コボクタウンの街並みを抜けると、そこには優雅な尖塔が特徴的な「ショボンヌ城」がそびえ立っていた。かつてカロス地方で栄華を極めた貴族の邸宅であり、現在は美しい庭園が開放されている歴史的な場所だ。
「わあ……! お城の中なんて、まるでおとぎ話の世界みたい!」
庭園の入り口で、目を輝かせてはしゃぐ少女がいた。ミソラの旅の仲間であるサナだ。
「あら、サナ! こんなところで会うなんて偶然ね」
「あ! ミソラちゃん! 久しぶりっ!」
サナはピョンピョンと跳ねながら駆け寄ってくると、ミソラの周囲にいる6匹のポケモンたちに目を留めた。
「すごーい! ミソラちゃん、フォッコとヤヤコマが進化してる! それに新しい仲間も増えて、みんなとっても幸せそうな顔してるね!」
サナは、凛々しく成長したテールナーやヒノヤコマの姿、そして足元に寄り添うピカチュウ、ルリリ、エネコ、ヒトカゲたちを見て、心からの笑顔を浮かべた。プラスルとマイナンの兄妹は今はポケモンセンターでお留守番中だが、今連れている6匹の空気感だけでも、ミソラの大家族の温かさはサナにしっかりと伝わっていた。
「ええ、みんな大切な私の我が子たちよ。サナも、ポケモンたちと旅を楽しんでる?」
「もちろん! ……でもね、実はちょっと困ったことがあってさ」
サナは少し神妙な面持ちになり、お城の管理人のもとで聞いてきたという噂話を打ち明けてくれた。
「この先、7番道路を通ってコボクタウンを抜けようとしたんだけどね、そこに大きなカビゴンが横たわって道を塞いじゃってるみたいなの。いくら起こそうとしても、全然ピクリとも動かないんだって」
「カビゴンが、道を?」
「そうなの。ショボンヌ城の管理人さんも『困ったものだ』って頭を抱えててさ。7番道路へ行くには、何とかしてそのカビゴンを起こさないといけないんだって」
ミソラはそっと、自身の肩に止まるヒノヤコマを見た。ヒノヤコマは鋭い視線で、7番道路の方角を見つめている。
効率やバトルの強さだけで言えば、道を塞ぐカビゴンは「障害物」かもしれない。けれど、ミソラにとっては、そのカビゴンもまた、カロスの自然の中で懸命に生きる一つの命だ。
「そう……。カビゴンも、何か理由があってそこで眠っているのかもしれないわね」
「ミソラちゃんらしいね。でも、確かに動かさないと私たちは進めないし……。とりあえず、何とかして起こす方法を探してみようよ!」
サナの明るい提案に、ミソラは頷いた。
目の前に立ちはだかるのは、強大な力を持つ巨獣。けれど、ミソラには固い絆で結ばれた我が子たちがいる。どんな困難も、みんなで知恵を出し合い、寄り添い合えば乗り越えられると信じているからだ。
「ええ、行きましょう。私たちの大切な旅の道を取り戻すために……そして、眠っているカビゴンにも会いに行きましょう」
コボクタウンの古城を背に、ミソラとサナ、そして手持ちの6匹の家族たちは、7番道路の巨影へと向かって歩み始めた。