サナと共にショボンヌ城の管理人から詳しい話を聞いたミソラは、思わず眉をひそめていた。
「『ポケモンのふえ』が……借金の形(かた)に持っていかれた、ですか?」
「そうなんだよ……」と、城の管理人は情けなさそうに頭を抱えた。「かつては我が城の家宝として、カビゴンを鎮めるために使われていた聖なる笛だったのだがね。パルファム宮殿の我儘な主(あるじ)に多額の借金をしてしまい、その担保として宮殿へ持って行かれてしまったのだ……」
その言葉を聞いた瞬間、ミソラの胸の奥で、静かだが確固たる怒りの炎が灯った。
ミソラにとって、人の弱みに付け込んで歴史ある宝物を奪い去るような行為や、自らの不始末で大切なものを手放すような生き方は、最も美学に反する「筋の通らない」ことだった。
「人の宝物をそんな理由で囲い込むなんて……。それに、カビゴンが道を塞いでみんなが困っているというのに、自分の宮殿にしまい込んでいるなんて放っておけないわ」
「ミ、ミソラちゃん、目がマジだよ……! でも確かに、その笛がないとカビゴンは絶対に起きないみたいだし、取りに行くしかないよね!」
サナが少し圧倒されながらも拳を握る。ミソラの足元では、テールナーが尻尾の小枝をキュッと握り直し、ヒノヤコマが鋭い眼光で北の空を睨み据えた。ピカチュウやヒトカゲたちも、ミソラの強い正義感に応えるように頼もしい鳴き声を上げる。
「ええ。コボクタウンの皆さんや、道を塞がれて困っている旅人のため、解き放たれるべき『ポケモンのふえ』のために、私が筋を通しに行きます。サナ、そのパルファム宮殿はどこにあるの?」
「ここから北へ続く『6番道路』を真っ直ぐ進んだ先だよ! すっごく大きくて派手なお城なんだって!」
「決まりね。みんな、行くわよ!」
ミソラはスカートの裾を翻し、迷いのない足取りでショボンヌ城を後にした。
手持ちの6匹の家族たちも、彼女の毅然とした背中を追って、一糸乱れぬ足取りでついていく。ボックスでお留守番をしているプラスルとマイナンの想いも、その胸のバッジの輝きと共にしっかりとそこにあった。
効率や損得だけで動く人間なら、「他人の借金トラブルに首を突っ込むなんて無駄だ」と言うかもしれない。けれど、目の前の不条理を見過ごさず、あるべきものをあるべき場所へ戻すために動くことこそ、ミソラというトレーナーの生き様そのものだった。
木々が美しく整備された6番道路の並木道へと飛び出した一行。
その先で待つ、贅を尽くしたパルファム宮殿の我儘な主に対し、ミソラの大家族がどのような「筋」を通すのか。カロスの青空の下、彼女たちの正義の行進が始まった。