~~side桜~~
朝だった
桜はぼんやりと天井を見ていた
昨夜はよく眠れなかった
理由は分からない
ただ胸の奥が落ち着かなかった
何か大事なことを忘れているような
そんな気持ちだった
布団から出ようとして
ふと手が目に入る
「……え?」
右手の甲
そこに見慣れない紋様が浮かんでいた。
赤い紋様
扇子のような紋様が三つ
まるで焼印みたいに皮膚へ刻まれている
桜は思わず息を呑んだ
知らない
知らないはずなのに
なぜか理解できた
令呪
聖杯戦争
サーヴァント
魔術師なら誰でも知っている知識
けれど
「どうして……」
おじい様はいない
もういない
兄さんが殺した
あの悪夢は終わった
終わったはずだった
なのになぜ今になって
◇
居間へ降りる
慎二はいつものように朝食を食べていた
新聞を読みながら。
本当にいつも通り
だから余計に怖かった
「兄さん」
慎二が顔を上げる
「なんだ」
桜は震える手を差し出した
「これ……」
慎二の視線が止まる
数秒
何も言わない
そして
小さく息を吐いた
「来たか」
まるで予想していたみたいに
桜は唇を噛む
「兄さんは驚かないんですか?」
「驚いてる」
全然そう見えなかった
それが少しだけ悲しい
昔の兄ならもっと騒いだ
文句を言った
怒鳴った
でも今は違う
何もかも静かだ
「私……」
声が震えている
「戦わなきゃいけないんですか」
慎二は答えない
しばらく黙っていた
窓の外を見る
春の空だった
穏やかで
平和で
戦争なんて始まりそうにない
「嫌か?」
桜は即座に頷いた
「嫌です」
涙が出そうになる
「やっと終わったのに」
「やっと普通になれたのに」
声が掠れる
「もう嫌なんです……」
誰かに命令されるのも
戦うのも
傷付くのも
全部
全部嫌だった
慎二は黙って聞いていた
最後まで
途中で口を挟まず
ただ聞いていた
やがて
静かに言う
「なら召喚しろ」
桜は目を見開く
「え……?」
「戦いたくないなら尚更だ」
慎二の声は静かだった。
「お前はもうマスターだ」
「参加したくないは通らない」
残酷な現実だった。
「でも」
「一人なら死ぬ」
その言葉に
桜は何も言えなくなった
慎二は知っている
聖杯戦争を
殺し合いを
魔術師を
だから嘘は言わない
「サーヴァントを呼べ」
「その後のことは俺も考える」
桜は兄を見る
相変わらず無表情だった
だけど
少しだけ
本当に少しだけ
昔の兄が見えた気がした
自分を守ろうとしてくれる兄
「……兄さん」
「なんだ」
「怖いです」
慎二は一瞬だけ黙る
それから
小さく答えた
「俺もだ」
その一言で
桜の肩から少しだけ力が抜けた
全部が大丈夫になったわけじゃない
怖いものは怖い
でも一人じゃない
だから桜はゆっくり頷いた
「召喚します」
~~side慎二~~
やはり来た
桜の左手に令呪が宿った
確証は持てなかった
だがそうなるんじゃないかと頭のどこかでは思っていた
俺というイレギュラーな憑依者が居ようとも
ネームドのクソじじいを殺しこの世から消しても
そんな原作との違いというバグがバタフライエフェクトを多少起こしたとしても
強固にこの世界に結び付いた
あ~FU●K
せっかくあのジジイを殺して桜を自由にして助けるという夢を叶えたと言うのに
今度は聖杯戦争という名の殺し合いに桜が巻き込まれるのかよ
絶対桜が死ぬなんてことはさせない
俺が生まれてきた時から持っている夢と執念に掛けて
絶対この戦争を勝ち抜いて桜を守る
桜が召喚するサーヴァント
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メデューサ
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ヒッポリュテ
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アストルフォ
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牛若丸
-
ケツァルコアトル