『学園黙示録:SILVER BULLET(シルバー・バレット)』   作:トート

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第11話:カウントダウン【前編】

激しかったゲリラ豪雨は夜明けとともに嘘のように止み、床主市の空には皮肉なほどに澄み切った青空が広がっていた。

南リカのマンションのベランダには、無数の薬莢(やっきょう)が転がり、硝煙の匂いが朝の冷たい空気に混ざって消えていく。夜間の防衛戦で、平野コータの正確無比な狙撃と、銀の散弾銃による面制圧、そして毒島冴子の精密な銃撃により、敷地内に押し寄せていた『奴ら』の群れは完全に沈黙していた。

「……雨が上がったわね。インフラが完全に死ぬ前に、ここを出るわよ」

リビングで、高城沙耶が南リカのクローゼットから見つけてきた新しい服の襟を正しながら、厳しい声で言った。彼女の言う通り、部屋の水道は夜半に止まり、電気も完全に寸断されていた。街全体の機能が完全に停止する『カウントダウン』は、すでに始まっている。

一行は南リカの部屋から手に入れた重火器――M1Aライフル、ベネリM4ショットガン、そしていくつかの拳銃と大量の弾薬をバックパックに詰め込み、昨日直結始動(ちょっけつしどう)してエントランスに隠しておいた郵政カブの元へと下りた。

「平野、お前が静香先生を乗せて先頭を行け。小室と宮本は真ん中。俺と冴子、高城が殿(しんがり)だ」

銀は黒いTシャツの上に、再びあの油と返り血の染みついた作業用ツナギを羽織り、クロスボウを背中に背負い直した。手にはベネリの散弾銃が握られている。

「了解です、銀さん。高城邸までのルートは頭に入ってます!」

平野がカブのキックペダルを踏み抜き、軽快なエンジン音を響かせる。

一行のバイクの列は、水溜りの残る西側エリアの住宅街へと滑り出した。

大通りを避け、見通しの悪い狭い路地を静かに進んでいく。夜間の雨で『奴ら』の多くは物陰へと退避していたが、カブの排気音を聞きつけて、時折家々の隙間からゾンビのように手を伸ばしてくる。それらは、先行する孝のバットや、銀の正確な静音クロスボウによって、足を止めることなく処理されていった。

しかし、住宅街の閑静な一角に差し掛かった、その時だった。

「うわあああぁぁぁッ!! 誰か、誰か助けてくれ!!」

突如として、数軒先の民家の庭先から、引き裂くような男の絶叫が響き渡った。

「な、何!? 誰か襲われてるの!?」

宮本麗がバイクの後部座席から身を乗り出す。

銀は瞬時にアクセルを戻し、カブを物陰に滑り込ませた。冴子もまた、速度を落として銀の真横にピタリと並ぶ。その視線の先、立派な一戸建ての門扉の前で、一人の男が複数の『奴ら』に組み伏せられ、無残に肉を貪られている光景があった。男は床主新聞の記者――ありすの父親だった。

「お父さん! お父さん嫌ぁぁぁッ!!」

民家の頑丈な鉄製フェンスの隙間から、小さな女の子――希里ありす(アリス)が、小さな手を伸ばして大粒の涙を流しながら叫んでいた。彼女の背後からは、父親の悲鳴を聞きつけた別の3体の『奴ら』が、よだれを垂らしながらアリスの小さな身体目指して、ゆっくりと迫りつつある。

「子供よ……! 孝、あのままだとあの群れに喰われちゃうわ!」

麗が悲痛な声を上げ、バイクから飛び降りようとした。

「動くな、宮本。足を引っ張るなと言ったはずだ」

銀の底冷えする声が、麗の動きを硬直させた。

「なんですって!? あんた、あの小さな子が目の前で殺されるのを、ただ見てろって言うの!?」

麗が激しい怒りを露わにして銀を睨みつける。

「助けるにしても、無策で飛び込めばこちらが包囲される。あの路地は狭く、袋小路だ。化け物の数は周囲の家からさらに湧いてくる。……小室、平野、武器を構えろ」

銀はクロスボウを背負い、手にしたベネリM4のボルトをガシャリと引いた。その鋭い三白眼は、泣き叫ぶ少女への同情など1ミリも含んでいなかった。ただ、最も効率的に障害を排除し、あの少女という『新たな要素』を回収するための計算だけが、彼の脳内で高速で弾き出されていた。

(第11話【後編】へ続く……)

 

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