あの夏のギアフォース   作:鳳菊之助

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大学生編②おもちゃ箱

リメイク版の『遊戯機装ギアフォース』は、驚くほど完成度が高かった。

 

 昔見ていた頃よりも、CGの粗さはなくなっている。

 

 作画も格段に綺麗だ。

 

 バトルシーンの迫力なんて、当時とは比べ物にならない。

 

 それなのに。

 

 不思議なくらい、あの頃の空気感はそのままだった。

 

 主要キャラクターの声優も変わっていない。

 

 だから俺みたいに、当時リアルタイムで見ていた人間も自然に入り込める。

 

 それでいて、新しく見る世代にも分かりやすいよう設定説明や演出が丁寧に補強されていた。

 

「……面白いな」

 

 気付けば、子供の頃みたいに画面へ夢中になっていた。

 

 

「そういえば……」

 

 ふと、頭の奥に沈んでいた記憶が浮かぶ。

 

「昔のギアフォース、まだおもちゃ箱に残ってたっけ」

 

 

 俺は立ち上がり、押し入れを開けた。

 

 奥の方に追いやられていた古い箱を引っ張り出す。

 

 箱の表面にはうっすらと埃が積もっていた。

 

 時間そのものが積もっているみたいだった。

 

 

 箱を開く。

 

 中には、子供の頃の思い出がそのまま詰め込まれていた。

 

 カードゲーム。

 

 ベーゴマ。

 

 ヨーヨー。

 

 ビー玉。

 

 携帯ゲーム機。

 

 集めていたシール。

 

 そして――ギアフォース。

 

 

「懐かしいな……」

 

 手に取ったのは、黄金の機体。

 

 歯車廻《はぐるまわる》の専用機、()()()()()()

 

 かなり遊び込んでいたせいで、シールはところどころ剥がれている。

 

 でも、その傷すら愛おしかった。

 

 俺はサンライザーが大好きだった。

 

 アニメの真似をして、何度も必殺技を叫んだっけ。

 

 

「こっちは……()()()()()()()()()()

 

 重厚な甲冑を纏った竜騎士型ギアフォース。

 

 歯車廻《はぐるまわる》の永遠のライバル機。

 

 サンライザーとは真逆の、重くて無骨な格好良さがある。

 

 こいつも本当に好きだった。

 

 

 やっぱりギアフォースはいい。

 

 大人になった今でも、こういうものを見ると胸が高鳴る。

 

 

 思い出に浸りながら箱の中を漁っていた、その時だった。

 

 ふと、俺の手が止まる。

 

 

「……え?」

 

 

 おもちゃ箱の奥。

 

 他の玩具に埋もれるように、一体のギアフォースとバングルが無造作に入っていた。

 

 

「……これって、ユウヤのギアフォース?」

 

 

 右腕には蛇を模した日本刀。

 

 左腕にはガトリング砲。

 

 左右で噛み合っていない脚部。

 

 ライオン型の頭部。

 

 好きなパーツを好き勝手に組み合わせた、滅茶苦茶な機体。

 

 世界に一つだけのキメラギアフォース。

 

 

 見間違えるはずがない。

 

 ()()()()()()()()()

 

「いや……待てよ」

 

 胸の鼓動が急に速くなる。

 

「なんで、これが……」

 

 

 俺の玩具と混ざった?

 

 いや、そんなはずはない。

 

 だって。

 

 

 ユウヤは存在しなかったはずだ。

 

 

 誰も覚えていなかった。

 

 先生も。

 

 友達も。

 

 近所の人も。

 

 誰一人として。

 

 

「そうだ……!」

 

 俺は慌ててギアフォースを持ち上げる。

 

「もし本当にユウヤの物なら……!」

 

 

 視線を脚部へ向ける。

 

 そこには、油性ペンで乱暴に書かれた文字があった。

 

 

『YUYA』

 

 

「……ッ!」

 

 

 間違いない。

 

 これは()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

 そして、その隣に置かれていたバングル。

 

 ユウヤのギアシューター。

 

 中央のボタンを押すことでブレードが展開し、ギアフォースの射出器へ変形する装置だ。

 

 ギアフォースを扱うコマンダーにとって必須とも言えるアイテム。

 

 

「なんで……こんなものが俺のおもちゃ箱に……」

 

 

 俺は恐る恐るバングルを手に取った。

 

 子供向けに作られたサイズらしく、今の腕には少し小さい。

 

 それでもベルトを調整すると、なんとか装着することができた。

 

 

 その瞬間だった。

 

 

「な……なんだ!?」

 

 

 突如、ギアフォースとギアシューターが淡く発光し始める。

 

 最初は小さな光だった。

 

 だが次第に強さを増していく。

 

 

 光。

 

 光。

 

 光。

 

 

 白い輝きが部屋全体へ広がっていく。

 

 押し入れも。

 

 壁も。

 

 天井も。

 

 全部が白く塗り潰されていく。

 

 

「うわっ……!?」

 

 

 視界すら光に飲み込まれる。

 

 そして。

 

 俺の身体もまた、眩い白の中へ包まれていった。

 

 

 次の瞬間。

 

 俺の意識は、そこで途切れた。

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