『武装錬金』の第一話を観終わったドクトル・バタフライは満足げに吐息を吐いて、ちゃぶ台の上に用意された麦茶をゴクリと飲んだ。
「やはり武藤カズキは素晴らしいな」
そう言って微笑みを浮かべ、ゆっくりと湯呑みを置いた彼は身体の熱を発散するように武装錬金「バタフライエフェクト」を起動し、雪の積もる昼の空に飛び上がっていきます。
スヤスヤと眠っているひとえのおでこに掛かった髪を払い、ゆっくりと撫でてあげる。しとりもそうでしたが、二人とも私と同じ青色の目をしているんですね。
純正日本人の筈なんですけど。
こういうときに「物語」の世界に生まれ変わったんだなあ、と理解することが出来る。しかし、ひとえは僅かに瞳の色が赤みがかっている。
「ん!ただいま!ひーちゃん!」
「お母さんに、ただいまはないんですか?」
「ん!んー!」
むにむにっとほんのりと赤くなったしとりの頬っぺたを両手で挟み、手洗いとうがいをするように伝えて、玄関で雪を払っている左之助さんに近づき、火鉢の傍に置いて暖めていた手拭いを差し出す。
「うおっ!?」
「フフ、ビックリしましたか♪︎」
「このやろぉ…悪戯し返すぞ?」
「それはご勘弁して欲しいです。ようやく体調も落ち着いてきたばかりですから、ね?」
そう冗談めかして言うと首筋に痛みが走った。
「んッ……なんで噛むんですか?」
「オレも分からん。なんでだ?」
困惑する左之助さんに「えぇ?」と首を傾げつつ、手洗いとうがいを終えたしとりが火鉢で冷えた身体を暖め、スヤスヤと眠っているひとえの傍に寄る姿が見えて、クスクスと笑ってしまいます。
本当に可愛くて可愛くて仕方ないですね。
「……香水の臭い、オッサンだな」
「ドクトルは確かに来ていましたけど。少し世間話と検診をしてくれただけで何もしていませんよ?」
「何もしてなくても自分の女がオッサンに身体を知らないところで触られてるのはムカつく」
なんですか、それ。
私は苦笑を浮かべながら左之助さんの両手を握り、自分の頬っぺたに押し当てます。ドクトル・バタフライはこんなことしないでしょう?
「私は左之助さんの奥さんですから」
そう伝えると少し動きを止めたかと思ったら私の右肩口に顔を押し付けるように抱き締め、深く長く大きな溜め息を彼はこぼした。
「抱き潰してえ……」
「お、お馬鹿な事言わないで下さいっ」
私が言い返すと更に抱き締める強さが増して、どうしましょうかと悩みながら左之助さんの頭を優しく撫でてあげる。