ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第35話: 薄氷の栄光!岩壁の王への挑戦と守護獣の意地

 

ショウヨウジムの頂上。遮るもののない高所のコートで待っていたのは、壁を愛するジムリーダー・ザクロだった。

「ようこそ、ここまで登り詰めたね。僕の岩のコンビネーション、崩せるかな?」

ザクロが静かにモンスターボールを構える。

ミソラは力強く頷き、隣に並び立つアブソルの背をそっと見つめた。アブソルは先ほどノズパスに植え付けられた電撃の不快感を強引に振り払い、前足の爪で激しく地面を削っている。

「行くわよ、アブソル! 『かみつき』!」

ミソラの鋭い号令とともに、ザクロが初手で繰り出したのは、化石から蘇った美しい氷の首長竜、アマルスだった。

アマルスが技を繰り出すよりも早く、アブソルはコートを疾風のごとく駆け抜ける。その漆黒の刃のような角を光らせ、アマルスの懐へと鋭く躍り出た。

「シィッ……!!」

特性『きょううん』が導き出す、一撃必殺の急所。ミソラの狙い通りに放たれた渾身の『かみつき』が、鋭い衝撃となってアマルスを捉える。

弱点を的確にブチ抜かれたアマルスは、反撃の隙すら大えられないまま、文字通り「一発」でその場に崩れ落ちた。

「アマルス戦闘不能! アブソルの勝ち!」

ボールに戻されるアマルスを見送りながら、アブソルは自慢の白い毛並みを揺らし、不敵な笑みを浮かべる。だが、ザクロの本当の恐怖はここからだった。

 

「素晴らしい攻撃力だ。なら、この子のスピードと硬さにはついてこられるかい? 行け、チゴラス!」

地響きを立てて現れたのは、巨大な顎を持つ岩の暴君、チゴラスだった。

「アブソル、続けて『かみつき』よ!」

ミソラの指示で、再び深く鋭く食らいつくアブソル。しかし、チゴラスの岩の身体はアマルスよりも遥かに頑丈だった。一撃では落とせず、逆にチゴラスの強烈な反撃を許してしまう。

ザクロの目が鋭く光る。「チゴラス、『がんせきふうじ』!」

咆哮とともに、アブソルの頭上から巨大な岩石が容赦なく降り注いだ。

ドガガガガッ!という激しい衝撃がアブソルの身体を襲う。

(ぐっ……おおおおお……っ!?)

ただでさえ耐久力の高くないアブソルにとって、タイプ一致の岩技は文字通り骨が軋むほどの痛撃だった。一気に体力を削り取られるだけでなく、周囲を塞がれた岩の破片によって、自慢の脚力(すばやさ)までガクンと落とされてしまう。

「アブソル、大丈夫!? 持ちこたえて!」

ミソラの悲痛な声が響く。

アブソルの身体は重く、次の一撃を喰らえば間違いなく意識を失い、戦闘不能(ひんし)の闇に落ちる。まさに薄氷の上の静止。もう一発『がんせきふうじ』を出されていたら、確実に終わりだった。

だが、ここでミソラとの緊密な絆が、奇跡的な隙を生み出す。

チゴラスが次の岩を構えるよりも一瞬早く、ミソラの一喝が響いた。

「決めるわよ! もう一度『かみつき』!」

アブソルはミソラの声に応えるように、気力だけで重い身体を動かし、最後の一歩を踏み出した。

「シィィィィッ!!!」

渾身の力を込めたあくタイプの刃が、チゴラスの急所を深々と捉える。

一瞬の静寂の後、巨大なチゴラスの巨体が、大音響とともにコートに倒れ伏した。

 

「チ、チゴラス戦闘不能! 勝者、チャレンジャーのミソラ!」

審判の声が響いた瞬間、アブソルはその場に膝を突きそうになるのを、猛烈なプライドだけで踏みとどまった。全身傷だらけ、呼吸は激しく乱れ、体力は完全に消えかける一歩手前だったが、最後まで前線に立ち続けた。

「やった……! やったわアブソル! あなた、本当にすごすぎるわ!」

ミソラが駆け寄り、ボロボロのアブソルを涙目で労う。

ザクロが微笑みながら歩み寄り、ショウヨウジムの勝利の証である『ウォールバッジ』を差し出してきた。

「完敗だよ。君とポケモンの、絶対に折れない岩のような壁を超えた絆、見事だった」

「ありがとうございます!」

大切な仲間たちと一緒に勝ち取った2個目のバッジ。それを嬉しそうに掲げるミソラの周りに、マリルリやテールナーたちも一斉に集まり、「リリィ!」「テール!」と大エースの健闘を称え、心配そうに寄り添う。

アブソルはハァハァと荒い息を吐きながら、いつものようにふいと顔を背け、小さく「……フン」と鳴いた。

心の中では冷や汗ダラダラで限界を迎えつつも、ミソラや大家族の前では最後まで格好いい姿を崩さない、そんな愛おしい守護獣だった。

 

大激闘のショウヨウジムを制覇し、トレーナーとしてまた一回り大きく成長したミソラ。大切なバッジを胸に、賑やかな大家族と共に彼女が次に向かうのは、イーブイの生息地とされる10番道路――。ミソラのカロス地方を巡る輝かしい旅路は、新たな出会いの予感を乗せて、まだまだ続いていく。

 

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