「僕達はどうしますか?」
「君達はココに居てくれ!」
梶山に言われる
「いくぞ!!」
特捜数人が勢い良く出て行く
昼、両国橋、緑地帯から橋の下を見るとブルーシートハウス
そこにぼーっと隅田川を眺める白髪混じりの男が一人
死んだ様な目をして座っている
「……福山誠司だな?」
「…はい、やっと偽名に気付いてくれたか」
シャツにネクタイ、スラックスに革靴、まるで分かっていた様だ
「んーーっ、ずっとこの格好で待ってたよ、ハハハ、待ちくたびれた」
伸びをすると目に光が差す
特捜の数人が確保する
……そして
「ありましたー!」
住処の中に警察の制服、シートの下から白いママチャリ、
最初からココに居たのだ
………………………………
取り調べ室
「今更逃げないよ、それより尾上君と藤代君と話したい」
「我々には話したく無いと?」
腹が立つ時田
「アンタら徹夜続きだろう、キチンと質問出来るかも怪しいぞw」
笑う初老、頭は白髪混じりのボサボサだが、背中はピンとしていて何かの名人みたいだ
話し合いの結果、特例として時田、尾上、藤代が取り調べ室へ入る
「うぐっ!!」
カラフルな地面!線香の臭い!鼻を抑える
それを見ると
「ほう」
尾上のメガネが光る
「ハハ、一人余計だが一般人だけって訳にもいかないか」
時田を見る福山の父、薄汚れているが、徹夜続きの刑事達と大して変わりない
黙っている時田
「さぁさぁ、尾上君はそこへどうぞ、本当は藤代君の椅子も用意して欲しいがね」
福山の父親は向かいの椅子を勧める
時田が小さく頷くと尾上は座る
「緊張しますね…では…貴方は……福山のお父さんなんですね?」
「はい、福山誠司と申します」
白髪だらけの頭をゆっくり下げる
「なぜ僕達を?」
「智宏から聞いていた、探偵みたいに頭が良さそうだとね」
頭を掻くと
「ついにはコートや自転車に気付き、とうとう居場所まで…直接話してみたかった」
「…ではお聞きします、田辺を殺したのは福山が脅迫を受けたからですよね?」
真正面から見据える
「はい、せっかく更正して警察にまでなった智宏に泣きつかれました、呼び出して話してみたがどうにもならず、掴み合いになりまして、落としてしまいました」
丁寧に喋る、とてもホームレスには見えない
「落とした?隅田川にですか?」
尾上と俺の顔を見比べ
「はっはっは!そうか!まだどうして死んだか分かって無いのか!」
ひとしきり……笑うと
「うん…そうだよな、事故現場が移動したからなぁ」
「どういう意味ですか?」
「屋形船に落ちたんだよ」
!!!
その日の夕方、不安定なエンジン音の屋形船が住処の前に来たそうだ、
本来係留してはダメだろうに、手摺にロープを縛って行った
揉み合いになり田辺が落ちた時、屋形船の舳先に落ち、後頭部を打った
「それでどうしました?」
「その後は」
死体を運ぶつもりで、持っていた一部壊れたトランクに田辺を入れたが、屋形船から上げるには高すぎるし体力も無い
そこで持っていた透明な梱包用テープで
「屋形船の横の縁にトランクを張り付けた、ギリギリ落ちない程度にね」
どうせ東京湾方面に行く、その途中で振動で落ちるだろう、この場所から川に落として流すよりは遠くに行くだろう、そう思っていた
「なぜ上流へ?」
「朝早くに別の屋形船が来てな、トランクに気づかないまま上流へ引っ張って行った」
その途中で落ちたのか
「では偶然この警察署の管轄まで」
「何の因果かねぇ、偶然ってのはあるもんだw」
「すぐに確認しろ!」
時田がマイクに言う
「……正直に全部話していますか?」
「おや、何かされると思ったかい?」
「僕は推理小説を良く読むんですが」
「私もだよ、だから君と話してみたかった、暇だから大量に本を読んだよ、だけど世の中変わったね、昔はゴミ捨て場に必ず本があったのに」
「電子書籍になりつつあります、僕も残念でなりません」
「まったくだw」
笑う様子を見る尾上
「なぁ、アンタまだ何か隠してないか?」
俺は立ったまま
「藤代君、君は直感型だね、自転車の違和感に気付けるとは、しかも田辺君がどうやって智宏を」
「そんなのはどうでも良い!素直にペラペラ喋るのはまだ何かあるからだろ?!」
怒鳴る
「藤代……」
尾上は指を2本立てる
「この場合は大体2パターン、藤代の言う通りまだ何か逆転の手がある場合と」
父親の顔を見る
「もう死ぬのが分かっている場合」
「え?!」
「ほう、分かるかい?」
「白目が黄色いです、確か何かで読みました、肝臓だったかな?」
脇腹を擦ると
「前にホームレス仲間もこうなって死んだ、同じになりつつある」
「だから藤代、何も隠す気が無いんだと思う」
そうか、死ぬ覚悟が出来てるのか
「だけどよ、息子を犯罪者にして良かったのかよ?」
「おやおや?アイツが何の罪に問われるんだい?」
ニヤリ
…………あれ?…あれ?福山の罪って何だ?!
「黒岩の居場所聞いただろ?!」
「あぁ他愛ない話しだよ?同級生が近所に住んでた、そんな普通の会話だ、どこの家庭でもするだろう?」
ニコニコする
「このぉ…!」
俺は拳を握る
正直にあった事を言ってるだけ、この爺さんはそれだけだ
福山は指示もしていない
この爺さん息子守るためだけに行動してるだけだ!!
だが許せん!
「言いたい事は色々ありますが…言い方を変えます、黒岩を殺した理由を聞かせて貰いたい」
メガネが光る
「直球だねぇ………………」
「どうしました?」
上を向くと
「そうだね……見破られたからかな」
「何を?」
「偽警官だと見破った」
「どうやって?」
………………………………
「ピンポーン」
「はい」
「すみません、警察ですが」
「ガチャッ」
「何でしょうか?」
チェーン越しに話す
「不審者がこの辺りに居るらしくてですね、特徴はコレなんですが」
紙を見せると
「あぁ、僕目が悪くて、ちょっと待って下さい」
一旦扉を閉めチェーンを外す、開けると
「どんな人です?」
紙を受け取る瞬間、黒岩の手が手袋にに触れた
「………………軍手?…この暑さで?」
じっと顔を見る
………………………………
「それでそのまま首を絞めた」
「お前!罪悪感とか無いのかよ!!」
「ふーーっ………………」
俯き溜息の尾上、体を起こすと
「翌日居ましたよね、現場」
「あぁ、君達と挨拶したな」
「あ?!あの時の?!」
keep outのテープの所に居た警官か!
「テメェよくも平然としてられんな!」
胸ぐらをつかむ
「藤代君!止めなさい!!」
時田は止める
「ははは、そうそう、取り調べ室で一般人同士の傷害事件なんて洒落にならないぞ?」
この野郎!元警察だから全部分かってる!
尾上!負けんなよ!
「……つまりこの一連の事件は、貴方が息子を守るためだけに行動した結果、ですか」
「そう、智宏は少年法で守られた、守られてしまった、刑務所に入った訳でもない」
襟を直すと
「だから世間から反省したとは見られない」
「……もしかして…だからあえて警察目指したとかですか?」
「そうらしいよ、中途半端に守られたために、アイツは自分を不安定に感じたんだな、だから警察になる事で反省、更正したと思いたかったし、世間に胸を張れるようになったんだ」
じっと尾上の目を見る
警察学校や刑事になるための試験など、大変な思いをして来たかも知れない
「だからってよ!2人を殺す必要ないだろ?!」
「おや?私は黒岩君は殺したが、田辺君は転落、事故死だよ?」
!!!
「田辺に関しては……死体遺棄…暴行…だけか……」
「尾上!」
「いや、隠してないからな、聞いた限りでは殺人じゃない」
「マジかよ!」
「……ちょっと違う話しもしましょうか、隠してますよね?」
指を一本立てる
「おや、何かな?」
「藤代が自転車に気がついた事を、貴方は知るハズがない、アイツは尋問受けてたから」
メガネを上げる
「ホームレスがパタリと出なくなり……藤代が気付いた途端に、偽警官も出なくなりました」
「……他にも誰か居るのかよ?!」
スパイみてぇなヤツが!
「多分違う……仕掛けましたか?盗聴器」
「なっ?!」
「尾上君!本当かい?!」
慌てる時田
「気が付いたかいw」
笑う
「偽警官やってた理由は電波の入る範囲をうろついていたんですよね?」
「それだけじゃないさ、昔を思い出していたんだよ、警察の制服を着て……懐かしかった……」
満足そうに笑顔になると上を見る、しばらくそうしてから時田を見ると
「受令機の充電台の裏だ、無くなったモノに気を取られると、増えたモノに気が付かないのが警察の欠点だ」
また時田は連絡する
「盗聴器はどうやって手に入れました?」
「ホームレスには元犯罪者が必ず居る、廃棄弁当とかで取り引き出来るんだ」
「よく本部に入れましたね、トイレかどこかで?」
「あぁ、徹夜が続くとな、トイレで座ったまま寝る奴が出る、スーツの上着はシワにならないように、ついドアの上に掛けるんだよ、ジャージでも着れば良いのにな」
上着を着る動きをすると
「勿論赤バッジも付けっぱなし、後は紙1枚持ってれば本庁から来た連絡係に見える」
目頭を摘む時田、今後の体制と風紀の改善点が見えて来た
「盗聴器の電池ももう切れるだろう」
「田辺のスマホを回収に来たのは」
「智宏に呼び出させたからな、履歴が残ってる」
「捨てたんですか?」
「今度はごみ収集車に投げ込んだ、どこに行ったか分からんよ」
「…あれ?貴方は携帯持ってないんですか?」
「ホームレスがどうやって持つ?」
「……えーと?それじゃあ福山との連絡はどうやって?」
「だから紙1枚で済むんだよ、お互いの決めた場所、例えば植え込みとかで十分だよ」
「……成る程、ローテクは現代では」
「逆に分かりにくい、世の中便利過ぎる」
「福山…智宏とは昔からどうやって連絡を?」
そうだ!それ!
「連絡してないよ、私はね、荒川の河川敷に住んでたんだよ、去年偶然智宏が近くの交番で制服警官やっててな、仲間が死んだ時に来たんだよ、見違えるほど痩せてたが菱木と呼ばれてて分かった、立派になってくれたもんだ」
真っ直ぐ尾上を見つめる
「そこから偶然……」
パンと手を叩く父親
「さぁ全部言ったぞ?もう終わりだ」
ニヤニヤする
「…一つ確認します、田辺と話す時にあのコートをわざわざ着ましたよね?」
「………………それが?」
「カメラに映るのを警戒した」
「そうだねw」
「その後隠蔽に動いた」
「……上手かったろ?」
ニヤニヤ
「…初めから殺す気だった!事故じゃない!殺意があったんだ!」
「ハハ!参った!お手上げだ!」
満面の笑みで笑うと両手を上げる
「全部バレたよ!名探偵!」
…………………………………………
翌朝9時
「二人が死んだ事どうやって書くよ?」
「LINEに載せる必要は無い、俺達は何も知らないんだ」
「やっぱり表には出ないのな」
スマホでネットニュースを見る
「………………」
尾上は考えたまま動かない
「どうした?」
「福山の父親、何かおかしい、気に入らない」
「?、お前勝ってただろうよ?」
「勝ち負けで言うなら俺達は勝っていた…けど…途中から誘導されてた様な…なんだか気分が悪い」
カウンターに頬杖
「考え過ぎじゃねぇ?」
「田辺の事故死を殺人だと俺は言い当てた、そこで満足して…思考が止まった…いや、止められた?ワザと二段階に?」
あのニヤニヤの意味は何だ?
「……どういう事だ?」
「田辺を落とした時は逃げる気だったハズだ、だから隠蔽に走った…けど途中で……黒岩の時には心変わりした?」
「?、考え過ぎだろ?子供守れたら何でも良かったんじゃね?」
確かに父親と言う存在が無ければ、田辺と黒岩は福山に……それをさせないように動いた、どうせ自分は死ぬから
そう考えるのが自然…でも
「違う…何かが違う…」
「こんにちわ」
入って来る米田、キチンと寝たのかスッキリしている
「いらっしゃい……」
「おや、元気無いねぇ名探偵w」
パイプ椅子に座る
「経過を伝えたくてね」
屋形船に関して裏が取れた、上流にある整備場に陸揚げされていた、廃船にするかどうかの舟で、船体の横に透明の梱包テープが張り付いてた
「拭き取った血痕も見付かったよ」
それと父親が逮捕された事を菱木、いや福山に言ったら、自分のスマホは
「俺達から逃げたルートに隠されてた、路地裏の電気メーターの裏にw履歴に田辺君の番号があったよ」
「あいつその為にあそこ走ったのか…それより米田さん、尾上がおかしいって言ってんだ」
「福山誠司の証言が?どこか変かい?隣で見てたけど田辺さんの殺人暴いたじゃないかw」
「尾上が言うには誘導されてたって」
「誘導?」
「ふう……」
メガネを取り顔を擦り掛け直す
「所で、福山智宏の処遇はどうなりました?」
「そう、それを話しに来たんだよ、まぁ上から圧力凄くてね」
警察同士の脅迫と殺人、田辺さんに実名教えた情報漏洩、偽警官の存在
「表に出たら幹部の首が飛ぶ事件に関与したからね、当然依願退職と言う名の懲戒免職、再就職も難しいだろうね」
「………………!、まさか?!」
「何だ?」
「父親が……子に……復讐した?」
顰めっ面
「え?どういう事だい?」
不思議そうな米田
「父親も依願退職しましたよね?!何故ですか?!」
「……多分息子が事件に関わったから、だろうね」
首を傾げる米田
「尾上、考え過ぎだって」
「藤代、今回と同じように表向きは依願退職と考えてみろ」
……実際は…父親も
「退職金とか無しってか?」
「これから福山はどうなると思う?」
「就職先探して…あ?」
父親は結果ホームレスになった……
「まさか自分と同じ目に合わせたかったのか?!」
「そうとも考えられる!」
「おいおい尾上君、息子が警察になって誇らしかったって言ってたよ?子が親を継ぐ、嬉しいじゃないか」
……俺が白菜農家継いだらオヤジは嬉しいのか?
「……米田さん、その時どんな顔してたか覚えてます?」
「勿論笑顔だろ?」
「違うんです、完全な無表情でしたよ、感情が無かった」
「……え?」
目が開く
「満足そうな笑顔だったのは偽警官で自転車で走っていた話をした時でした、昔を思い出してたと、それと田辺への殺意を言い当てた時です」
「……………………尾上君、今君の見立てはどうなってる?」
身を乗り出す
「……父親は警察官である自分に誇りを持っていた、けど子供のせいで辞めさせられた、離婚して就職も上手く行かず…結果ホームレスに」
茶を飲む
「そんな時息子に出会った、自分が辞めさせられた警察の制服を誇らしく着て、最初は嬉しかったかも知れない、だから田辺を殺すまでは庇う気持ちがあったし隠蔽しようとした、けど復讐に変わった」
「それは……でも田辺さんは一生飼い殺しにするって言ってたらしいよ?」
「それなら一生警察官って事です、自分が誇りを持っていたのに、辞めさせられた原因を作ったヤツが警察官続けられる」
「オヤジが守っていたのは最初だけ?」
俺にはちょっと分からない
「刑務所に行かないよう犯罪はさせず、でも関わってる形だ」
上を見ると
「出来るだけ酷い印象で警察を辞めさせ……後の人生に深い後悔を残す…!」
ハッとした表情
「どうした尾上?」
「そうか…だから田辺は事故死の疑いが残ると困る…殺人だと指摘して欲しくなった、あのニヤニヤはそれか」
尾上は顔を覆うと
「動機が変わったんだ、田辺の時は守るつもりだったけど、黒岩は智宏への復讐の為だけに殺したんだ!!」
「そうなのかよ!」
「……そうか、俺はあの時『殺人だと言わされた』んだ、だから気持ち悪いんだ」
「でも結果認めさせたじゃないか、凄いよ尾上君」
笑う米田
「これで『殺人犯の息子』なった、だから田辺への殺意を指摘したら逆に喜んだんだ、これなら事故死させた犯人ではなく、二人殺した最悪の殺人者の息子と印象付ける事になる」
「尾上君考え過ぎw推理小説の読み過ぎだよw」
「福山…智宏は父親を守る為に黙秘してたはず、真実を知ったら精神的ダメージは計り知れない、多分それも含めた復讐になるはず」
「んー、そこまで言うなら…確かめるかい?」
「出来るんですか?!」
「まだ署の留置場にいる、今日本庁に送られる、行ってみるよ」
………………………………
「おや?何か用かい?」
体を伸ばしリラックスしている福山誠司
「……何か…満足そうですね?」
呆れながら見る米田
「ハハ、こんな快適な所でゆっくり寝たのは久しぶりでね、騒音も風も臭いも無い、適温だ」
鉄格子を挟んで話す福山誠司と米田達
「尾上君がね?こんな事言ってるんだ」
「おぉ?尾上君が?面白そうだ!」
一通り話を聞くと
「じゃあ二人に伝えてくれるかい?」
ニコニコする福山誠司
……………………………………
米田から着信
「尾上君の見立て、聞かせてみたよ」
「どうでした?」
「そのまま伝えるよ?」
尾上君、藤代君、今後智宏に会う事があったら伝えてくれ、コインランドリーが快適だ、と
「以上だよ、どうやら大当たりだ…」
「……分かりました、ありがとうございます」
スマホを切る
「ふ〜っ……親から子への復讐かぁ」
メガネを拭く
「親だって人なんだよな、甘えるなって事だ」
「なぁ藤代、俺今から就職出来ると思う?」
「教えてやるよ、先ずはその着物をやめろ」
「スーツ着て就活かぁ…」
襟を見る
「いや、チャリ選びとサイクリングスーツだなw」
「そうか……じゃあお前のチャリをくれ」
指差す
「何言ってんだお前?」
「藤代は警察になるべきだ」
「?、何でよ?」
ニヤリと笑うと
「気付いてないのか?お前天才だぞ?」
以上、思い付きでした