ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第13話:双子のステップと、目覚める二つの光

 

ミソラたちはミアレシティの喧騒を完全に離れ、緩やかな坂道に沿ってスケート用のレールが敷かれた「5番道路」――通称プレシャス通りを進んでいく。

ピカチュウ、ルリリ、エネコ、そして新入りのヒトカゲは、パンジーから貰った『がくしゅうそうち』の温かい光に包まれながら、ミソラの後ろをトコトコと楽しそうについてきている。

 

「ねえねえ、そこのお姉さん! 私たちと勝負しよ!」

「勝負しよ!」

行く手を阻むように草むらから飛び出してきたのは、全く同じ顔、同じ服を着た元気いっぱいの双子の女の子、セシルとティナだった。二人は息ぴったりに、同時にモンスターボールを構える。

「私たちは双子の姉妹! 二人の息の合ったバトル、見せてあげる!」

「見せてあげる!」

「あら、可愛い双子ちゃんね。ええ、喜んでお相手するわ。……フォッコ、ヤヤコマ、おいで!」

ミソラが呼びかけたのは、旅の最初から彼女の側を支え続けてくれた、いわば大家族の「長子」にあたる二匹だった。

「いけっ、プラスル!」

「いけっ、マイナン!」

双子が繰り出したのは、お互いの電気エネルギーを高め合う応援ポケモン、プラスルとマイナンだった。フィールドに出た瞬間、二匹は手を取り合ってステップを踏み、互いの特性『プラス』と『マイナス』が共鳴して、放たれる電磁波が何倍にも膨れ上がっていく。

「プラスル、『スパーク』!」

「マイナン、『スピードスター』!」

息の合った波状攻撃がフォッコとヤヤコマを襲う。マイナンが放った無数の星の光がヤヤコマの退路を断ち、そこへプラスルの強烈な電撃がフォッコへと迫る。双子の完璧な連携の前に、フォッコとヤヤコマは一歩後退を余儀なくされ、苦しい表情を浮かべた。

「フォッコ! ヤヤコマ!」

ミソラはハッと息を呑む。

後ろでは、ピカチュウやヒトカゲたちが心配そうに声を上げている。

(どうすればいいかしら……。二匹の連携は強力だけど、私の一番の強みは、この子たちと過ごしてきた『時間』の長さよ!)

ミソラはぐっと拳を握りしめ、フィールドの二匹に向かって凛とした声を響かせた。

「みんな、大丈夫よ! 相手の呼吸が一つなら、私たちの絆はそれ以上よ! ヤヤコマ、フォッコの足元へ突風を! フォッコ、その風に乗って跳んで!」

その言葉に、二匹の瞳に鋭い光が戻った。

 

ヤヤコマが鋭く羽ばたき、フィールドに強い上昇気流を巻き起こす。フォッコはその風を捉えてしなやかに宙へと舞い上がり、プラスルの電撃を間一髪でかわしてみせた。

「今よ、二人同時に最大火力で!」

空中のフォッコから放たれた『火の粉』と、ヤヤコマが風を纏って突撃する『体当たり』が、プラスルとマイナンの陣形の中央へと炸裂した。

激しい光と爆風がフィールドを包み込む。

「やった……!?」

ミソラが目を見張った、その時だった。

爆風の霧の向こうから、突如として眩い、真っ白な進化の光が「二つ」同時に立ち昇った。

一つの光は、フォッコの体をひと回り大きく、しなやかに成長させていく。耳の飾り毛はより長く美しく伸び、後ろ足で毅然と立ち上がるその姿は、まるで気品高き魔導士のようだった。

走る光のもう一方は、ヤヤコマの翼を力強く広げ、その体を引き締まった戦闘機の如きフォルムへと変えていく。頭部の橙色はさらに鮮やかさを増し、鋭い眼光が周囲を威圧した。

光が弾け飛ぶ。

「テール……ッ!」

「ヒノッ……!」

二匹は、これまでよりもずっと深く、凛とした声で鳴いた。

「まぁ……! 二人とも、なんて美しくて格好いいの……!」

ミソラは感動に胸を震わせた。効率的な育成ではない。ミソラを信じ、お互いを支え合ってきた二匹の「応えたい」という強い想いが、この瞬間に奇跡の同時進化を導いたのだ。

 

「さあ、新しく生まれ変わった力、見せてあげましょう。テールナー、ヒノヤコマ、決めなさい!」

新しく覚えた技のイメージが、ミソラと二匹の間で瞬時に共有される。

ヒノヤコマが目にも留らぬ速さで空を駆け抜け、プラスルとマイナンの意識を逸らした瞬間、テールナーが尻尾から一本の木の枝を鮮やかに抜き放った。その先端から放たれた強力な炎の渦――『ニトロチャージ』が、双子のポケモンたちを優しく、けれど圧倒的な力で包み込む。

「ああっ、プラスル、マイナン!」

炎の熱と風の衝撃を受け、プラスルとマイナンはその場に目を回して倒れ込んだ。

「うわぁ、やられちゃった! 僕たちの負けだよ!」

「負けちゃった!」

セシルとティナはすぐに相棒たちを呼び戻して労わると、すぐに「すごーい!」と目を輝かせてミソラに拍手を送ってきた。

「負けちゃったけど、すっごく綺麗な進化だった!」

「お姉さんとポケモンたち、本当に息がぴったりだね!」

「ありがとう。二人とも、素敵なバトルをありがとうね」

ミソラは双子に優しく微笑みかけると、すぐに駆け出してテールナーとヒノヤコマを両腕で抱きしめた。少し大きくなった二匹の確かな温もりと重みが、ミソラの胸に心地よく伝わってくる。

後ろからは、ピカチュウやルリリ、エネコ、引越しを終えたばかりのヒトカゲが、頼もしいお兄ちゃんとお姉ちゃんの誕生を祝うように、大はしゃぎで周りを飛び跳ねていた。

 

最初の二匹が遂げた、大いなる進化。

夕暮れが近づく5番道路で、ミソラの大家族は、より強く、より深く、その確かな絆のステップを刻み込んでいくのだった。

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