『このスマホ同型かも、田辺君のと似てる、アタシ借りて写真撮ったから覚えてるんだ』
9日、スマホの写真に対して返して来たのは木村優樹菜、当時から自分の事をカワイイと言い、男子に愛嬌を振り撒くタイプ、
女からは八方美人と嫌われていたが…コイツも参加してたのか
『後で話聞かせてくれ』
そう送ると
「腕触って良いですかぁ?」
ネイルサロンでスタッフ達に触られる俺
「悪いね、何かウチのスタッフとお客様がガチムチ好きな人多かったw」
笑う牧田
「すごーい!カチカチぃー」
腕を突付く
「あら、凄い体してるわね」
背中から尻にかけて撫でる、金持ちそうなオバサン達
「ちょ!くすぐったいです」
「良いじゃないw」
「やっぱり男は太い腕ですよねぇ」
両手で俺の右腕を掴むスタッフ
「若いわね、胸よ、胸板」
「あら、肩から背筋の…」
俺の体を舐める様に見る
悪い気はしない、しないが…何か違くないか?
俺がホストと言うか何と言うか…まぁその分貰ってるしなぁ
「じゃあな牧田」
「今度は明後日ね」
「えぇ~もう行っちゃうのぉ?」
「店長、彼が来る日予約入れるわ」
……やっぱり俺がネイルサロンの客寄せになってないか?
でも女性と触れ合えるってのは良いなw
『そんな事よりさ!チャンネル登録と高評価してよ!後メンバーに入って!』
すぐに返信が来てた、まさか同級生に◯チューバーが居たとは
木村優樹菜は就職先が無く、ニートから◯チューバーに転身したそうだ
ゲームの実況プレイやアニメの同時視聴など
LINEを終えて見てみると◯◯キトンと言うチャンネルで、何処かで見たような萌絵を、無理矢理3d化したような三頭身キャラが、超高音で喋っている
金髪ツインテールに猫耳尻尾、この世にどれだけ似たキャラ居るんだろう
登録人数は数千人
仏具屋、いつもの時間
「へぇ、◯チューバーねぇw」
「しかもプロフにJKってw」
動画を見せる
「登録人数増やすために必死だなwまぁ中身オッサンよりは良心的だw」
笑いながら線香や位牌の位置を確認、注文の有無をPCで確認
弁当を食べ始める
「合ってるの性別だけだろwそうだクラス会の時の写真いくつか送って貰った」
二人で見ていく
「ほう、皆面影あるな」
眼鏡を上げる
「そりゃ本人だからな」
田辺…丸顔の中肉、グレーのスーツに変なネクタイ、なるほど、格好悪い
鶴見…ラフな格好で少し猿っぽい顔、髪型変えたらそれなりだろうに
牧田…おいおいキャバ嬢が居るぞ、昼のホテルに夜の蝶
木村…何度見ても……痛い痛い痛いわぁ
「27でツインテールは無いよなぁw」
「こりゃ逆に凄い!拡大すると服もフリルが付いてるぞ!」
爆笑する尾上、言ったら悪いが、そもそも木村は美人でもカワイイタイプでもない
自称カワイイだ
失礼だが一頻り笑った後
「……で、コレが黒岩か」
「……なるほど」
そこには分厚い眼鏡を掛けた男、ラフと言うより地味……いや
ホテルのパーティールームだというのに、チノパンとトレーナー……いやスウェット?
「恐らく……普段の生活に影響あるほど弱視になった様だな」
「眼鏡さえ掛けてなかったのに」
地味で目立たないが、頭が良くて田辺と良く話してた
ポ◯モンの数値計算とかが早く、将棋なんかも休み時間にやっていた
「なぁ藤代、今思ったんだが……」
「?」
「黒岩から返信無いのは…そもそもスマホの画面見えるのか?」
「……あ!」
「自動読み上げ機能だって誰かに設定して貰わないと無理だろう?」
「そうか!」
「よし、俺が直接電話してみよう」
LINE通話してみるが
「ダメだな、時間が悪いのか?」
時計を見る尾上
「……黒岩はお前に任して良いか?」
「勿論だ」
…………………………………
「おい!どうなってんだ?!」
2階から刑事課に来た赤バッジの特捜数人
「お前等が犯人じゃないのか!?」
「署内で窃盗とは良い度胸だ!!」
「い、いやそう言われても……」
「…………」
狼狽える米田と菱木
「おいおい、2階はあんたら特捜が占領してんだぜ?そこから無くなったモノの責任なんざ知らねぇよ、俺達所轄は入れねぇんだよなぁ?」
仁王立ちの梶山
あのスマホが紛失したのだ
「コイツラは発見時に現場をうろついてましてね、スマホの事を既に知ってましたよ、梶山課長?」
特捜の一係、係長の時田
「川の中探してたんだろ?金属探知機まで使って、だったらスマホだと思うのが普通だろうよ?」
睨み合う両者
「この責任は取って貰うぞ?!」
「知らねぇよ!自分らの管理が甘ぇからだろうが!」
「バァン!!」
突然扉が開くと
「うるせぇっ!一般人に聞こえるだろうがぁ!!」
入って来る副署長
「すいません!!」
気を付けで敬礼する梶山と時田
「おう、ん?他の顔も本庁で見てるなぁ」
「………………あ!!」
他の特捜も一斉に気を付けで敬礼する
「上級格闘指導官の浜崎師範でしたか!道着でないので気が付くのが遅くなり失礼しました!」
「それはいい、お前等はウチのバカ共が盗んだって言うんだな?」
睨む
「い、いえ、確認ですよ」
しどろもどろの時田
「責任の所在はどこにあるか…お前の一存で決まるのか?」
「い、いやぁ、初めての事例でして…」
「だったら上の判断仰いでからするのが筋ってもんだ、そうだろ?で?いつ無くなった?」
「いやぁ……今朝には…」
「もっと早く言え!こっちでも探させる!」
「はい……失礼します」
出て行く特捜
「ありがとうございます副署長」
ペコペコする反社
「梶山ぁ、いつも言ってんだろオメェはよ、やるなとは言わねぇ、見えねぇようにやれってな、そうすりゃ署長も俺も円満退職出来るってもんだ」
「い、いや本当に無くなったスマホの事は知らないんですよ」
「ああっ?」
……………………………………………………
10日、午後4時
「今日は米田さん来ないな」
今日も唐揚げ
「まぁ警察もヒマじゃないだろ、お前唐揚げばかりで大丈夫か?」
こっちも唐揚げ
「で?どうだった」
「昼に通話出来た」
………………………………………………
「もしもし?黒岩」
「……その声は……尾上?」
「良く声で分かったな」
「今視力が弱くなっててね、逆に耳が良くなった気がする」
「なるほど」
「この時間に連絡くれて良かった、昼休みの時間以外は出ない事にしてるんだ」
「…眼が悪い話は本当なんだな、詐欺や勧誘に乗らないための自己防衛か」
「クラス会、来てくれたら良かったのに」
「今になって行かなかった事を後悔してるよ」
「また将棋で勝負したいな、尾上は絶対頭良いはずなのに」
「俺は勉強は苦手だwそうそう、藤代覚えてるか?」
「藤代…勿論!あのガタイ良いのにイジメとか絶対しない…あれ?中学出てから音信不通だろ……住所分からなかった」
「茨城に引っ越してたんだ、最近こっちに居てな、◯ber Eatsの配達だw」
「……なぁ尾上、藤代と直接会いたいんだが」
「……それはまた何故?」
「話したい事があるんだ、事故の関係で」
「分かった」
……………………………………
「俺に直接会いたい?」
何で?
「とにかく一緒に行こう」
「いつ?」
「今、2人乗りで」
「……バカなのかお前は?」
外を指差す、自転車はスポーツタイプ、荷台など最初から付いていない
「それに二人乗りなんて警察に止められるぞ」
「ふむ…仕方ない、藤代は自慢の脚で走ってくれ」
「ふざけんな!」
俺はチャリを押し、尾形と歩く
「まったく、日傘を出す羽目になるとは…」
「これでも昼よりマシだ」
目的地は千住、黒岩は至近距離に住んでいたのだ、が、夕方だと言うのにこの暑さ
「日傘は大袈裟じゃね?」
「何を言う、紫外線は肌の大敵だ」
女子か!しかし着物が汗で汚れたら大変かもしれない、俺は知らないが洗うこと出来るのか?
「なぁ、その着物って手入れ大変だろ?」
「高価なモノの訳ないだろ、コレは何年か前に流行った外国人向けの土産物、その売れない在庫だ」
袖を引っ張って見せる
「ジャージで丸洗いok、シワにならないし乾くのも早い、難点は綺麗な柄が再現出来ずに廃れたんだ」
そうだ、そもそもコイツは金無いんだった
………………………………………………
住宅密集地に二階建てアパート、その1階に言われた住所があった
インターホンを押すと
「はい」
「尾上だ、藤代を連れて来た」
ガチャッ
「良く来てくれたね」
分厚い眼鏡で表情が……笑ってるのか?
160cmあるかどうかの痩せ型
尾上は見回す、中に入るとドアの横には白い杖、そして壁一面のデカい文字に教室にあった様なデカい時計
……成る程
「黒岩、こっちが藤代」
少し大袈裟に指差す
「懐かしいな黒岩」
俺は前に出る、見えてるのか?
分厚い眼鏡でじっと見ると
「うん、顔はボヤけてるけど、その大きなシルエットと声は藤代だ、何か変わった服着てるか?上が黄色で下が短パンか?」
「サイクリング用のスーツだ、ちょっと派手でなw」
「何かデカいのび太君に見えるw」
笑い合う
その間尾上は部屋を観察する、壁に張られた拡大された新聞記事、点字の本、おそらくサポートしている人の連絡先がデカい文字で貼ってある、そして田辺と書かれた電話番号
「藤代はポ◯モン弱かったなw」
「お前は搦め手が上手すぎたぜw」
「で尾上は……浴衣か?」
じっと見る
「安物の着物だよ、仏具屋の店番はこの位で丁度良い」
嘘つけ中二病
尾上は眼鏡を上げると
「なぁ黒岩、藤代呼んだし話の腰を折ってすまないが、本題に入って貰えるか」
「……そうだね、ガイドヘルパーさんが来る時間になるし」
座布団は2枚しかない、俺はカーペットに座る
「この眼だけど」
大学四年の夏、トラックが単独事故を起こした、街路樹に衝突した自爆だったが
「その街路樹の下敷きになったんだ」
その時両目に枝が刺さったが、水晶体は無事で回復、その程度何とも無いハズだった
「就職してから急に眼が見えなくなってきてね」
銀行に勤めていたがやむを得ず退職、視神経に重大なキズを負っていたらしい、再就職先を探していたら、自分の事故の記事をネットで見付けた
「恨んでいたからかな、どうにも我慢出来なくなってね、調べ始めた」
田辺にも動いて貰って、警察の資料も調べて貰ったら、あのトラックドライバーは遺書を書いていて、自殺だったと
「何だよ!自殺に巻き込んだって事か?」
「……それは……どう言ったら良いか……」
俯く尾上
「気を使わないでくれ、僕も納得行かなくてな、更に田辺に調べて貰ってた」
田辺によると、そのトラックドライバーの遺書には恋人の所へ行くとあったそうだ
「田辺は警察キャリアでさ、警察の資料の閲覧レベルが高いそうだ」
成る程、階級によって見られる資料が変動するのか
「で、思い付きで過去の事件と、トラックドライバーの名前を照らし合わせたそうなんだ」
名前は小野寺一樹
俺達が中1の頃、向島で起きた事件の被害者だった
「……どんな事件だ?」
俄然興味が出る尾上、眼鏡が光る
向島の公園で大学生カップルが不良に襲撃された、金品を奪い男性は暴行、女性は想像に任せる
そのすぐ後女性はショックから自殺、小野寺はそのショックから精神を病んだ
その後社会復帰してトラックドライバーに
「ひっでぇ……」
「そうか……黒岩、その不良グループの事を藤代に聞きたいんだな?」
「そうなんだ、藤代は不良やってたろ?」
「1年の最初だけな」
「その時のグループとは違うかも知れないけど、何か知ってないか?」
「いや、あの時付き合い無くなったから全然分からない」
首をふる
「そうか、少年法で守られてるから名前までは出て来ないらしくて、田辺も調べられないみたいだ、最近忙しいみたいで連絡無いし」
亡くなった事を知らない…どうする、言ったらショックだろうし
「でな藤代?アイツが居たんだ」
眼鏡を上げる
「アイツ?」
「そう、クラス会の時に」
「ピンポーン」
「あぁゴメン、ガイドヘルパーさんが来ちゃった」
黒岩が出ると
「あら、来客中でしたか」
「ありがとうございます、5時ギリギリですよね」
目を凝らし壁のデカい時計を見る黒岩
来たのは60を過ぎているだろう女性…ボランティア?買い物袋を持っている
「じゃあ黒岩、また来るよ、近所だし」
「俺も聞きに来る、そんな事になってるなんて知らなかった」
…………………………………………
「藤代、チーム名とかなかったのか?」
「そんなの覚えてるかよ」
帰り道、まだまだ暑い
「気付いたか?白い杖に点字の勉強、完全に視覚障害者になりつつある」
「あぁ、許せねぇ」
暫く無言になるが
「あ!しまった!」
立ち止まる着物
「どうした?!」
「LINEの自動読み上げの設定してやれば良かった!」
「お前ヒマだろ、明日行ってやれよw」
「あのガイドヘルパー?さんじゃスマホ詳しくないだろうしなw」
「ソレよりよ……」
自転車を押す手が止まる
「あぁ、『アイツ』って誰か、だろ?」
立ち止まる着物、懐からスマホを取り出し
「米田さん、今から家に来られます?」
………………………………………………
警視庁内、某会議室、二人の男が話し合う
「浜崎、時田とモメたらしいな」
キリッとした老紳士と言った風情、眼力がある
「これはこれは捜一課長、お忙しい中どうも」
キチンと頭を下げる副署長
「やめろ、ここでは同期だ」
「……あー、間宮よう、ウチの署の連中が不貞腐れてんだ」
ドカッと椅子に座る
「自分の縄張りに本庁が乗り込む、嫌な気分なのは分かる」
コチラはキチンと座る
「本庁は自分の手でケリ着けたいのは分かるぜ?キャリアの死だからな、だから俺達に情報出さないだろ?」
「そうだ、未来の幹部を奪われた以上、ケジメは取る、取らねばならん」
静かだが厳しい声
「警察が舐められちゃあいけねぇ、それは分かってるぜ?」
間が開く
「……だがよ、現状はまだ何も掴めてないんだろ?」
「スマホ内のメモリカードからは何も拾えなかったらしいが……本体を紛失したそうだな?」
「署内の問題については本当に面目ない、この通りだ、だから詫び入れに来た」
頭を下げる
「浜崎、お前は実直すぎる、上に楯突かなければな」
「性格だ、この歳で矯正は無理だ」
「その頭に免じるが……実は田辺の内ポケットにペン型のボイスレコーダーがあってな」
「そんなモンあったのかよ!」
「一部復元出来た、聞いてみるか?」
『驚いた、まさか犯罪者が警察になっていたとはね』
『………………』
『更正?馬鹿を言わないで下さい、今も被害者は苦しんでる!』
『…………………………』
『一生飼い殺しにしてやる!』
「全部ではないし相手の声までは入らなかった様だ」
胸を叩く
「おい待て!…キャリアが脅迫してたってのか?しかも元犯罪者の警察を?こんな話が表に出たら…」
「それなりの立場の首が飛ぶ」
自分の首に手を当てる
「コレ知ってるのは時田だけか?」
「本部の数人だけだ、苦労を掛ける」
思い出す、時田達がピリピリしていたのはコレか
「スマホ本体は署内のケジメだ、誰がやったか調べるぜ?だからよ」
「うむ、合同捜査に入る、だが今の話は」
「こんな話出せる訳ねぇよ」
………………………………………………
夜7時菱木を連れて米田が来た
「何か分かったのかい?」
尾上は黒岩から聞いた交通事故、向島の事件、不良グループ、そして
「アイツ?」
「ええ、ソレが誰だか分かりませんが、また明日聞いて来ます」
「うん……黒岩君の住所教えて貰える?あと電話番号」
「はい、昼休みの時間以外は出ない事にしてますから、気を付けて下さい」
「直接行った方が早いかも知れないっすよ?点字とかの勉強してるみたいだし」
すると米田、菱木の携帯が鳴る、画面を見ると
「先輩、緊急招集」
小さい声の菱木
「だあっ!せっかく来たのにめんどくせーなぁ!」
外へ駆け出す二人