美しい色とり折りのバラが咲き誇る4番道路――通称「パルテール街道」を、ミソラたちは心ゆくまで満喫しながら歩んでいた。
足元ではフォッコとピカチュウが競うように歩き、空からはヤヤコマが優しく見守る。新入りのエネコは、ルリリの丸い尻尾がポンポンと跳ねるのを不思議そうに眺めながら、すっかり緊張も解けた様子でトコトコと後ろをついてきていた。
「みんな、もうすぐカロス地方の中心、ミアレシティよ」
ミソラが呼びかけると、前方にそびえ立つ大きなゲートが見えてきた。その近代的な建物の前で、スタイリッシュな白いコートを身に纏った、一組の男女がこちらを待っている。
「ボンジュール! 君がプラターヌ博士の言っていた、アサメタウンのミソラちゃんだね?」
声をかけてきたのは、端正な顔立ちに眼鏡をかけた知的な青年、デクシオだった。
その隣で、ウェーブがかった髪をなびかせた美しい先輩トレーナーのジーナが、華やかに微笑む。
「ええ、はじめまして。ミソラです。そちらのお二人は……?」
「私たちは博士の助手であり、君たちの旅をサポートする先輩さ。私はデクシオ」
「私はジーナよ! 博士から話は聞いているわ。バグバッジを手に入れて、もうこんなに立派なトレーナーの顔をしているなんて、素晴らしいわね!」
ジーナの快活な言葉に、ミソラは少し照れくさそうにスカートの裾を軽くつまんで一礼した。
デクシオとジーナの視線が、ミソラの足元へと向けられる。そこには、タイプの効率やバトルの強さだけで選ばれたわけではない、五匹の愛おしい「家族」たちがそれぞれの個性を輝かせて並んでいた。
「おや……フォッコにヤヤコマ、ピカチュウ、ルリリ、そしてハクダンのエネコかい? 素晴らしいね、どの子も毛並みがツヤツヤしていて、トレーナーからの深い愛情(アムール)を感じるよ」
デクシオが感心したように眼鏡の奥の目を細める。
「ええ。この子たちは私の大切な家族ですから。なついてくれる命には、全力で応えるのが私の筋だと思っています」
ミソラが真っ直ぐな瞳で答えると、ジーナは「素晴らしいわ!」と両手を合わせて嬉しそうに声を弾ませた。
「ただ強いだけのポケモンを集めるトレーナーはたくさんいるけれど、あなたのように一匹一匹の命と真摯に向き合うトレーナーこそ、これからのカロス地方には必要なのよ。博士があなたを選んだ理由が、今よおく分かったわ!」
二人の温かい言葉に、我が子たちも嬉しそうに鳴き声を重ねる。
「さて、ミアレシティに入る前に、博士からの預かり物があるんだ」
デクシオがバッグから取り出したのは、新しく発見されたポケモンの生態を記録する『カロス図鑑(セントラル)』の拡張データだった。
「これでミアレシティ、そしてその先に暮らすたくさんのポケモンたちのことがもっとよく分かるようになるよ。君の温かい大家族の輪が、これからどう広がっていくのか、僕たちも本当に楽しみにしているよ」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
図鑑を受け取り、ミソラは深く一礼した。
「さあ、ゲートの向こうは光の都、ミアレシティよ。プラターヌ研究所はサウスサイドストリートにあるわ。博士が首を長くして待っているから、気をつけて行ってね!」
ジーナが爽やかに道を譲り、大きな自動ドアが開く。
デクシオとジーナという心強い先輩たちに背中を押され、ミソラと五匹の家族は、眩い光に満ちた大都会の喧騒へと一歩を踏み出した。