「オレの必殺技って何だ?」
いきなりやって来たかと思えば変な事を言い出した不破信二の目の前に凍ったリンゴを卸し金で擂り卸し、砂糖と水を加えて甘く煮詰め、冷やしたシロップをパンに塗って頬を緩めるしとりの頭を撫でます。
「知りません。そもそも私に必殺技があると不破さんは思っているんですか?」
「無いだろ。薄いし、細いし、殴ったら一発で死にそうな顔色の女」
突然の罵倒にショックを受けつつ、ホットミルクにリンゴのシロップを混ぜてあげ、しとりに差し出すと「おいしいね、かあちゃん」と笑ってくれます。
けど、母ちゃん呼びは治してほしいです。
せめて、お母さんか母様がいいです。
「聞いてるか。糸色ぃ」
「私はとうに相楽です」
「知ってる。……糸色ってよ、本当に細いよな」
のっそりとちゃぶ台に身体を預けるように突っ伏し、ジーッと私を見つめる不破信二の言葉に自分の身体を見下ろす。これでも一キロは増量したんですけど。
そもそも太る以前に『前世の記憶の保持』という「特典」がある限り、私は膨大なカロリーを消費し続け、まともに太ることは出来ませんし。
持病の影響も相俟って過食は無理です。
「まあ、話しは戻るけどよ。オレの必殺技って何だろうなと考えたんだよ。圓明流の技は全て修めたし、陸奥の業も幾つか覚えている。だが、オレの業にはオリジナリティーっていうものが無いんだ」
「貴方は何を言っているんですか?」
「格闘漫画、描いてくれ」
「結局、それが目的じゃないですか…」
小さく溜め息を吐いて、不破信二のお願いを丁寧に断ります。格闘漫画を描けば必然的に読者を増やそうとしますよね。絶対に許しませんからね。
「……不破さん、負けるとか考えたことあります?」
「あるわけ無いだろ?」
「ひっ、こ、怖いので凄まないで下さい」
「あ、わ、悪い」
「いえ、私もすみません」
「……まあ、なんだ。悪かった」
ゆっくりと頭を下げて謝ってくれた不破信二の言葉を信じ、私も許してお互いの顔を見つめる。不破信二は「月華の剣士」や「るろうに剣心」の幕末の動乱を生き抜き、ひたすらに最強のまま往き続けている。
「不破さん、ヒーローマシンの最新型は対戦相手を選んで戦えるというものなんですけど。特設ステージを組んで戦ってみますか?」
「ブッ殺して良いのか?」
「ダメです」
「殺す業は無し。なら構わないぜ。ってか、オレでも使えるひみつ道具になったのか」
「いえ、ショドウフォンで呼び出そうかと」
「ごり押しじゃねえか」
そうとも言いますね。