さて皆さん初めまして、昨日の事が全く思い出せない小泉羽恩です。
絶対失敗した!
西宮には少し距離を置かれたし、加茂からの視線は冷たくて...まあ東堂とかいうゴリラに残念がられたのはどうでもいい。
西宮ちゃんに引かれたのは悲しい、加茂は追々和解できるだろうけどそれまでボッチなのが辛い。
今度こそ友達を作ろうと思っていたのに、まあ相手が呪術師だからって上手くいく訳ないよね。
改めて自分の考えが浅はかだと、理解してしまった。
それでも今日は早朝から一人で楽しめる上で大人の方々に大事にして貰える楽しい任務だった筈なんです、ですが最大の敵は任務で戦う呪霊じゃなくてピンポン玉サイズの蟲でした。
「...何ですかこれ?!
えっ何この変な生き物は、何か騙そうとしてますよね。」
「心配しないで下さい、無害ですから。」
掴んでみたら腹の柔らかい部分がビヨーンと伸びて手に引っ付いてきた...
食事排泄を無視できる蟲?いやいやそんな都合のいい存在ある訳ないじゃん!
...こういうのって携帯食を用意するもんでしょ?
こんなの嘘だ!絶対に嫌だぞ!
有事の時に呑み込むって事ならいい?マジ無理絶対に生理的に!
...
どんなエロ本じゃ!いや違うそういうのを見てるって訳じゃない!
何かネバついてるし気持ち悪い、うぅピーナッツみたいな臭いで...呪術師辞めたい。
術式で飲食や排泄なんて必要のない身体に出来るのに...
「任務が終わって授業を受けたら、皆で美味しい物でも食べに行きましょう。」
不味いもん呑み込んだ後に美味い物食べても喜び半減
今更こんな早くには引き返せない、だがそれでも許されるなら覚えてすらいない前世の何でもない生活に戻りたい。
彼女に与えられた初めての任務に関して、3級と見積もられていた呪霊はただの呼び水としての役割でしかなかった。
施設の中は特級呪霊や高位の呪詛師が何体も居座っていた地獄だから...
突入後の彼女は領域に囚われた、私としては完全に想定外の事態だった。
その数分後鉄筋コンクリート造りの廃屋はズタズタになりながら宙に舞い、地面に埋まった高位の呪霊は圧縮されて地下だった場所を中心に埋め立てられてしまった。
全身に返り血を浴びたかの様に汚れた彼女、白かった制服は赤色に染まり何故か所々融解している。
瓦礫が宙に舞った瞬間怪我を負ったと思わしき痕跡はあった気はする、だが今となってはその証明はできなさそう。
...それだけ優秀な反転術式の使い手なのかもしれない、だからこそ何故戦闘要員としての道を歩んでいるのか。
そして憂慮すべき問題として、帳が破壊されて秘密にされるべきヴェールが露わになってしまった。
同時に早朝明け方の筈だった大空が暗闇に覆われている、根源的な夜が明けるという世界の常識を改変させられる呪術の規模は個人として異常だ。
既存の特級術師とは次元が違う、一つの頂を見た。
故意にせよ偶然にせよ、我々はとんでもない怪物との諍いを作ってしまった。
ああ「どうですか私の実力は?」と妖しげに佇む彼女は年不相応な存在感を示している、これは私の失態だ。
この光景を見せられたら、誰でさえも彼女に逆らう事はできないのかもしれない。
それも年相応の態度でしかなかった、ああ人並みの良心があるのが救いだろう。
「入金110万って何ですか!税金どうするんですか!」
「ああ呪術師の報酬は一部免税される仕組みがありますので大丈夫ですよ、気にしないで下さい。」
「...なら貰っておきます!」
我ながら現金である、仕方ないね♀8月になるまで毎月振り込んでくれるらしいし学生でこの待遇なら許すよ。
...何を理由に許したのだろうか、それを判断する人生の軸はないというのに。
隠すまでもなく「初任給で何を買おうか?」とウキウキしている、最初は本棚に肥しを増やすとしよう。
ここ一月で肉体が術式に耐えられる様になったけど、凄い疲れた。
ただ直近に欲しい収集物はないから、何も言えない。
今は無いけど未来なら別枠、未来知識で荒稼ぎできるだろうから将来的な呪術テロへの対策も立てられるし。
資金があれば大立ち回りできそうなプランはある、ただ目立ちそうだから既存の利益享受者に手を出されたら嫌かな。
呪術は盲目的な執着が重要な要素になる、遠くない未来にて活用されている技術は多く知っている。
気付かされた呪術師の仕事は呪いを祓うだけじゃない、あのキッショイ蟲を生産したり反転術式で後送されてきた人達を治療するのも大事なんだって。
別に私は探求者じゃないから、こだわりはないからこそできる事は増やしたい。
自分の中に火が着いた様な感覚、これまたそれを判断する人生の軸はない筈なのにそう思ってしまった。
...ただ、乗り気かな。
最初は基礎研究からだ、教師の監督下で強力な武器を手に入れる。
因みに一日のスケジュールは8時間授業か任務で8時間の訓練を経て8時間を研究開発に使う事となりましたとさ。
睡眠時間isどこ?そこになければ、無いですね。
「ダメだ、認められない。」
「何でですか」
下手な事言ったらボコす、適当な返答するなら微粒子単位で粉々にする。
...鉄は熱いうちに打てとも言うし、同時に折角上がった気分は落ちるまで留めておきたい。
「「...」」
「相伝の術式こそが戦力化に繋がりやすいのは理解しているな?その方が安くて確実だぞ?
従来通りの技術を踏襲する事で戦力化は容易だ、古式ゆかしい呪の札で式神を顕現せしめるならば良いではないか。」
反論は難しい、事実2級程度の式神なら呪力が許す限り生み出せるから言ってる事は間違っていない。
だけど、ほんの少しの品質の差で顕現する式神の個体差が生まれるのだ。
例えば肉体性能が1級の式神を顕現させるつもりでも、準1級相当で生まれる事も少なくない。
「確かに術式を用いた式神術なら性能が担保されます、ですが私の式神は顕現に際して術式が関わっていません。
例えば触媒を複合させる事で安定させる事はできます、そうなれば今度は費用が嵩んでしまいます、勿論私が求める安定した基準の札を用意して頂けるなら構いませんが。
あと!私の式神術は元々呪いの札を使うモノではありません!」
「そうか、ふむ、ならば内容次第だな。」
存外話が通じる様に思える、定型化した言葉をヒョイヒョイと出して悪い大人だと思った。
ただ話を聞いてもらえるだけマシなのかもしれない...
「ゼネコンの最新機材が必要だと目算しています、その際は管理能力不足等の問題があると思うので頼らせて頂く事になります。
線の細さは10から100分の1で精度に至っては100分の1から1000分の1になります、ですから単純計算で従来の100から1000分の1の精度向上が見込めますね、それだけ安定してくれるなら私としては話は別です。」
「却下だ、そんな良く分からない高価な代物を学生の為に用意する事は了承できない。」
「知ってます!ですのでコレを承認して下さい!」
「伝統的な技術以外を活用するのは認められん、昔ながらの絡繰りならともかくな。」
「コレに書いてある半導体素子の話は、絡繰りよりも古いルーツがあります。
これは陶器という人類最古のテクノロジーの一つです、器がありその中に一つの要素を詰め込む、ただその物理的なサイズが小さいだけです。
直近では半導体がそれに該当します、技術の歴史的な要素ならこの様なありきたりな札を使う呪いよりも伝統的かつ古典的です。」
「つまりコレは古典的な技術だと言いたいんだな?」
「そうです!
札は代替品ですし戦闘中に割れやすい陶器を持って戦場に向かうよりも、安価で確実な手段だと考えています。
テクノロジーの歴史は呪術平安よりも古く縄文時代、どうでしょうか上層部のウケは理解して頂ければ悪くないと思います。
ニューテクではなくハイテクでありローテクなんです、保守的かつ革新的な代物だと私は確信しています。」
「...」
すんごい苦虫を噛み潰したような顔をしてる、ストローマン論法に面白いぐらいハマってる。
「もうネタ切れです。」
「分かった一月だけ待て、できそうなら資金を引っ張ってくる。」
どんな無理難題を強いられるかと思えば、想像より良心的だった。
...それぐらいなら苦が無いから、我慢は苦手だけどここまで言ってくれるなら許せてしまう。
電子機器の呪いとの親和性には私も驚いている、情報素子を入力する媒体として優秀だった。
折角のハイテク産業、利用しない理由はない。
呪詛師に研究内容は見せられない、それこそどう成果を隠蔽するかが肝要だろう。
それから一か月、私は体術と術式無しの領域術で1級呪霊を排除できる実力を手に入れた。
際限なく広がり続ける領域、接触すると同時に呪力が対象を貫く。
そして特級呪霊に黒閃を決める経験、術式無しで一級認定されるのに十分な成果を出せただろう。
随伴の1級術師が無数の骨にズタズタにされていた、急所だけは避けていたが戦闘不可能になる。
反転術式は才能だ、それもアウトプットと欠損の治療までが可能なら話は更に変わる。
翌日私は15歳の年齢で特級として認定されるに至った、当然だろう並みの1級では束になっても勝負にならない。
階級の認定も雰囲気だろうか、何というか呪術師も普通の人間なんだなって落胆するね。
上か人事か知らんがそれらの気分次第とは、段階を踏んでという話はどうしたんだか。
順当に1級を目指すのが最適解だろうに、こういきなり昇進させられてもいい気はしない。
でも特級に何度も襲われて加減デキるほど私強くないよね、それに特級も体感ピンキリで今回の敵もそこまで強くなかった。
随伴の1級を連れてスキマで逃げようにも、過去に一度連れ去った呪詛師が変死した経験があるから不用意な事はできないんだ。
私に国家転覆はできない、なのに術式無しで特級を何体もボコボコにしただけでそう認定しようとしてくるのは目が腐っている証拠なんじゃないだろうか。
等と呆れていたら知らん人から推薦を受けて準1級として認定される事になった
これで私の平穏は保たれた、私を特級にしなかった偉い人達グッジョブである。