スキル“全肯定”を得た俺は、森羅万象に褒めそやされる⁉   作:M.H.

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 全10話で完結する予定です。最終話の投稿は5月31日になるかと思います。




第四話:貴族家面談 礼儀正しき甲冑

 

「コンサマッ!!」

 ……俺は今、父上とともに出かけている。行き先は貴族レッドイーグル家。父上をはじめとしたプリメント家の剣士たちが護衛を務めてきた、いわばお得意の依頼主様だ。

 

「コンサマッ!!」

 ……ちなみに、“プリメント”という名前は、200年ほど前に初代当主が生まれた地域の名前をいじくって決めたらしい。ただの農村の生まれから、貴族と関係を持つまでに至るとは、大層な成り上がりである。それだけに、俺の“スキル”のせいで凋落したとあっては向ける顔がない。

 

「コンサマッ!!」

 ……馬車に揺られながら向かっているわけだが、乗り心地はとても良い。おそらく、俺と会うや否やなついた馬たちが気遣ってくれているのだろう。

 

「コンサマッ!!」

 ……レッドイーグル家は森に沿った道を進んだ先にある。森の青々とした匂いが鼻をくすぐる。空気が美味しい。父上もリラックスしているのか心地よさそうだ。

 もっとも、訪問の目的を考えるとやや不安な気分になるが。

 それでも“やや”、で済むだけましか。俺は“剣聖”を手に入れられなかったが、俺の“全肯定”なら邪険にされることもないだろう。むしろ褒めちぎられる予感がする。

 

 などととりとめもなく考えているうちにレッドイーグル家の近くまで来た。

 

 

「コンサマッ!! コンサマッ!!」

 ……。

 

 

 

 狐の鳴き声が敬称付きなことにはツッコまないからな?

 

 

 

--------------------------

 

 

 

「ようこそお越しくださいました。当主は応接室にてお待ちしております。」

 

 レッドイーグル家に到着すると、門の外で1人の女性が出迎えてくれた。話によると彼女はメイド長らしい。俺たちは彼女に案内されて門をくぐった。そして、中庭を通り抜けて屋敷に近づいたとき、突然、ドアが荒々しく開かれた。

 

 

「コン様!!! (わたくし)めの非礼をお許しください!!!」

 

「ジョン様!? どうなさったのですか!?」

 

 なんでジョン=レッドイーグル──レッドイーグル家の当主様がこんなに慌てているんだ?

 困惑する俺に、彼は尋常でなく慌てた様子でつづけた。

 

「ドン様から手紙を受け取ったとき、愚かにも私は貴方たちを疑い、怒りを抱きました。なにが“全肯定”だ。訳の分からない“スキル”を手に入れて、どうして吉報と嘯くのか、と──」

 

 

 彼の話を要約するとこうだ。

 父上は、俺が“全肯定”を得たことを吉報として手紙を書いた。しかし、手紙を見たジョン様は俺たちに不信感を抱いた。だから、今日は俺たちを問いただすつもりでいたとのことらしい。

 けれども屋敷に近づく俺の気配を感じたとたん、自分はこの上なく(たっと)いものに悪しき思いを向けてしまったのではないかという思いに至り、居ても立ってもいられなくなったらしい。

 彼はしまいには土下座してしまった(もちろんすぐに起きてもらった)

 

 

 ……ここまでの話を聞いて思った。

 ジョン様の思考は至極当然では? 

 護衛を生業にしているものが、これまで護衛に使ってきた“スキル”を得られなかった。それだけでも今後の関係を見直さなければならない事態である。にもかかわらずそれを喜々として伝えられれば、何事かと思うのは当然だろう。

 

 何ら悪いことではない。むしろ当たり前のことだ。

 そう伝えたところ、

 

「おお。コン様はなんと懐の深いお方であろうか! 

 私のような罪深きものにまで情けをかけてくださるとは。

 うう、やはり貴方のような聖人を疑った自分が許せません!!」

 

 なんと、ジョン様は泣き出してしまった。

どうしたものかと考えあぐねていると、父上が口を開く。

 

「ジョン様、何も気にされることはございません。私の息子の崇高さをご理解いただけたのならそれだけでよろしいのです」

 

 

 父上は黙っていてくれ!! 収拾がつかなくなるだろ!!

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 その後何とかジョン様に泣き止んでもらい、俺たちは他のレッドイーグル家の方々とも会ったが、会う人会う人に謝られ、気にしなくてもよいですよと言えば皆一様に俺のことを慈悲深いと賞賛した。

 称えられることは想像していたが、このように謝罪されると居心地が悪い。

 

 

 

 

 ガシャンガシャン

 

 新たに会いに来る人も絶えたころ、廊下のほうから金属がこすれあう音がした。

 

 “剣聖”を目指して修行していた俺にはわかる。これは甲冑の音だな。

 

 衛兵か、はたまた修行をしているレッドイーグル家の人間か。

そう考えていた俺は、入ってきた闖入者をみて、思わず目を疑った。

 

 

 ……確かに、入ってきたのは()()だった。しかし、常識的に考えたとき甲冑という物体が移動する上で()()()()()()が足りない。

 

 

 ──そう、甲冑を着ている人間がいない!

 

察するにこの甲冑は、ひとりでに動き出し、俺のところまで歩いてきたのだ。

 

 口をあんぐりと開ける俺の前で、()()はお辞儀をする。

 きちんと45度まで腰を折る、慇懃な最敬礼だった。

 

 

 

「なんで甲冑が動いているんだよ!!!」

 

 “全肯定”を得て以来最大の、いや18年間の人生で一番の大声が出た。

 未だ状況を呑み込めていない俺は、父上たちのほうを見てみるが、

 

「ほう。命がなくても、コンの素晴らしさは通じるのだな」

 

「何という事よ。甲冑ですらコン様の神々しさに気づくのに、私ときたら……」

 

 

 皆はなぜか疑問にすら思っていないようである。

俺は天を仰いだ。

 そんな俺を見て(視力はあるのだろうか?)、()()は慌てた様子で気遣う素振りを見せる。『落ち着いてください。大丈夫ですか?』そう聞こえた気がした。

 

 ……もう、好きにしてくれ。

 

 

 

 無生物まで俺を持て囃す中に加わろうというのか……

 

 

 

 

 

 

 

-------------おまけ-------------

 

 ガシャガシャ

 

 俺は今、甲冑()たっての願いで、()()()?)を着て中庭を散策している。

 

 晴天の中、甲冑君は微笑むかのようにきらりと輝いていた。

 

 




次回 第五話:皇帝の勅命 王都に招かれたコン
5月26日火曜日 22:00投稿予定
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