「なぁ、今週のギアフォース見た?」
「見たに決まってんだろ。今めちゃくちゃ熱い展開じゃん」
窓の外では、真夏のセミ達がこれでもかというほど鳴き続けていた。
じっとしているだけで汗が滲むような暑さ。
夏休み真っ只中。
ここは俺――キョウヤの部屋だ。
休みに入ってからというもの、隣の家に住んでいるユウヤとは毎日のように一緒に遊んでいた。朝に集まって、気付けば夕方。そんな日々をずっと繰り返している。
テーブルの上には、少し前に学校で流行っていたカードゲームのカードが散らばっていた。
負けた時に悔しくて投げたカードが、そのまま床に落ちていたりもする。
同じテーブルには、母さんが用意してくれた冷えた麦茶と、食べやすく切られたスイカ。
床には、さらにその前に流行っていたベーコマが転がっている。
流行りはいつだって移り変わる。
俺達はその度に夢中になる遊びを変えてきた。
だけど今、俺達が一番夢中になっているもの。
それが――ギアフォースだった。
腕の中に収まるサイズの小型ロボット。
自分だけのパーツ構成で戦わせる、大人気ホビーシリーズ。
そして、その人気に火を付けたのがアニメ『遊戯機装ギアフォース』だ。
元々は毎週日曜の朝に放送されていた子供向けアニメだったらしい。
だけど現在は放送時間が変わり、毎週月曜日の夕方五時半から放送されている。
主人公・歯車廻《はぐるまわる》がギアフォースを通して様々な事件へ立ち向かい、仲間やライバル達と激闘を繰り広げる物語。
俺達は毎週欠かさず見ていた。
今、物語は最終章へ突入している。
敵組織の秘密。
ギアデウスの正体。
歴史改変の真実。
今まで散りばめられていた謎が、毎週少しずつ明かされていく。
正直、今が一番面白い。
……でも。
「なんかさ……終わりそうだよな」
ユウヤがぽつりと呟いた。
その声は、どこか寂しそうだった。
「まぁ、ここまで来たらな。謎もどんどん回収されてるし」
「やだなぁ……終わってほしくない」
ユウヤは手の中のギアフォースを見つめたまま、小さく呟く。
最近、こいつは少し変だった。
ギアフォースの話をしていても、前みたいにはしゃがない。
笑ってはいるけど、どこか元気がない。
「最近いまいち元気ないのって、それのせい?」
「……まぁな」
ユウヤは苦笑しながら、麦茶の入ったコップへ口を付けた。
「キョウヤは平気なのかよ?」
「そりゃ悲しいけどさ」
俺は手の中のギアフォースを軽く回しながら言う。
「ギアフォースが終わったら、また別のアニメ始まるだろ? そしたらまた新しい面白いおもちゃ出るだろうし、それでまた一緒に遊べばいいじゃん」
「……」
「マジカルカードゲームの時もそうだったろ?」
ユウヤは少し黙った後、呆れたように笑った。
「お前は冷たいやつだな」
「そうか?」
「飽きっぽいっていうかさ」
そう言いながらも、ユウヤはギアフォースを握る手を少しだけ強くした。
まるで、失いたくない何かにしがみつくみたいに。