「話してみて下さい」
時田に促される
「変に目立ち過ぎませんか?このコート」
指差す
捜査員達の顔が「は?何が?」って顔になる
「尾上君、ホームレスなんだからどんな服を着ていようが…」
「僕にはまるで『さぁ見てくれ』と言ってるように見えますが」
画面に映る背中のの白い汚れを指でなぞる
「田辺殺す時に着てたモノだよな?普通なら脱いで捨てるよなぁ」
「田辺が発見されたのが6月1日、全部それ以降に記録された映像ですよね、逆にそれ以前がありません」
「いくら夜でもロングコートって暑いよな」
「失礼ですが時田さん、『ホームレスだから』で思考が止まったのでは?」
捜査本部、全員が黙り込む、どうやらそうらしい
ホームレスだから汚れたモノでも着る
ホームレスだから犯行の後でも着てる
ホームレスだから隠蔽なんて考えない
「……コレ…陽動ですね」
その言葉で全員の目が動く、反応している、皆心のどこかで思っていた
「田辺の殺害をこの姿でやったと見せて、自分はこの辺りに住んでると見せて、最後は上野公園に捨てておけば誰かが拾う、そして自分は安全となる」
尾上の言葉に全員が時田を見る
??、何だ?この雰囲気?
「?…時田さん…これは…僕の知らない要因が出てきたのでは?」
「…………………………」
黙り込む時田
「時田さん、何か……言い辛いとか?」
30秒ほどの沈黙のあと
「二人共、良く聞いて欲しい、私はこの問題を大きくしたくない」
「…分かってます、未明の貴方の態度、それから後から立ち上がった…ええと」
「尾上、あの人副署長だ」
「副署長の言葉で分かります、捜査一課長に責任を取らせたくないんですよね?」
「…………………………」
下を向く時田
「何だよ尾上?どういう事だ?」
「……容疑者、いますよね?」
メガネが光る
「コイツだろ?」
画面のホームレスを突付く
「藤代、そうだけど多分違う意味だ」
「?、違う意味?」
「恐らく…そいつは普通の一般人じゃないんだ」
「?」
何だそれ?
「時田さん、疑っているのは……もしかして警察官ですか?」
「マジかよ!!」
全員がピクリと反応する、どうやら正解らしい
「ふーーーーっ……」
長い溜息の時田
絶対に口外しない事、ネットに書き込まない事を前置きして
「福山と分かってから今朝まで菱木の個人情報を調べた、菱木は母親の旧姓、中学1年の時両親が離婚、菱木は母親の実家がある富山へ行き、後に警察学校、現在に至る……そして父親は……元警察官だ」
頭を抱える
「なるほど……」
「そりゃあ…大事だな」
警察官の息子で不良……
警察のキャリアが過去の恨みで、警察官を脅迫、そしたら父親の元警察官に殺害された?
マスコミに出たら警察の信頼が揺らぐ、有ること無いこと書かれ、ネットも大炎上ってとこか
「こんな事が公になれば上の首が飛ぶ、それに……更にに良くない事が分かった」
目頭を摘む
「元この署の地域課だ」
「なっ?!」
「それは…また何と言うか…偶然なのか?」
「実はな、この会議室から田辺君のスマートフォンが紛失している」
!!!
「メモリカードは本庁の科捜研に送られたが、本体はこっちでな」
少し声を抑えると
「今特捜数名と副署長が動いている」
「福山のオヤジが盗んだって事か?」
「いや、福山自身の可能性もある、時田さん、福山の父親は現在は何を?」
「十数年前に依願退職、その後は分からない」
「……なるほど、映像を全部見直します」
となるとこのホームレスは、福山の父親の可能性が強い
………………………………………………
「お前のスマホは!?」
「田辺のスマホもだ!」
「福山!お前父親に協力させただろ!」
「どうやって連絡した?!」
「何とか言え!!」
今朝、署の取り調べ室に福山は移動させられ、尋問が続く
俯き無言の福山
なぜか福山はスマホを持っていなかった、そして田辺のスマホも行方不明
「黒岩君も父親がやったのか?!」
「何とか言え!!」
隣の部屋から見る米田と梶山
「まぁ素直に出すハズもないかぁ」
「お前指導してたろ?何か知らねぇのか?」
「プライベートまで踏み込みませんよ、ハラスメントですよ?」
「めんどくせー時代だなぁおい」
……………………………………
コインランドリー周辺の防犯カメラ映像を見直すと、夜でも会社員などが歩いているし車もいる、自転車に乗った警官も映っている
「自転車乗った警察官も映っていますね、一応注意して見ます」
通行人、車に混じっている、普通なら除外するが
「全部ではないが大体のコースは確認が取れている」
書類をパシパシする
「え?チャリの警察官って適当に走ってる訳じゃないんだ?」
「多少はあるが、その為に日報がある」
コインランドリーと両国橋周辺の防犯カメラ映像を倍速で見ていく
「あれ?」
何だ?この違和感
「どうした藤代?」
「いや…ん?…あれ?」
このチャリ……何かが変だ、俺は繰り返し見る
「何だ?やっぱり変だ」
「藤代、どこが変なんだ?」
画面には白い自転車で走る警察官、顔は街路樹で見えないし夜で映りも悪い
「藤代君、どこが変ですか?」
時田も画面を見に来る
「……あれ?これママチャリだ!!」
「は?」
「それが何か?」
尾上と時田はポカンとするが
「え?!警察の自転車ってママチャリじゃ無いだろ?後ろに白い箱も無いぜ?」
!!!
「おい!確認しろ!!」
地域課の人に見てもらうと警察用と違うと言う
「お前良く分かったな」
「バイト始める時にチャリ選びしたからな、フレームの種類とか多少分かる」
上野、両国橋にも映っている、平然と走っている
誰もその違和感に気が付かない、警察官が乗った白い自転車、当たり前の風景過ぎて警察も、まして一般人は気が付かない
「堂々と走ってるな」
「おい!!直ちに手配だ!!全捜査員に伝えろ!!警邏中の自転車に注視せよ!!」
時田が無線で指示を飛ばす
「そうか!分かった!」
「何がよ?」
「この映像」
コインランドリーから出て行く瞬間で止める
「……何か変か?コレ?」
「尾上君、まだ何かあるのか?」
「足元見てください」
画像が荒いが…スーツ?に革靴?
「汚れてませんよね?」
「………………そうか!」
ハッとする時田
「そうか!コレ帽子変えてコートを羽織ってるだけかよ!」
福山の父親は警官とホームレス、二つの姿を使い分けたのか
……………………………………
「なるほどなぁ、警察の制服どっかで手に入れたな」
画像を確認する副署長
「コレはこの署の正面の防犯カメラ映像だが…制服着てるヤツは除外して考えてたからな」
その初老の警官は夜に書類を提出、上野付近のコインランドリーで、コートの男を見かけたと報告
元警察官なら書式も全て分かっている、まして元はここの署員、勝手知ったるって訳だ
「恐らくこの時にココに入ってスマホを持ち出したんですね」
事件の全容が見えて来た
しかし
一向に偽警官は見つからなかった
……………………………………
6月16日
数日連絡が無い
「解決したら普通何か言ってくれるもんじゃね?」
唐揚げ弁当
「いや、極秘で捜査したんだ、何も言わないんじゃないか?」
今日は日替わり、生姜焼き
「俺達を信用してくれたが、表に出たら大変だぞ?」
ネットに晒す気なんて全然無いがな
安っぽいチャイムと共に
「尾上君…」
フラフラと入る米田
「米田さん!大丈夫ですか!?」
「ちょっ!この椅子に!」
俺はパイプ椅子を前に出す
どうやら解決していないらしい
「参ったよ、菱木は口割らないし父親は見付からないし」
「そうでしたか」
尾上は冷えたお茶を出す
「尾上君、こういう時、推理小説ではどうやって犯人予想するんだい?」
目の下の隈が濃い
「コレは面白くなくなるのでやらない様にしてますが」
メガネを上げる
「尾上、これは現実だ」
「容疑者が分かっているなら、登場人物全員の行動を、時系列で書き出すんです、これやると本が詰まらなくなりますが」
「尾上、本と現実一緒にすんなよw」
「……………………そうか」
反応が鈍い
「……その様子だと、もうやりましたね」
「うん…捜査の基本だからね…それでも見付からないんだ、二人共、また署に来て貰える?」
……………………………………
「時田さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、来てもらってすまない、どうも警察官の視点だと分からないようでな、柔軟な思考の君達なら分かるかと思ってな」
フラフラの時田、顔色が悪い、っつーか寝ろよ、まともに頭働かないだろう
捜査本部全体がそんな雰囲気、そして汗臭い
「さて、紙と鉛筆を下さい」
「コレで良いかな?」
A4用紙が出て来る
先ずは……福山
仏具屋に出入りしていた為に、ある程度書き出せる
声を聞かれ……田辺の捜査…黒岩の死
「米田さん、合ってますか?」
「うん、大体ね」
「では次に……」
捜査本部に鉛筆の音だけ静かに響く
俺はその様子を見る
福山は声を聞かれ、父親に伝えた、父親は福山を庇う為に田辺を殺し……黒岩も……
ホームレスの姿と警官の姿を使い分け……それってある意味街に溶け込んでるよなぁ
ここでスマホを盗んで……?……あれ?
「米田さん」
「何だい藤代君?」
「福山と一緒に行動してましたよね?」
全員が俺に注目する
「ココに来て怒られたって言ってませんでした?」
「ああ、両国橋で特捜に見付かってね」
捜査員を見る
「そこからどうしました?」
「一緒に特捜の車に押し込まれて、時田さんから説教、更に課長から……1時間位かなw」
笑う
「そのあと家に来たな…」
尾上は手を止めない、カリカリと音がする
「尾上、福山はいつスマホが見付かったって父親に連絡したんだ?」
尾上の手がピタリと止まる
「この日の夜だろ?」
顔を上げる尾上、書き出した時系列を指す、スマホを発見した日の夜
全員が考える、福山か父親が盗んだはず、スマホはココに来てから早々に無くなった
だが……アレ?
「時田さん、無くなった事に気付いたのはいつっすか?」
「朝には消えていた」
「福山は夜中にココに入れました?」
「いや、まだ合同捜査になってなくて署員は入れなかった、我々特捜のバッジをしている者しか…」
それは恐らく父親……?
「米田さん、確かずっと一緒だったんじゃ…あの日夜勤が何とか言ってましたよね?」
「あ!時田さんに怒られた日!課長に夜勤押し付けられてずっと一緒だった!」
眠そうな糸目が開く
「じゃあ尾上…田辺のスマホ、見付かった事をどうやって父親は知ったんだ?」
「いや藤代君、トイレまで一緒だった訳じゃないし、分からないよ?」
「うん、穴はあるけど……藤代、辿り着いたかも知れないぞ?」
鉛筆を置くと
「スマホが発見された事を知りうる人物、一人思い当たります」