東京浅草腐れ縁   作:天海つづみ

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「ははぁ、私も覚えがありますよw」

 顔をシワだらけにして笑う

 

「刑事さんも?」

 

 高校野球など、夏大会が終わった瞬間、女子が興味を無くし別れる事が多い

「藤代君は小学校でソレを経験した訳だねぇ」

 

「そうそう、コイツその後荒れて中1で不良になったんですよw」

 わざわざ急須で茶を入れる尾上

「すぐに止めたろうが!」

「僕のお陰でなw」

「何だい?面白そうな話だね?」

 

「中1の時に…」 

 記録が伸びなくなり、何をやるにも無気力になり、中学に入ったらガタイもあって不良グループに入ってしまった

 原チャリで夜の街を走るのは確かに新鮮で、新たな世界が見えた気がした

 同時にタバコ、万引きなんかも覚えた

 

 そして2ヶ月、もっと上の高校生やチンピラっぽい人達に墨田公園で紹介された時だ

 

 あぁ…もう後戻り出来ないかもなぁ……

 そんな事を考えたら

 

「あれ?藤代じゃないか!」

 制服を崩さずキッチリ着て、七三分けの丸眼鏡が通り掛かった

 

「あ?何だお前?」

 凄む高校生達だが

 

「藤代、遂に探してたラノベが見つかったんだw後で貸すよw」

 萌絵が表紙の文庫本をヒラヒラするとドン引きの不良達

 

 

「ぶはっ!ソレは凄いな!」

 吹き出す米田

「その日から俺は『オタクのクソダセーヤツ』になりましたよ、まぁ悪い仲間から抜け出せましたが」

 

「そのお陰で今のお前がある訳だw」

 ニヤニヤする

 

「尾上君は凄い度胸だな!何で助けたんだい?恐かったろ?」

 

「コイツはずっと同じクラスでお山の大将だったけど、決してイジメとか、人をバカにして自分を上だと思う様なヤツじゃ無かった」

 まぁ脚に自信があったからかな、人をバカにすると自分がオカシクなる気がした

「そんなヤツが犯罪しちゃダメだと思ったんですよ」

 

「なるほどねぇ、君達の事は大体分かったよ、さて、田辺さんの事なんだけど」

 

「牧田に聞いたら警察の偉い人になってた、とか言ってました、20人位でクラス会?やったらしいっす、それに今からじゃ無理とか言ってましたが……多分田辺狙ったんじゃ」

 ニヤける俺

 

「え?!警察なのかい?!そりゃ初耳だ」

 知らん振りしとこ

  

「…僕は忙しくて出席しませんでしたよ」

 澄ました顔の尾上

 

「尾上!お前クラス会知ってたのか?何で俺に言わなかった?」

 

「何を言ってる?案内状行ってるか?大体同窓会なんてモノは自慢する事が有るヤツラが行く所だろ?俺達にあるか?」

 確かにな

 

「何処でクラス会やったの?」

「浅草〇〇ホテルのパーティールームと連絡受けました」

「思いっ切り地元だねぇw」

 

 尾上は意味有りげに、米田さん、と言うと

「もしかして…田辺は…上司になっていた…あぁ、キャリアとか?」

 反射する丸眼鏡

 

「さぁ?俺達所轄は何も知らされて無いよ?そうだったらもっと大騒ぎになってるはずだよ?なんで?」

 

「米田さん、気付いてますか?俺達は『君』と呼んでるのに田辺は『さん』でしたよ?」

 ニヤリ

 

 !!! 

「あれ?そうかな、気付かなかったw」 

(コイツ…油断ならねぇかもな)

「そうそう、朝も中学に行って話聴いたけどね、当時の先生も残って無くて、もっと同級生の連絡先とか……」

 

「あぁそれなら」

 俺はスマホを取り出す

「その時集まったヤツラでLINEグループ作ったそうで、牧田に入れて貰いました」

 

「何だよ藤代!なぜ俺に教えない!」

「興味なさそうだからなw」

『俺』になってるぞ若旦那w

 

「ちょっとトーク見せて貰える?」

 米田は画面を見ると

「…コレは助かるかもしれない、後でまた見せて貰えると助かるよ」

「仕事中じゃなかったらいいすよ?」

 

 

 ………………………………………………

 

「米田ぁ!テメェ何でスマホ借りて来なかった!」

 立ち上がる梶山

「仕方ないでしょ?彼はアレで仕事してるんすよ?彼の損失分コッチで出せます?」

 

「そんな経費認められるかよ」

 座る

 

「どうせ被害者のスマホなんて本部で確認してるでしょ?」

 上を指差す

 

「……ねぇってよ」

「はい?」

 指が曲がる

 

「被害者のスマホは見付かってねぇんだよ、多分犯人に壊されてる」

「あー…もう全部情報出してもらえませんかね」

 ヤレヤレと首をすくめる米田

 

「上も困ってるらしいぜ?手詰まりかもな、結構聞けたぞ」

「え?課長、誰かエリートに同期でも居るんですか?」

 米田がまた上を指差す

「居ねぇよ、シュレッダーが調子悪くて総務に来たらしくてな…」

 

 察してニヤける 

「あーなるほど、捜査資料が『偶然』見えちゃった、と」

 

「その『偶然』で分かったのはな」

 ニヤリとすると数枚メモを出す

 

 トランクは鍵が一部壊れ内部に浸水、水温により死亡推定時刻は確定出来ない

 

 トランク外装に梱包テープ

 

 腐敗、膨張は殆ど見られない事から当日、又は前日に殺害、遺棄されたと見られる

 

 生活反応のある傷は後頭部の鈍器による物、その他複数の打撲痕はトランクで流された時のモノと思われる

 

 被害者が持っていたスマホは仕事用が自宅、プライベート用は行方不明

 

 

「コレだけッスか?」

「もう1枚ある」

 

 最後に位置情報を確認出来たのは両国橋周辺

「?、え?上流からトランク流れて来たんでしょ?おかしくないですか?」

 首を傾げる米田

「殺害現場が下流で発見現場が上流なんて変だよな、満潮でも逆流しねぇし」

 

「あの……」

 菱木が手を挙げる

「犯人がスマホも川に投げて、流され…」

 

「お前が喋るなんて珍しいな!まぁこんなトコまでしか分からねぇ」

 

「で課長、どうします?」

「明日その配達員呼び出せ」

 

 

………………………………………………

 

 5日、朝9時、いきなり米田から電話、警察署近くのコーヒーショップへ行くよう指示される

 行ってみるが店の中に天パ頭は見えない、と

「ピロン」

 スマホが鳴る、仕事の注文が来てしまった、仕方なく米田に遅れると連絡すると

「良いの良いのw配達先見て」

 受け取り先は……〇〇警察署?!

  

「お早う藤代君!こっちこっち!」

 入り口から手招きする米田

「入って良いんですか?」

 デカいガタイで小さくなる、警察署なんて初めてだ、自転車を邪魔にならない様に気を遣いながら自動扉の横の方へ

 

 入ってみると警察署の中って案外騒がしいんだな、一般人らしき人が大勢いる

 そういえばオヤジが運転免許の更新で警察署に行ってたな、この人達もそれなのか?

 

 そのままオッサン臭い部屋に連れて行かれると6人の男、米田や菱木、そしてガタイのデカい白髪混じりの反社?

 

「おおっ!良いガタイしてんな!」

 俺の肩をパンパン叩き、機動隊に推薦するぞと笑う、恐くてデカい中年

 

「あ、ありがとうございます」

「藤代君、この人が課長の梶山さんだ、スマホ見せて欲しくてね」

 米田が凄く良い人に見える

 

「その前にご注文の商品を……」

 テーブルに並べる、コーヒーは分かる、1つだけキャラメルラテにクリーム、チョコチップなどがゴテゴテ載った、女性らしいヤツがあるんだが

 

「誰だよ…こんなの頼んだヤツは」

 呆れる米田

 

「…俺だ、文句あっか?」

 ギロリと睨む梶山

「協力して貰うんだ、高い商品の方が歩合良くなるだろうよ、なぁ?」

 

「ははは…」

 愛想笑いの俺、案外良い人なのかも知れないな、でも配達『件数』が重要で単価は関係ないんだけど

 

「で、藤田君だったか」

「課長、藤代君」

「あぁスマン藤代君、我々としてはどんな情報も欲しい状態なんだ」

「はい」

「かと言ってLINEグループに我々が入るのも変だろう?」

 

「はい、空気的に」

 それはいくらなんでも

 

「そこで、だ、そのLINEの中で被害者の事を探って欲しいんだ」

「探るって何をすれば…」

「何でも良い、噂でも何でも構わない」

 

 ……まぁソレくらいなら……あ!

「尾上も一緒にやって良いですか?」

 

 梶山が米田を見る

「あぁ、仏具屋の同級生ですよ」

 

「…………仏具屋の…米田、どんなヤツだ?」

「本ばっかり読んでるせいか知識はスゲェありそうです、もしかしたら切れ者かも」

「…うん、それで構わない、藤代君、お願いする」

 

「……具体的に何をすれば?」

「女性関係、家族関係、仕事関係、何でも良い」

「分かりました、やってみます」

 

「米田、菱木、お前等は連絡係りだ」

「分かりました」

 

 バタン!とドアを鳴らし偉そうな制服、スキンヘッドの小さなお爺さんが入って来るが……

 雰囲気が普通ではない、反社の親分?

 

「ガタタッ!」

 突然全員立ち上がり気を付けの姿勢で一斉に敬礼

「お疲れ様です!!」

 

 お爺さんは俺に向かい

「あー君は帰りなさいね」

 にこやかに言う

 

「あぁ、俺が外まで案内しますねw」

 米田に促され部屋から出る、扉を閉めた瞬間

「テメェらナメてんのか!!」

 響く怒号

 

 小声で

「米田さん、何ですかあれ?」

 小走りで外へ向かう

「副署長、武道の達人でスゲェ恐いんだw」

 警察署には出前が来るが、今は情報漏洩の危険から奥まで入らせないそうだ

「課長怒られてるだろうなぁw」

 

 ニヤニヤする米田、そうかこの人上手く逃げたのかw

 親分に怒られる若頭って所かw

 

「じゃあ宜しく頼むよ」

「分かりました」 

 ……………………………………

 

 午後4時

 

「で警察署行った訳よ」

 唐揚げ弁当

「面白いな」

 今日は炒飯

「それからな、刑事の部屋でアイツも居たけど、例のイメージ出なかったぜ?」

 ガラスを指差す

 

「考えすぎだったか、で?何の話題から投げる?」

 ワクワクしている尾上

 思い出す、不良グループ抜けてからコイツと良く遊ぶようになった、ここでゲームばっかりやってて、尾上の両親に怒られてた

 ポ◯モンとか対戦ゲームでこっちの手を探る時の顔だ

 

「田辺の話題なんてあるか?」

 最後の唐揚げを摘む

「小学校の時何度も遊んだ事あったけど、アイツいつも途中で帰って勉強してたみたいだからな」

 箸をを咥えたまま

 

「どうするか……」

 

「何を悩む?」

 眼鏡が反射する

 

「何か良い方法あるのかよ?」

 

「丁度良いヤツがいるじゃないかw」

 スマホを出す、しばらく操作すると

 

「ピロン」

 俺のスマホに通知音、LINEだ、開くと

『仏具屋の尾上だ、グループに入れて貰ったよ、さて皆にお知らせがある、藤代は◯ber Eatsの配達員だよ?浅草近辺なら来る可能性あるよ?さぁ皆で注文しよう』

「なっ?!お前!」

 

「ほら、情報にアクセスしやすくなったろ?」

 茶を啜る

 

「あのな、配達員の指定なんて出来ないんだぞ?」

 丁度良いヤツって俺かよ

 

「ほう……なんで俺が毎日注文出来てるか考えなかったか?」

 眼鏡が光る

 

 ……………アレ?……………何でだ?

 

「米田さんも同じ手使ったろ?」

 ???

 

「フッフッフ、藤代君、教えてあげよう」

 メッチャ良い声

「君は一本向こうの道の弁当屋に、毎日午後3時50分に行くだろう?」

 唐揚げ弁当のパッケージを指差す

 

 丁度暇になる時間だからな

 

「配達のシステムはね、注文主と店から最短距離の配達員が選出されるのだよ」

 空中に三角形を指で描く

「その時間にあの店に注文入れたら、必然的に君になる可能性が高いのだよ明智君」

 今度は直線……

 

「……………なぁ、知らないの俺だけか?」

「こういう所からトリックのアイデアを思い付くんだw」

 推理小説の表紙を指差す

 

 俺は何て鈍いんだろう

 

……………………………………………………

 

 

 翌日6月6日

『藤代君?上野のコーヒーショップに3時に来られる?』

 牧田からグループLINE、時間通りに行くと返す、店に着くと

「ピロン」

 受け取り先は…やっぱりネイルサロン

 

「お待たせ致しました」

 少し声を抑えて入る

「ゴメンねぇ!ウチのスタッフが会いたいって言うからさぁ!」

「もう店長ぉヤメて下さいよぉ!」

 愛嬌を振り撒くスタッフ

「この娘アンタみたいなガチムチがタイプなんだってさw」

「やぁだぁー」

 恥ずかしそうに店の奥へ引っ込む

 

 悪い気はしないなwと、いかんいかん

「なぁ牧田、暇な時間あるか?」

「え?ナンパ?」

 驚いた顔で

「違う」

「分ってるわよ、冗談よw」

「俺皆の近況知らないだろ?いきなり絡み辛くてな、尾上は当てにならないし」

「アイツ昔から本ばっかりだからねw」

 

 午後10時過ぎなら良いと言われた、時間通りに連絡すると、仕事のストレスなのか喋る喋る

 高校を卒業と同時に銀座でキャバ嬢になり2ヶ月で挫折、その時の紹介でネイルサロンに見習いで入り、今では雇われ店長になったそうだ

「天下取ってやるって意気込んだけど、現実思い知ったわよ」

「そんなに凄い世界だったのか」

 客のレベルが高い、と言う事はキャバ嬢のレベルも高いのだ

 そもそも顔とスタイル良くてメイク、髪型、アクセサリーなど見た目に気を使うのは当然、身のこなし、仕草、グラスの取り方、置き方、客への触れ方なんて速攻で出来て当たり前

 その上毎日のニュースなどの各情報、客のスケジュール把握、自分磨きのエステにジム

「しかもさ、コレで学費稼いで学校行ってるヤツが普通にいるのよ」

「昼は学校なのかよ!」

 いつ寝るんだ?

「あそこは努力出来る天才が集まってる場所だった、全員アスリートよ」

 

「アスリート……」

 100mトラック……

 

「アンタこんな気持ちだったんだよね、小学校の時……」

 

「………………チッ……忘れた」

「覚えてんじゃんw」

 

 

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