長い坂道を下りきると、レンガ調の古い建物が並ぶ、静かで趣のある町「コボクタウン」へと到着した。ミソラがまず向かったのは、旅の疲れを癒やすためのポケモンセンターだ。
大きな自動ドアをくぐると、カロス地方特有の広々としたロビーが広がっていた。その一角には、トレーナーがボックスに預けているポケモンたちを一時的に呼び出し、自由に遊ばせることができるガラス張りの庭園――「ふれあいコーナー」が設置されている。
「さあ、みんな。お待たせしたわね!」
ミソラがふれあいコーナーのふかふかした芝生の上に立つと、手持ちの6匹(テールナー、ヒノヤコマ、ピカチュウ、ルリリ、エネコ、ヒトカゲ)が一斉に飛び出した。
そして、ミソラはコーナー専用のシステムを操作し、優しく語りかける。
「おいで、プラスル、マイナン。寂しかったでしょう?」
転送装置の光と共に姿を現したのは、5番道路で家族になったばかりの小さな兄妹だった。
二匹は一瞬だけきょろきょろと周囲を見回したが、目の前に大好きなミソラと、温かい先輩たちが揃っているのを見て、瞳をパッと輝かせた。
「プラッ!」
「マイマイッ!」
お兄ちゃんのプラスルが妹のマイナンの手を引き、真っ先にミソラの膝元へと飛び込んでくる。ミソラは二人を両腕でしっかりと受け止め、愛おしそうに頬を寄せた。
「よく頑張ったわね、お利口さん。今日はここで、みんなで気が済むまで遊びましょう!」
ミソラのその言葉が、最高の合図だった。
総勢8匹――ミソラの大家族のフルメンバーが揃ったふれあいコーナーは、一瞬にして特大の遊園地へと様変わりした。
新入りのヒトカゲは、お兄ちゃんになったばかりのプラスルとすぐに意気投合したようで、尻尾の炎をパチパチと揺らしながら、プラスルと一緒に芝生の上を元気に追いかけっこし始めた。妹のマイナンは、そんなお兄ちゃんたちの姿を、ルリリとエネコの隣で並んで座りながら、丸い耳をパタパタと揺らして楽しそうに応援している。
「ふふ、みんな本当に仲が良いのね」
ミソラが微笑んでいると、ピカチュウが「ピカピカ!」とマイナンたちを誘い、尻尾を上手に使って、ふれあいコーナーに用意されていた柔らかいボールをポンポンと弾ませ始めた。それを見たルリリも、大きな黒い尻尾をバネにしてピョンピョンと跳ねながら混ざり、エネコは転がるボールを夢中で追いかけて楽しそうにじゃれついている。
まさに、可愛い我が子たちが作り出す、至福の癒やし空間。
世間の効率主義のトレーナーなら、「使わないポケモンを呼び出して遊ぶなんて、時間の無駄だ」と言うかもしれない。けれど、ミソラにとってはこの時間が何よりも尊く、これこそが彼女の通す『筋』だった。ボックスにいるからといって、家族を一人にしたりはしない。全員が同じように愛おしい、大切な存在なのだ。
ふと見上げると、進化したばかりのヒノヤコマがコーナーの天井近くを優雅に旋回し、テールナーは自慢の小枝で空中を優しくなぞって、キラキラとした小さな火の粉のシャボン玉を作ってみせていた。その光の粒が芝生へと降り注ぎ、遊ぶ子供たちを優しく照らし出す。
「みんないい子ね。私、貴方たちのママになれて、本当によかったわ」
ミソラが芝生に座り込んで両腕を広げると、ボール遊びをしていたピカチュウ、ルリリ、エネコ、そして追いかけっこをしていたヒトカゲとプラスル、マイナンが、まるで雪崩のように一斉にミソラの胸へと飛び込んできた。
「キャッ……! もう、みんな元気すぎよ!」
嬉しい悲鳴を上げるミソラの顔を、みんなが代わる代わるペロペロと舐め、電気タイプの子たちは嬉しさのあまりパチパチと心地よい静電気を響かせる。テールナーとヒノヤコマもそっと側へ寄り添い、ミソラを包み込むように大きな円を作った。
ポケモンセンターのガラス越しには、そのあまりにも温かく、愛に満ちあふれた大家族の姿を、ジョーイさんや他のトレーナーたちが、思わずうっとりとした表情で見守っていた。
タイプの偏りも、枠の制限も、この絶対的な絆の前には何の意味も持たない。
コボクタウンの静かな夕暮れの中、ポケモンセンターの一角には、世界で一番賑やかで、世界で一番温かい、大家族の幸せな笑い声がいつまでも響き渡っていた。