スキル“全肯定”を得た俺は、森羅万象に褒めそやされる⁉ 作:M.H.
この作品も半分を迎えました。目を通していただきうれしい限りです。
ちやほやされることにもかなり慣れてきた。下手に褒められることが当たり前になってしまうと、もし“全肯定”をなくしてしまったときが怖いが、“スキル”がなくなったという現象は800年前の伝説でしか聞いたことがないため問題ないだろう。
そして喜ばしいことに、当初の懸念の種だった護衛の件もひとまず何とかなりそうだ。“全肯定”に頼って雇い続けてもらったわけではない。まあ、ジョン様は、護衛でなくてもかまわないから、ぜひ今後ともよろしく、と仰っていたが。
確かに俺は、敵に武力で抵抗するのは難しいだろう。敵が戦闘系の“スキル”を持っていたら勝ち目はまずない。けれども、俺には“全肯定”があるじゃないか。
たとえ敵が現れても、相対すればその時点で
……と、いうわけだ。プリメント家200年の成り上がりが俺のせいで潰えなくて本当に良かった。
しかし、最近新たな懸念が頭をもたげてきている。しかも、これまでになく規模が大きい。
──皇帝陛下から、俺に対して謁見を求める勅命が出された。
ヤバくね?
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いったん経緯を整理しよう。
……レッドイーグル家への訪問以来、ジョン様たちは他の貴族家や大商人たちに俺のことを
するとどうなるか。
皆一様にこう思ったのだろう。
コン=プリメントは怪しい、と。レッドイーグル家に言葉巧みに取り入った詐欺師であるか、ややもすれば洗脳の類の“スキル”で悪さをしているのではないかと。……実際、“全肯定”は洗脳のようなものだから何も言えないが。
人はうわさ話が好きだ。訝しい“剣聖”なりそこないの話は国中に広まっていき、ついには皇帝陛下のお耳にまで届いてしまった。陛下としてはうわさで国が乱れるのはよろしくないため、きちんと白黒つけるために俺を呼び出した。
……以上が、周りからの話を聞いた俺の推測だ。
おそらく、皇帝陛下の目的は俺を問いただして事の次第を明確にすること。もし、俺が悪さをしていたならそのときは……、という事だ。まあ、向こうからしてみれば俺はかなり黒寄りに見えていることだろう。
故に、この呼び出しは罠である可能性がある。陛下は賢君と名高い。洗脳を警戒しているのなら、うかつに俺に会いはしないと思う。リスクヘッジを考慮すれば、話すらせず“排除”に出るかもしれない。俺の推測の通り黒い噂が広まっているのなら、俺を騙し討ちすることなどいくらでももみ消してしまえるからな。
これだけ聞くと腹黒いと捉えられるかもしれないが、悪事の可能性を摘み取れるというのは一国の主として必要な器量だろう。賢君には計算高い側面も必要である。
憶測にすぎないが、既にこちらには間諜、いわばスパイを差し向けていたのでは?
けれども、皆俺の“全肯定”に
それに業を煮やして、
さて、これらを踏まえたうえで俺はどうするべきか。
答えは簡単。素直に出向いてやればいい。
何故か? “全肯定”があるからだ。
たとえ暗殺者が向かってきても、俺の近くに来た時点でこちら側につくだろう。衛兵も同じだ。俺が頼めば快く門を開けてくれるだろう。それを繰り返していけば、皇帝陛下の下にたどり着ける。陛下さえ味方につければ俺の勝ちである。
陛下自ら声明を出してもらう。そうすれば、俺への悪感情も多少は晴れるだろう。仮に、陛下まで洗脳されてしまわれたと思う者がいても、陛下の援助を受けながら各地を行脚すれば問題ない。
この場合、下手に逃げて“黒”の確信(といっても誤解だが)を与えてしまうほうが後々危ない。討伐軍を出されたら、俺にたどり着くまでに数え切れないほどの被害が生じることになってしまうからだ。
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……という結論に至った俺は今、向こうが手配した馬車で堂々と王都入りを果たしたところだ。
もちろん、命を狙われることも十分覚悟して来た。
覚悟して来たんだが──
「その堂々たる風格、お見事です。貴方がコン様ですな!!
私、皇帝マヴェリウス。臣下ともどもお待ちしておりました!!」
──王都に入るや否や、陛下を名乗る一人の男と、従者のような者たちが馬車に駆け寄ってきた。そして、あろうことか俺に頭を下げだした。
あれ、コレ覚悟すらいらなかった感じかな?
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おかしい。何か妙だな。
騎乗したマヴェリウス陛下たちとともに、大通り(大手道)を進んで城までやってきた。その間、行き交う住民からは賞賛の声を浴びることなった。
俺は最初、男を陛下の影武者かと警戒したが、その可能性はすぐさま棄却した。
理由の一つは彼の容貌。皇帝陛下のお顔など一般の貴族には知りようがないが、父上は直接お会いしたことがあるため、今回似顔絵を描いてもらった。もちろん、変身の“スキル”である可能性もあるためそれだけで判断したわけではない。
影武者ではない一番の根拠。それは、彼が外ならぬ
だから、俺が訝しんでいるのは陛下が本物かどうかじゃない。
──陛下の口ぶりを聞く限り、彼は俺の噂を聞いた時から不信感のようなものは抱かなかったらしい。
「貴方のお話を伺った時から、ぜひともお目にかかりたいと思っておりました」
──とのことだ。
ここで、ジョン=レッドイーグルの言葉が脳裏をよぎる。
『手紙を受け取ったとき、愚かにも私は貴方たちを疑い、怒りを抱きました。』
なぜ陛下は俺を怪しいと思わなかったのか? 賢君と呼ばれているようなお方だからなおさらおかしい。ジョン様の時と何が変わった?
思考を続けていた俺は、あの日の父上の言葉を思い出した。
『よいか──使い続けるうちに、“スキル”は強くなっていくのだ』
……ああ。変わったのは俺の“スキル”か?
数か月を経ていくなかで、“全肯定”が強まったのか!?
直接会いに行かずとも、伝聞だけで感服させてしまうまで!!
レッドイーグル家の一件以来新しい人と会うことを少なくしていたため、強化に気づけなかったようだ。それに“全肯定”は発動しっぱなしだから「使っていくうちに強くなる」を意識しづらかった。
能動的に使うわけじゃなく、垂れ流し続けるだけでも強化されていくんだな。
おそらく、俺が生き続ける限り“全肯定”は強まり続ける。24時間発動している分“スキル”の伸び方も大きいのかもしれない。言うなれば、風呂トイレ、食事、果ては睡眠中まで訓練し続けいるようなものだ。
……それじゃあ、これからどうなるんだろう?
どこまで強くなるんだろう?
明日はお休みしますが、明後日からは毎日投稿で駆け抜けます。
次回 第六話:歪みだす時空
5月28日木曜日 22:00投稿予定