『BLEACH 〜煩悩代行・千堂遥の現世奮闘記〜』 作:トート
「霊珠核(れいじゅかく)の結界を緩めるんじゃねえぞ、お前ら! 集中しな!」
地下の巨大な大砲の前に設置された蓮の台座の上で、志波空鶴(しば くうかく)の凛とした怒号が響き渡る。
僕――千堂 遥(せんどう はる)は、一護、織姫、チャド、石田、そして岩鷲と共に円陣を組み、それぞれの霊圧を中央に浮かぶ球体――『霊珠核』へと注ぎ込んでいた。
浦原商店での地獄の修行に続き、今度は空鶴の厳しい指導による、霊圧の集中訓練。
僕の超巨大な斧『恋慕断絶(れんぼだんぜつ)』から生み出される霊圧は、僕のナンパでチャラい性格とは裏腹に、あまりにも重厚で狂暴な破壊の塊だ。これを細い糸のように繊細にコントロールして球体に馴染ませる作業は、脳の血管が千切れそうになるほどの激痛を伴うものだった。
(くっ……、き、きつい……! だけど、ここで諦めたらルキアちゃんを助けられないし、ソウル・ソサエティの美女たちに会う前に干からびちゃう……!)
「ハルさん、霊圧が少し乱れています! 左側をもう少し絞ってください!」
石田雨竜がメガネの奥の目を血走らせながら叫ぶ。
「わ、分かってるって! ほらよ、僕の極上の愛の霊圧、受け取りなよ!」
「ハル、テメエの愛なんて混ぜるんじゃねえ! 球体が歪むだろ!」
一護が死覇装(しはくしょう)の袖を汗で濡らしながら怒鳴り返してくる。
「えへへ、でもハルくんの霊圧、なんだかちょっとあったかいよ?」
織姫がのんきに微笑む。その純粋な笑顔と「あったかい」という一言で、僕の脳内美少女センサーが急速にエネルギーを回復した。
「井上さん……! よし、僕のモチベーションが完全に回復した! 空鶴お姉さん、いつでもいけるよ!」
「フン、いい面構えになったじゃねえか、煩悩小僧。――よし、全員そのまま霊圧を維持しな! 志波家伝統、特大花火大砲……いくよッ!!」
空鶴が義手の右腕を高く掲げ、凄まじい呪文を唱え始める。
屋敷の天井が左右に割れ、巨大な砲身が青空に向かってその銃口を剥き出しにした。僕らが乗った蓮の台座が、ガタガタと音を立てて砲身の最奥へと装填されていく。
「――黄礫(おうれき)の壁、双瞳(そうどう)の捕縛、暗雲(あんうん)の叢刃(そうじん)、天を衝(つ)く白煙。――『カノン・一号(いちごう)』、発射ァ!!!」
ドン、ドガアアアアアアアアン!!!!
鼓膜が破れんばかりの爆音が響き渡り、僕らの身体は強烈なG(重力)と共に、弾丸となって大空へと一気に撃ち出された。
「うわあああああああああ!!!!」
一護と岩鷲の情けない悲鳴が、突き抜けるような青空へと響き渡る。
視界が一瞬で引きちぎられるような速度。僕らは霊珠核が生み出した青白い光の球体に包まれながら、瀞霊廷をぐるりと囲む巨大な壁――そしてその上空に張られた、あらゆる霊体を遮断する最強の結界『遮魂膜(しゃこんまく)』へと猛スピードで直撃した。
バリバリバリバリ、ギシャアアアアアアン!!!
「くっ……! これが、遮魂膜……っ!」
石田が歯を食いしばる。球体の外側で、激しい火花とガラスが擦れ合うような絶叫じみた結界の摩擦音が鳴り響く。僕らの身体を包む霊圧の膜が、遮魂膜の圧力によって凄まじい勢いで削り取られていくのが分かった。
「耐えろお前ら! 霊圧を切らすな!!」
一護が斬月の柄を握りしめながら叫ぶ。
全員が必死に霊圧を注ぎ込み、遮魂膜の分厚い壁を強引に突き破ろうとした、その刹那だった。
「……あ」
岩鷲が、何かに気づいたように小さく声を漏らした。
球体の中央で輝いていた霊珠核の表面に、ピキリ、と一本の不吉な亀裂が入ったのだ。
「おい、岩鷲! テメエ何霊圧を乱してんだよ!」
「ち、違う! 俺じゃねえ! 一護、テメエの霊圧が急にデカくなりすぎたんだよ!」
「何だとォ!?」
「二人とも喧嘩はやめてーーーっ!」
織姫が叫ぶが、もう遅かった。一護の爆発的な霊圧の乱れと、岩鷲の焦りが、霊珠核の完璧な均衡を完全に瓦解させたのだ。
チュドオオオオオン!!!!
遮魂膜を完全に突き抜けたまさにその瞬間、僕らの魂の乗り物だった光の球体が、空中であまりにも派手に大爆発を起こした。
「ハルくーーーーん!!」
「ハル!! テメエどこへ行くんだ!!」
「うわあああ! 井上さーーーん! 一護ーーー!」
大爆発の衝撃波によって、僕らは上下左右、バラバラの方向へと吹き飛ばされた。
強い風圧が僕の顔を叩く。眼下に広がるのは、白く美しい瓦屋根が幾重にも立ち並ぶ、広大な『瀞霊廷』の景色。
(まずい、完全にみんなとはぐれた……! しかもこの高さから真っ逆さまに落ちたら、いくら『恋慕断絶』の霊圧があっても、地面と熱烈なディープキスをすることになる……!)
僕は空中で必死にもがきながら、なんとか着地の衝撃を和らげる方法を考えようとした。
だがその時、僕の胸の奥にある美少女センサーが、地上の「とある一点」から放たれている、言葉を失うほどに濃厚で、妖艶で、暴力的なまでに素晴らしい霊圧を感知した。
金髪。爆乳。大人の余裕。そして、どこかお気楽な空気。
(この霊圧……間違いない、松本乱菊さんだ……!! 彼女が、すぐ真下にいる!!)
センサーの導きに従って視線を向けると、十番隊の敷地内と思われる美しい庭園の真ん中で、一人の金髪の美しい女性死神が、縁側に座ってのんきに酒瓶を傾けている姿が視界に飛び込んできた。
「おおおおおお! 神様仏様空鶴お姉様! 最高の墜落地点をありがとうございまーーーす!!」
僕は空中で両手を広げ、まさに「美女の腕の中」へと向かって、真っ直ぐに、猛スピードで落下していった。
空座第一高校のチャラ男・千堂遥。瀞霊廷潜入の第一歩は、まさかの憧れの爆乳副隊長へのダイレクトアタック(?)という、彼にとっては最高に不純で幸先の良いスタートとなろうとしていた。