『BLEACH 〜煩悩代行・千堂遥の現世奮闘記〜』   作:トート

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第17話:千本桜 VS 恋慕断絶

「――遥! ルキアはアタシたちが預かった! あんたは一護と一緒に、あの堅物のお兄さんを絶対にぶっ飛ばしなさい!」

双殛(そうきょく)の丘の麓。僕――千堂 遥(せんどう はる)が処刑台からお姫様抱っこで連れてきたルキアちゃんを、有沢たつきがその逞しくも優しい腕でしっかりと受け止めた。その横では、織姫(おりひめ)ちゃんが「盾舜六花(しゅんろっか)」の光の壁を展開し、石田やチャドも臨戦態勢でルキアを取り囲んでいる。

「あはは、たつきちゃん、手荒に扱わないであげてね。……ルキアちゃん、ちょっと一護と一緒にお兄さんの目を覚ましてくるから、そこで大人しく見てなよ」

僕はルキアちゃんの涙に濡れた顔を見つめ、いつものチャラついたウインクを一つ送ると、再び巨大な霊圧の火花を散らす丘の頂上へと向き直った。

そこでは、オレンジ色の髪を激しく揺らした黒崎一護(くろさき いちご)が、巨大な大刀『斬月(ざんげつ)』を肩に担ぎ、白い隊長羽織をなびかせる朽木白哉(くちき びゃくや)と正面から対峙していた。白哉の周囲には、すでに無数の極小の刃――夕焼けの光を反射して怪しく煌めく『千本桜』の華が、不気味な嵐となって渦巻いている。

「ハル、遅ぇぞ。お前、ボロボロのくせにまだ動けるんだろうな?」

一護が振り返ることもなく、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

「失礼な。爆乳の乱菊さんや聖母の卯ノ花さん、そして夜一(よるいち)さんの真の姿を見ちゃった僕のモチベーションはね、今なら宇宙をも引き裂けるレベルだよ、一護さん?」

「テメエ、死にかけてた裏で何他の女のデータ集めてんだよバカ野郎!」

僕らはいつものようにくだらない言い合いをしながらも、同時に腰の得物へと手を伸ばした。

現世の豪雨の中、僕らの力を根元から木っ端微塵に砕いた、最大最強の壁。恋次(れんじ)副隊長から涙ながらに託された、あの熱い「男の約束」。ここで引いたら、男・千堂遥の人生はただの不純物で終わってしまう。

「――お前らの血で、戦場を飾りなよ。――『恋慕断絶(れんぼだんぜつ)』!!」

ドオオオオオン!!!

僕の魂そのものである青白い霊圧が爆発し、僕の身長の2倍はある肉厚の『超巨大な斧(バトルアックス)』がその凶悪な姿を再び現した。自重によって丘の岩盤をメキメキと粉砕する鉄の塊。先ほど処刑の矛を受け止めた衝撃をその身に宿し、刃は青い電撃のような霊圧をパチパチと放っている。

「……身の程を知らぬ旅禍(りょか)どもが。二度までも私の前に立ち塞がった我が弟の無礼、そして死神の掟を汚すその存在、いまここで完全に塵(ちり)にしてくれよう」

白哉が静かに、しかし絶対的な威厳を持って自らの斬魄刀(ざんぱくとう)を地面へと垂直に落とした。刀身が地面に吸い込まれるように消え、直後、彼の背後の空間から、見たこともないほど巨大な数千本もの刀身が、地底から突き出るように姿を現した。

「――魅せよう。これが『卍解(ばんかい)・千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)』だ」

一斉に、その数千本の刀身がサラサラと崩れ落ち、双殛の丘の空すべてを覆い尽くすほどの、文字通り「億単位」の桜の刃の嵐へと変貌した。

現世で僕を切り刻んだ『千本桜』とは、質量も、密度も、殺意の桁も全く違う。空が、白い光の刃によって完全にピンク色に染まり、僕らの視界を遮断していく。

「ハル! 離れるなよ! いくぞ!」

一護が叫ぶと同時に、その全身からどす黒く禍々しい霊圧が、まるで天を衝く黒い炎のように噴き出した。一護の手の中の斬月が、急速に凝縮され、一本の漆黒の、細身の日本刀の姿へと形を変えていく。

「――卍解。『天鎖斬月(てんさざんげつ)』」

一護の卍解。それは巨大な霊圧を小さな刀身にすべて凝縮させることで、爆発的な『超高速戦闘』を可能にする、異質の卍解。

「行くぞ、旅禍」

白哉が手を振るった瞬間、空を埋め尽くしていた億単位の桜の刃が、巨大な波濤(はとう)となって僕らに向かって全方位から殺到してきた。

(速い……! 前も、後ろも、上も下も、全部が『刃の壁』だ!)

「一護! お前は一番の近道を見つけて、白哉の懐に飛び込め! 周りの邪魔な桜は、俺が全部叩き潰してやる!」

僕は叫ぶと同時に、巨大斧『恋慕断絶』の柄を両手で引き絞り、己の肉体の全霊圧、そしてこれまで女の子たちに殴られて培ってきた(?)野生の勘のすべてを大斧へと流し込んだ。

そして、自分の肉体が引きちぎれるほどの超高速で、大斧を全方位へと大旋回させた。

「――『恋慕断絶』、絶対領域・八重桜(やえざくら)ァアアア!!!」

ズガァアアアアアアアアアアアン!!!!!!

僕の周囲に、先ほどの砕蜂ちゃんの時を遥かに凌駕する、密度を持った『霊圧の暴風の球体』が発生した。

超巨大な大斧が目にも留まらぬ速度で回転し、全方位から迫り来る白哉の桜の刃を、正面からガチガチガチガチガチッ!!! と激しい音を立てて弾き飛ばしていく。

『恋慕断絶』の能力――正面から受けた霊圧の衝撃を蓄積する力が、億単位の刃の圧力を受けて、大斧の表面を眩いばかりの青白い光で満たしていく。

「なっ……っ!? 私の千本桜景厳の刃を、ただの回転による風圧と質量だけで、すべて弾き返すというのか……!」

白哉の冷徹な顔が、初めて本気の驚愕に揺れ動いた。

だが、僕の肉体もタダでは済まない。防ぎきれなかった微小な刃の破片が、僕の頬を、腕を、太ももを容赦なく切り裂き、鮮血が激しく舞い散る。大斧を回す両腕の骨が、圧力に耐えかねて悲鳴を上げていた。

「がはっ……、あ、あぁあああ! 一護ォ! 早くしろ! 俺の愛の盾は、あと数秒しか持たねえぞ!!」

「おうよ! よく耐えた、ハル!!」

僕の作り出した絶対防御の暴風の隙間から、漆黒の光となった一護が、白哉の千本桜の包囲網を完全に突き破って飛び出した。

一護の移動速度は、もはや白哉の視認能力をも置き去りにしていた。

「――っ!? 速い……!」

白哉が気づいた時には、一護の漆黒の刃『天鎖斬月』の切っ先が、白哉の喉元へと肉薄していた。白哉は慌てて残りの桜の刃を手元に集め、防御の構えをとる。

一護の超高速の黒い斬撃と、白哉の無数の桜の盾が、丘の頂上で激しく火花を散らした。

「あはは……、やった、な……」

一護が白哉の懐へと完璧に侵入したのを見届け、僕は限界を迎えて『恋慕断絶』の回転を止めた。大斧の刃の表面には、億単位の千本桜の衝撃が、青白い限界寸前のエネルギーとなって、バチバチと今にも爆発しそうに蓄積されていた。

「白哉のお兄さん……。一護だけじゃない、俺の『倍返し』の愛も、まだ残ってるんだよね!」

僕は血を吐きながらも、不敵にニヤリと笑い、エネルギーが満ち満ちた巨大斧を、一護と激突している白哉の背中に向けて、全力で振り下ろす構えをとった。

一護の漆黒の卍解、そして僕のすべてを溜め込んだ巨大斧のカウンター。二人の相棒による極限の挟撃が、ついに朽木白哉という絶対的な王者を、完璧に追い詰めようとしていた。

 

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