってもすぐにお別れなんだけどね」
その言葉に皆は絶望したような顔をする。きっと心の底では認めたくなかったのだろう。でも残念ながら事実だ。
「ヒローどこかに行っちゃうの?」
「さくらっ!?」
記憶喪失の少女、そして迷い子としてこの時代に来た禁術の被害者。さくら
「そうだね。ちょっと遠いところに行かなくちゃならなくなったんだ」
「そうなの?じゃあボクも行く!」
嬉しそうにさくらは言う。
「ヒロ、なんかこの子名前私と被ってる~」
精霊の方のサクラが言う。
「問題ないよ、ちゃんと区別してあるから」
「ならよし」(いいのかよ……)
っとさくらを説得しなきゃ。
「ごめんね、連れていけないんだ」
正直おれは駄々をこねられると思っていた。だが
「んーわかったよ今回は我慢する。何か事情がありそうだし。そのかわり帰ってきたらいっぱい遊んでね」
これにはみんなが驚いた。
「ああ帰ってきたらな」
「うん!」
そういうと満足したのかさくらは寮に戻っていった。にしてもここまでよくこれたな……さてと。
「リッカ、これが俺に手伝える最後の『桜色の研究』だ。1度しか見せれないからよく見といて」
「わかったわ」
どうやら立ち直ったらしい。そこにはいつもの強いリッカがいた。
さて、どうしようか……この世界に合った呪文を作ってみるか。
この魔法に呪文はいらない、いるのは願いと、とある想いだけ。だからこれはみんなへの言葉。
「いくよサクラ」
さっきまで元気だったサクラはこの魔法の時はいつも元気がなくなる。
「また繰り返すんだね……」
「ああ」
「また自分を犠牲にするんだね」
「ああ」
「そういうサクラの方がつらそうじゃないか……」
そういつもこの時、サクラはある想いをなくす俺の為に悲しんでくれる。
「これで何回目だろうね、この魔法」
「さあな、覚えていないよ」
「そうだよね、ヒロは代償にどこかの世界や時代に飛ばされる上にある想いをなくすから」
「さあそろそろやろうぜ」
「……うん」
するとその時、後ろから声がした。
「待って!ヒロ!」
そして振り返ったとき。
――チュッ――
「えっ」
気付くと俺はキスをされていた。
「ヒロ、あなたがいなくなったとしても私は『桜色の研究』を完成させ、あなたを探し続けるわ。カテゴリー5の魔法使い『孤高のカトレア』はこんなことで諦めたりしない。だから待ってなさい」
初めて知ったリッカの思い、でも魔法使いは想いが重要、特に女性の魔法使いは……だから恋をすると魔法を使えなくなる……はずなんだが。どうやら『孤高のカトレア』にはそんな常識通じないらしい。
「リッカ……わかった、待ってるよ」
「任せなさいっ♪」
とびっきりの笑顔で返された……どうやら俺も参っているらしい。でも次逢えたとしても俺は……
「始めるよサクラ」
「うん」
―全てを丸くおさめる為に。願うものは葵ちゃんの禁術を消すこと、姫乃の中の鬼を消すこと、そしてみんなの記憶から……俺を……―この願いをかなえるために。キセキの魔法を。
「桜の一族と一本の桜。ひとつの約束とささやかな願い
そして、何十年、何百年どれだけ時を越えようとも変わらない大切な思い
幾度、季節はめぐっても、やがて必ず春は訪れて、新しい桜の香りを運んでくる
そんな、まるでダ・カーポのように繰り返す。夢のような夢の、始まりの物語
終わらず繰り返す夢されど桜は終わりを告げ、始まりをもたらす
そんな始まりを告げる夢の始まり―――ハジマリノウタ」
これで魔法は完成され、辺り一面が桜の花びらで埋め尽くされた。
そこにはもう彼はいなかった。
こうして彼と彼のとある想いは消え、すべては丸くおさまった。
小説書くのは初心者なので駄文ですが、暖かい目でお願いします。