IS インフィニット・ストラトス ~胡蝶の夢~ 作:おおがみしょーい
初めての方は、初めまして。
何百番煎じなのかわかりませんがISのオリ主モノです。
お楽しみいただければ幸いです。
「ん……」
俺は自分の声であろう声を聞きながら薄く目を開ける。
随分と深く眠っていたようで、目を開いても周りの景色がぼんやりと霧がかっていてよく認識できない。身体を起こそうと思ったが、節々が油の切れたブリキのようにガチガチに固まっていて動けない。身体を動かすどころか、首を動かすこともすぐには出来そうになかった。
「つっ……」
そんな凝り固まった身体を動かすのは一旦諦め、まずまぶたを動かして、何回か瞬きを繰り返す。
だんだんと周りの景色の色が鮮明になっていく。
色、形、その様なものが見えてきた。
部屋全体は薄暗く、天井にはパイプやコードがむき出しになっている機械がひしめいていた。おそらく床も同じような状態なのだろう。時折、青白い光が点滅している、たぶんディスプレイからでる光なのだろう。部屋全体が薄暗いのも、このディスプレイから出てくる光のみが部屋を照らしているからではないだろうか。
そんな中で俺は、カプセルのようなものに寝かされているようだ。
ラボまたは研究所。そんな単語が俺の頭の中に浮かぶ。しかも企業や政府といった公的(企業や政府が公的なものだけを持っているわけではないのであろうが)な研究所などではなく、地下組織やテロリスト、そんな非合法集団が独自に研究する研究所、そんな映画の中のような情景を思い出す。
そんなふうに周りを観察している俺の視界に、
――ひょこっ!
という擬音を響かせながら、周りの景色にあまりに似合わないものが飛び込んできた。
……うさぎの……耳?
この無機質な部屋からあまりにもかけ離れたモノの存在に、自らの状況も忘れて俺は大きく目を見開いて目の前のうさぎの耳を凝視した。
うさぎの耳は何回か俺の目の間でピクピクと何かを確認するように震えると、出てきた時と同じく、ひゅん! と視界から消える。
そして次の瞬間、
「やあ、やあ、気分はどうだい?」
今度は俺の視界いっぱいに、うさぎの耳をつけた女性の顔が飛び込んできた。
「お~い、聞こえてる? ここは何処? 君は誰? そして、そして、私はだ~れ? わっかるっかなぁ~」
ウサミミの女性は上半身を乗り出すように俺に顔を近づける。そのおかげで彼女の豊満な胸がカプセルをこえてゆさり、と揺れるのが見えた。
「……篠ノ之、束……さん?」
「ピンポンピンポ~ン! だいせいか~い。古今東西過去未来、あらゆる天才の中で現在トップをひた走る、篠ノ之束さんで~す!」
篠ノ之束――現在世界を席巻しているIS――インフィニット・ストラトスを単独で開発した文字通りの天才科学者。世界のありようを変えた人間であるといっても過言ではないだろうし、事実彼女の創りだしたISによって世界の価値観は大きく変わった。
ぼんやりとした頭に具体的な単語が入ったことにより、様々なことが連想ゲーム的に俺の頭の中に湧き上がってくる。
ここは篠ノ之束の移動ラボ。そして俺は束さんと契約して此処にいる。そして俺の名前は……
そこまで思い出したところで、
「お~~い。起きれるか~い」
束さんから再び声がかかった。
「はい、大丈夫です、束さん。少しづつですが頭が晴れてきました……信頼はしていたのですけど、臨床実験は成功という事ですかね?」
俺は自分の境遇を思い出しながら、ゆっくりと上半身を持ち上げる。ゆっくりゆっくり、一つ一つの動作を確認するように、脳から身体までの命令を一々反芻しながら身体を起こしていく。
「ふっふ~ん、この束さんにかかれば失敗なんて、兆が一……いやいや、京が一にもありえないのさ」
そう言ってカプセルから飛び降りた束さんは、どうだ! といわんばかりに胸を張る。
豊かすぎる胸が、ふたたびその存在を誇示するかのようにゆさりと揺れた。
俺はそんな束さんを横目で見ながら、時間をかけてようやく立ち上がることに成功する。そしてそのまま、自分の寝ていたカプセルから出る。
裸足の足から、床のひんやりとした鉄の感触が伝わってきた。
「何かほしいものはある?」
束さんの質問に、
「……水を」
俺は強烈なのどの渇きを覚えて、そう答えた。
「OKOK、クーちゃんお水とって~」
「はい」
束さんは傍らにいる小柄な少女に声をかけ、クーちゃんと呼ばれた少女はすたすたと向こう側の机の上にあるミネラルウォーターのペットボトルを抱えて束さんのところへ戻ってくる。
「や~、クーちゃん、いいこいいこ!!」
「……」
束さんはクーちゃんの持ってきたペットボトルを受け取ると、少女の頭を優しくなでる。少女も無表情な顔に若干の嬉しさにじませてそれを受け入れている。はたから見たら仲の良い年の離れた姉妹、そんな感じだ。
「ほ~い、しっかりうけとって~」
ひとしきりクーちゃんの頭をなでた束さんは、今度は俺の方を見て手に持っていたペットボトルを放物線上に投げてきた。
「うおっと!」
しかし身体をまだうまく制御できていない俺は、ペットボトルを取り落してしまう。
「あらら~、クーちゃん拾ってあげて~」
「はい」
そんな束さんとクーちゃんの声に、
「いや、大丈夫です。自分で拾います」
俺は断りを入れて落としたペットボトルを見る。
俺は大きく息を吸うと、先ほど立ち上がった時と同じように、一つ一つの動作を確認しながらペットボトルを拾い上げ、口を開ける。だいぶ時間がかかったが、それでも力を込めてペットボトルの口を開けられたのは自分自身、身体の感覚が戻ってきたことを実感できた。
俺は蓋を取り払うと、中の水を口に含んだ。
ラボに放置してあったのだろう、水は室温と同じくらいにぬるくなっている。
しかしそれでも目覚めたばかりの身体がその水を貪欲に吸い込んでいく。まさしく五臓六腑にしみわたるというやつだ。
「――はぁっ」
ペットボトルの水をのみほすと、ようやく一息つけた。
そんな俺を見ていた束さんが、
「ふ~ん、起きたばっかでそれだけ動けるってのは、流石だね~。やっぱり、血、かなぁ?」
そんな事を言いながらうんうんと一人で頷いている。
「もう頭はだいぶ動いてるみたいだから、一応、契約内容の確認するよ」
束さんの言葉に、俺は無言でうなずく。
「君はこれからISを動かした“二人目”としてIS学園に赴く。んでんで、お目当ての人物との交流を図る。そして、その合間に君はこの束さんに白式のデータと逐一送ってくる、OK?」
かなりざっくりとした内容説明だが、自分の記憶と違いがないことを確認しながら俺は頷く。
「そんでもって私は、君から送られてくるデータを元に、この――」
そう言って束さんは両手を広げて後ろを振り向くと、
「紅椿を完成させるのだ~~~~!!」
自らの後ろに真紅に輝くISを見上げるとにっこりと微笑む。
「特に問題ありません。それでIS学園に行くにはどういう経緯で乗り込みますか?」
「いっくんの影響で今、全世界で男子によるISの起動可能検査が定期的に行われているから、すぐ近くの検査のとこに私がデータをねじ込んどくよ。そうすりゃ、1日で政府の人らがすっ飛んでくるから、あとはなすがまま~」
「なんか、いろいろ検査とかされるんですかね?」
人体実験のようなことを想像して、俺は顔をしかめる。
「まぁ、そこまでひどくはないとおもうよ~。てか、こんだけ私んとこでやっといて、今更って感じじゃないかな~」
そんな俺の反応に束さんはケラケラと笑いながら答える。
――まぁ、そりゃそうか。
「じゃあ、IS入学は1か月後くらいですか?」
「ん~、そんなにかからないんじゃないかなぁ。半月見とけばいいと思うよ」
「わかりました」
大体のことを確認した後、俺が出口に向かおうとすると、
「おおっと! そうだったそうだった」
束さんがいきなり呼び止めてきた。
「お目覚め記念、っていうわけじゃないけどさ。君に専用のIS創ってあげるよ。まぁ、コアに気に入られればだけどね~」
そう言って束さんはちょいちょいと手を振って俺を招き寄せる。
「うおっ……これは……」
束さんのもとに着いてそこにあるものを見た俺は、思わず声をあげてしまった。
そこには大量のISのコアと思われる球体が所狭しと並べられていのだ。
これだけのコアとISがあれば、世界の半分くらいは1週間もあれば制圧できるのではないだろうか……それほどまでの存在がまるで買いすぎたオモチャの様に無造作に積み上げられていた。
「これまだコアの卵みたいなもんだから、これから創らきゃいけないんだけど。でも感覚みたいなもので、ビビビ~~ッ!! って来るのがあればそれ相性がいいってことだからそれを元に組み上げられるよ~」
「はぁ……」
俺は束さんの言葉を聞きながらコアに近づく。正直、束さんの言っていることは半分以上理解できてはいない。擬音とか感覚的な言葉が多いという以前に、ISのコアを創りだせるのは全世界でただ一人、篠ノ之束だけなのだ。その辺の経緯を説明されても理解できる人間など、恐らくこの世界にはいないのではないだろうか。
そんなことを考えながら、コアの山に何気なく手をかざすと。
――ぶぉん。
「うおっ!」
「おっ!!」
その内の一つが紫色に輝きながら小さく反応した。
「お~~! カップル誕生!! おめでと~~~!! いや~~、この娘がきたか~。この娘ね、すっごく内気でシャイだったから嫁ぎ先ないかなぁとか思ってたんだけど……いや、君みたいのが好みだったんだね~、色男~~、うりうり~」
そう言って俺の脇腹を肘でぐりぐりといじってきた束さんは、そのコアを持ち上げると、
「んじゃ、君が政府の人たちに身体の隅から隅まで調べられている時間で、私はこの娘の花嫁衣装を創っておこう! 何かリクエストはある? 長距離型? 近距離型? それともバランサー? 装甲は? 機動力は?」
そんな束さんの矢継ぎ早な質問に、
「えっと、じゃあ――」
俺は頭に浮かんだ自分がISを操るイメージを伝える。
「ふ~~~~~~ん、なるほどなるほど――あははははは、いや、いいねそれ面白い!! それにこの娘の性格とも合ってるね。OKOK、この大天才……いや、超天才・束さんにまっかせなさ~い!!」
束さんはひとしきり笑ったあとに、自分の胸をど~ん、と拳で叩いて胸を張る。
「それからさ、いつまでも“君”ってわけにはいかないよね。書類にも名前書かなきゃいけないし。流石に本名名乗るわけにもいかないでしょう」
「ああ、そうですね……」
束さんの言葉で俺は初めて自分の本名を名乗れないという状況を思い出し、頭を捻る。
まったくなじみのない名前でも、呼ばれた時の反応が不自然になってしまうかもしれない。かといって元の字を残していたら何の意味もない……
そんなことを考えながら、出てきた名前が、
「
「ふむふむ、式部地ね。まぁ、本名から遠からず近からず――OK、じゃあ、君は今日から、あっちゃんだ!! んじゃ、あっちゃん! いざ出陣!! クーちゃん! 私の端末持ってきて~!」
「はい」
俺と束さんのやり取りを黙って聞いていたクーちゃんは束の指示があると、いそいそと大量の機会の中からキーボードのようなものを取り出すと、束の元へともってくる。
束さんはそれを受け取ると物凄い勢いでキーボードをたたきだしす。
部屋中にあるディスプレイが飛び起きたかのように反応して、数字の羅列を映しだしていく。
「じゃあ、俺、着替えてきます」
そんな束さんの後ろ姿に俺は声をかける。
束さんは顔向けずに右手を振るとすぐにキーボードへと手を戻す。
俺はそんな束さんを残し、外に出る。
自分が歩いているという実感がわいてきた。
俺はこれからIS学園へ入学する。
ただ一人の人物に会うために。
もう不可能だと思っていた邂逅を束という、天才の力を借りてここまで来た。
すぅ――と、大きく息を吸い込んだ。
全身に酸素がいきわたるのがわかる。
その酸素を運ぶ血が熱くなっていくのがわかる。
早くお前に会いたいよ――
「一夏――」
俺は我知らずその人物の名前を呟いた。
そう、俺は織斑一夏に会うために、いま此処にいる。
俺はもう一度大きく息を吸い込んだ。
身体の熱さは、もう、おさまっていた。
ちょっと文章を書いていなかったので、リハビリ含めて投稿してみました。
オリ主というのを初めて書いてます。
文字数も5000字前後で読みやすい感じで書こうかなと思っています。
そこまで長い物語にはならない予定です。
よろしくお願いいたします。