ヒンナヒンナと言葉の響くチセの中、汗だくになったムカル君は「コイツ、なんで疲れないんだ」と、運動用の袴姿になったしとりに困惑しています。
しとりは楽しく遊べて楽しそうですね。
「むーちゃん、たのしかった?」
「……まあ、そこそこ」
「悪いわね、しとり。ムカルったら同年代の女の子に貴女ぐらい可愛い女の子がいないから照れてるのよ」
「パポ!?な、なに言ってんだよ!?」
「アンタは黙っときなさい。マセガキ」
パポ(お母さんを意味するアイヌ語)を呼ぶムカル君にズバズバと言葉をぶつけるススハム。これが恐妻家というやつなんですね、勉強になります。
私もこれくらい出来るようになりたい。
そう思いながら、囲炉裏の側でアクビをするひとえの頭を優しく撫でて上げる。可愛い可愛い私と左之助さんの愛し子、しとりの大事な妹です。
「相楽カッケマッ。面倒臭い相手の事を考えているんだろうけど。アタシや信二、ドクトルは絶対に貴女を裏切らない仲間になっているわ」
「……フフ、いきなりどうしたんですか?」
「隠さなくて良いわよ。カッケマッ……景の纏う空気の流れが酷く変わっているわ」
「空気、ですか?」
「えぇ、何年も神に仕えているとそういうモノが見えるようになってくるのよ。悪縁良縁の類いで縛り付けられて、本当に良く生きているわね。死相まみれよ?」
とんでもなく怖いこと言いますね。
けれど。ススハムは好き好んで人を怯えさせて貶める言葉を伝える人ではない。本当に私は、悪縁良縁のどちらも身体に巻き付いているのでしょうね。
とてもイヤですが、対処法は分かりません。
「ススハムさん、怖いことを言うのはダメです。それに、私が居なくてもしとりもひとえも健やかに成長し「それ以上言ったらマジで蹴っ飛ばすわよ」……そう、ですね。ごめんなさい」
「アタシはアンタに謝って欲しいわけじゃないのよ。友達として、アンタが死なない方法を一緒に考えたい。サンピタラカムイだって、アンタを巫女に選んだのはその魂の穏やかさもあるんだから」
「魂の穏やかさって……」
「シャラップ。アタシは冗談で言っている訳じゃない。アンタの魂は空白のように、なんだって取り込める。今までの押し付けも、閻魔の鍵も埋め込める身体。そう中々に見つかるものじゃないわ」
「お褒めの言葉ですねえ」
私に出来ることは『物語を繋げる』こと。
ただし、その能力は認知を受けて、ようやく発動する。楯敷君の狙いは奪った直後に全世界にオーロラカーテンを介して目撃させ、全ての世界を繋げることです。