ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第34話: 孤高の無双ロードと、ザクロ直前の青天の霹靂

 

エネコの気まぐれな肉球が引き当てた『ほのおのうず』によって、ショウヨウジム最初の死闘であるジーランス戦を、泥仕合の末になんとか制したミソラ一行。

戦闘不能寸前で命からがら生き残ったアブソルは、ミソラから傷薬をスプレーされながら、ふいと顔を背けてフサフサの白い体毛を整えていた。

(フン……あのノーマルタイプの猫にいいところを持っていかれるとは、俺のプライドが許さん。ミソラ、ここから先は全部俺一人で十分だ。誰も前に出すなよ)

心の中でそんな熱いツンデレな誓いを立てているアブソルは、言葉が話せない代わりに、行動でその凄まじい鬼神の如き強さを見せた。

ジムの岩壁を登る途中で立ちはだかる並み居るジムトレーナーたちを、圧倒的な攻撃力と特性『きょううん』による急所連発で、次から次へと単騎でぶち抜いていく。

「アブソル、そこよ! 『かみつき』!」

「シィッ……!!」

相手の繰り出す岩ポケモンたちが、アブソルの容赦ない一撃の前に成す術なく沈んでいく。まさに、大家族の絶対的守護獣にふさわしい圧倒的なワンマンショーだ。ここまで誰一人として戦闘不能(ひんし)を出していないという、ミソラ旅団の誇り高き大記録は、完全にこのアブソル1体の背中に背負われていた。

 

だが、悲劇はジムリーダー・ザクロの部屋へと続く、文字通り最後の踊り場で待っていた。

ザクロに挑む前、最後に立ちふさがったトレーナーが繰り出したのは、巨大な磁石のような鼻を持つ岩の塊――ノズパスだった。

(よし、このまま一気に頂上まで駆け上がる……!)

アブソルが鋭く地面を蹴り、ノズパスの懐へ踏み込んだ、その瞬間だった。

ノズパスの岩の身体から、バチバチと激しい不快な電撃が周囲に放たれる。

『でんじは』――。

「えっ……!?」

ミソラが息を呑む。それと同時に、アブソルの脳裏には、日常で幾度となく自分を恐怖と絶望に陥れてきた、電気ねずみ達の「ほっぺすりすり」のトラウマが強烈にフラッシュバックしていた。

激しい衝撃と共に、アブソルの自慢の美しい体毛が静電気で逆立ち、その強靭な身体がピキリと硬直して動かなくなる。

(クソッ……! バトルの中、しかもこんな大一番の直前で、あの忌々しい電撃に悩まされるとは……!!)

「アブソル、無理しちゃダメ! 戻りなさい!」

ミソラはすぐさまモンスターボールを掲げ、麻痺して動けないアブソルを強引に回収した。戦闘不能こそ免れたものの、ザクロ戦の目前でのまさかの戦線離脱。アブソルはボールの中で悔しさに身をよじる。

「任せたわよ、マリルリ!」

「リリィッ!!」

ここで満を持して登場したのは、水色の重戦車マリルリだ。

マリルリはのっしのっしと前に進み出ると、麻痺させられた先輩の仇を取るかのように、その小さな身体から特性『ちからもち』の規格外のパワーを解放。ノズパスの堅牢な身体を、圧倒的な水技の濁流で一撃のもとに粉砕し、見事にトドメを刺したのだった。

 

「ノズパス戦闘不能! 勝者、マリルリ!」

「ありがとうマリルリ、完璧なカバーだったわ! さぁ、アブソルに『まひなおし』を使ってあげなきゃね」

ミソラが優しく微笑みながら、ボールから出したアブソルにスプレーを吹きかける。

体内の電気が抜け、ようやく身体の自由が戻ったアブソルは、バツが悪そうにマリルリからふいと視線を泳がせ、「……チッ」と小さく舌打ち交じりに鳴いた。

(フン……不覚を取った。だが、戦闘不能だけは免れたな。……おいマリルリ、キッチリとトドメを刺したところだけは、まぁ、褒めてやる。勘違いするなよ、ただの事実を言っただけだ)

どこまでもツンデレな態度を崩さないアブソル。言葉は話さなくとも、その不器用な態度から言いたいことを察したのか、マリルリは「リリィ〜」とのんびり嬉しそうに鳴き、テールナーたちも生温かい目をアブソルに向けていた。

こうして、道中のトレーナーを全員叩き伏せ、誰も戦闘不能にさせることなく完璧な布陣を維持したまま、ミソラ一行はついに最高峰の舞台――ジムリーダー・ザクロの待つ頂上へと、堂々の足を踏み入れるのだった。

 

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