ひみつ道具だったり、ドクトル・バタフライを始めとした転生者達の相談を受けたり、斎藤一達に怪しまれたり、なぜか黒幕扱いされる北海道の一幕です。
「糸色君、このヘルメットを被って欲しい」
ある日の昼下がり。
庭先に出て北海道の寒風を浴び、白い呼気を出しながら洗濯物を干していたとき、唐突に我が家にやって来たドクトル・バタフライの第一声に少し目を細める。
「……ドクトル、ヘルメットというより鉄仮面に見える代物を好き好んで被る女性は居ませんし。そういう偏愛を向けるのは自分の奥さんだけにして下さい」
そう言って私は左之助さんの法被を竹を使って使ったハンガーに引っ掛け、ピシッとシワを伸ばして、しとりの洗濯物も干していく。
着物は手洗いですから仕方ない事です。
「偏愛を向けるのは妻だけだが、私が君に頼みたいのはどうしても見たいものがあるからなんだ」
少し語彙を強めるドクトル・バタフライの声にビクリと肩を震わせ、ゆっくりと深く溜め息を吐いて、左之助さんとしとりのいない居間へと案内します。
「フム。温室のように整っているね」
「ひとえも居ますので、赤ちゃんの内に寒さに慣れておくのも大事ですけど。いきなり冷たい空気を吸えば、私のように結核を患うかも知れませんから…」
「……すまない。不躾な質問をしたね」
「良いですよ。お薬は貰っていますし」
そうドクトル・バタフライに告げ、私は毛布や即席の湯タンポを仕込んだ籠の中に入って、スヤスヤと眠っているひとえの傍に鎮座するドンと親分の頭を撫でてあげ、ドクトル・バタフライに向き直ります。
「それで、さっき言っていた『どうしても私に頼みたいこと』というのは何ですか?出来れば改造や怖いことは止めて欲しいんですけど……」
「先ずは、このヘルメットについて説明しよう。このヘルメットはひみつ道具の『記憶掘り出しビデオ』の性能を与えた代物だ。装着し、その記憶を記録して、映像として投射する。音声や効果音に関しては、どうしても糸色君の記憶に依存してしまうけれど。君の『特典』は『前世の記憶の保持』だ。君ならば、このひみつ道具を不便なく使える筈だ」
高らかにドクトル・バタフライは説明し、興奮と高揚でにじり寄ってきた彼に身体を震わせつつ、しとりと左之助さんはまだ帰ってきていないため、記憶の投影程度なら時間は掛かりませんね。
「……はあ、分かりました。ドクトルにはいつもお世話になっていますし。協力しますけど。ちゃんと安全な代物なんですよね?」
「勿論だ。さあ、早く私に『武装錬金』を見せてくれ。もう会いたくて会いたくて仕方ないんだ!君ならば私の欲望を叶えてくれるはずだ!」
………たまに、ストレスでおかしくなりますよね。