ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第22話:目覚めし巨獣と、重低音の激突

 

コボクタウンの西へと続く7番道路。その中央で、相変わらず地響きのような大いびきをかきながら道を完全に塞いでいる巨大なカビゴンを前に、ミソラたちはショボンヌ城の城主と合流していた。

パルファム宮殿から取り戻した木箱を開け、ミソラは一本の美しい横笛を城主へと手渡す。

「城主、約束通り『ポケモンのふえ』を取り戻してきました。あるべき場所へ、あるべき筋を通したのですから……今度は貴方の番です」

「おお、これぞ我が城の宝……! よくぞ、よくぞ取り戻してくれた!」

城主は涙を流して感謝すると、笛を恭しく受け取り、カビゴンの前に進み出た。

サナが少し心配そうに「本当にこれで起きるのかな……?」と山のようなお腹を見上げる中、城主が深く息を吸い込み、笛を唇に当てる。

――ピーヒョロロロ……。

その瞬間、道路いっぱいに、言葉に尽くせないほど深く、心に染み渡る美しい音色が響き渡った。ただ音が鳴っているのではない。城主にしか出せない、カビゴンとの歴史を感じさせる完璧な音色。その見事な旋律が巨大な耳に届いた瞬間、地鳴りのようだったいびきが、ピタリと止まった。

巨体がモゾモゾと動き、ゆっくりと、その重い瞼が開かれた。しかし、そこに宿っていたのは「気持ちよく目覚めた爽快感」ではなかった。あまりにも深い眠りを強引に破られたことへの、凄まじい不機嫌さと怒り――すなわち、最悪の『寝起き』だった。

 

「グオォォォォォォンッ!!」

地平線を揺るがすような咆哮。カビゴンは仁王立ちになると、丸太のような腕を振り回し、狂暴な視線を近くにいた城主へと向けた。そのまま、巨体に似合わぬ突進力で襲いかかってくる。

「城主、下がって!」

ミソラの一喝と同時に、我が子たちを一斉に前に飛び出させた。

「ヒノヤコマ、『ニトロチャージ』で翻弄して! テールナーは後方から『サイケこうせん』でカビゴンの足元を狂わせるの!」

「ヒノッ!」

「テール!」

紅蓮の炎を纏ったヒノヤコマが、疾風の如きスピードでカビゴンの周囲を旋回し、その鋭い一撃で巨獣の注意を城主からミソラへと引きつける。さらにテールナーが尻尾から小枝を抜き放ち、その先端から不思議な光の輪――『サイケこうせん』を放って、カビゴンの強靭な足取りを幻惑するように鈍らせていく。

しかし、カビゴンのタフさは常軌を逸していた。炎と光線の直撃を受けても、びくともしない。それどころか、強烈な『のしかかり』を繰り出し、地面に大きなクレーターを作り出した。

「みゃうっ!?」

風圧だけでエネコが吹き飛ばされそうになる。

 

世間の効率主義のトレーナーなら、「ノーマルタイプ相手なら、事前に相性のいい格闘タイプのポケモンを用意して戦うのがセオリーだ」と冷徹に計算するだろう。

だが、ミソラにとって、目の前の困難は今ここにいる我が子たち全員で知恵を絞り、絆を合わせて乗り越えるべき試練だった。ボックスで留守番をしているプラスルやマイナン、そして新しく加わったばかりのニャスパーたちも、心は共に戦っている。

 

「ピカチュウ、エネコ! 二匹の距離を詰めて、『ねこのて』よ!」

「みゃーうっ!」

エネコが愛らしく前足を振るうと、光の粒子が弾けた。引き当てたのは、遠くのボックスから響き合うマイナンの『あまえる』の波動だった。エネコが最大級に可愛いポーズでカビゴンを見つめると、その無条件の愛らしさに、狂暴だったカビゴンの攻撃の手が一瞬だけ鈍る。

「今よ、ピカチュウ! 貴方のスピードを乗せて、全力の『エレキボール』!!」

「ピカァ……ッ、チュピピピ……ピカァッ!!」

ピカチュウは稲妻のようなステップで巨獣の懐へと潜り込み、自慢の尻尾を大きく振るった。尾の先に集約されたのは、眩いばかりにバチバチと火花を散らす、濃厚な電気の塊。カビゴンとのスピードの差が、そのまま威力へと還元された黄金の雷球が、巨体の胸元へ向かって一直線に放たれた。

ズガァァァンッ!!

激しい爆音と共に電撃の球体が炸裂し、カビゴンの巨体を大きくのけぞらせる。

 

「グ、グオォ……」

流石の巨獣も、大家族の絆が紡いだ見事な連係コンボと、電撃の麻痺の前に、ついに膝をつき、その場にドスンと崩れ落ちた。カビゴンの瞳から怒りが消え、今度は参ったと言わんばかりに、大人しく頭を下げてペコリと一礼した。どうやら、城主の笛の余韻とミソラたちの実力を認め、ようやく頭がすっきりと目覚めたようだった。

「やった……! やったね、ミソラちゃん! すごい連係!」

サナが飛び跳ねて喜び、城主も「見事な手並みだ、感謝する!」と拍手を送る。

ミソラは激しい戦闘の余韻で少し乱れた髪を直し、ふう、と小さく息を吐いた。シャドー公爵のようにポケモンを道具扱いする者には容赦しないが、こうして正当な筋を通して心を通わせた巨獣には、敬意の眼差しを向ける。ミソラはボロボロになりながらも誇らしげに胸を張るピカチュウやエネコたちのもとへ歩み寄り、一匹ずつ優しく抱きしめた。

「みんな、お疲れ様。本当に強くなったわね……最高のバトルだったわ」

カビゴンは満足したように大きなあくびをすると、ミソラたちに道を譲るように、のっしのっしと草むらの奥へと去っていった。

 

遮るもののなくなった7番道路の先には、カロス地方の次なる広大な大地が広がっている。

新しく増えた家族たちの気配をモンスターボール越しに感じながら、ミソラは我が子たちと共に、再び誇り高き足取りで歩みを進めるのだった。

 

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