ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第39話: 激突フレア団!重なる状態異常とブチギレの最大火力

 

新入りのイーブイを加えた新たな布陣で再び10番道路へと戻ってきたミソラ一行。

道沿いに奇妙な巨石がどこまでも立ち並ぶその景色は、この地で生まれ育ったイーブイにとっては文字通りのホームグラウンドだった。

「ブイ、ブイッ!」

イーブイは先頭をトコトコと歩き、新しい家族を案内するように進む。大黒柱のテールナーも優しい目を向けながら警戒を怠らない。

 

だが、前方の巨石の陰から、その厳かな景観を台無しにするほどに派手な「真っ赤なスーツ」を纏った男たち――悪の組織『フレア団』が姿を現した。

「おい、そこをどけ。ここは我々フレア団が調査中だ」

「またあなたたち!? こんなところで一体何をしているのよ!」

ミソラが鋭く問い詰めると、団員の一人がサングラスの奥の目を細めた。

「おい、こいつさっきテレビの生中継で、イーブイ相手に赤ちゃん言葉で大絶叫してた痛い親馬鹿トレーナーだろ!」

「ぶっ! カロス全土に恥を晒してた奴か! ただのイカれた愛好家じゃないか!」

「なっ……何のことよそれーーーっっっ!?」

顔面を真っ赤にするミソラ。だが、それ以上に激しい怒りの声を上げたのはイーブイだった。大好きなミソラを馬鹿にされたことが許せず、小さな身体を低く構えて男たちを睨みつける。

「フン、小賢しい新入りめ! いけ、スカンプー、グラエナ!」

「みんな、やっちゃいなさい! リザード、アブソル、前へ!」

久々の実戦となるリザードが咆哮を上げ、アブソルが俊敏に飛び出す。バトルそのものは一瞬だった。リザードの圧倒的な一撃がスカンプーをねじ伏せ、アブソルの鋭い爪がグラエナを一撃で沈める。

しかし、倒れ際、スカンプーが姑息にも周囲に紫色の毒霧をぶちまけた。

「リザ、ァ……!」

まともに霧を吸い込んだリザードが、苦しそうに膝をつく。さらに、その毒霧が背後にいた新入りのイーブイへ向かって流れていく。

「ブイッ!?」

「アブッ!」

咄嗟に身体を割り込ませ、身を挺してイーブイを庇ったのはアブソルだった。だが、その代償としてアブソルの白い体毛にも不気味な紫色の気配が混ざり合う。リザードとアブソル、2体同時の「どく」状態。じわじわと体力が奪われていく。

「ひ、引き上げるぞ!」

フレア団は慌てて巨石の奥へと逃げ去っていった。

「リザード! アブソル! ……ダメ、毒消しが無いわ。早く次のセキタイタウンのポケモンセンターへ連れていかないと!」

ミソラは青ざめ、2体をボールに戻して駆け出そうとした。

 

だが、その行く手を阻むように、派手な服を着てカメラを首に下げた、自己中そうな観光客のおばさんが強引に割り込んできた。

「ちょっとそこのお嬢ちゃん! ちょうど良かったわ、私とポケモンバトルしなさいよ! カロスの旅の思い出に、トドメの1勝が欲しいのよねぇ!」

「冗談じゃないわ、どいてください! ポケモンが毒に冒されて一刻を争うの!」

「嫌よぉ、旅の恥はかき捨てって言うじゃない? ほら、いきなさいパチリス!」

おばさんはミソラの必死の訴えを完全に無視し、身勝手な理屈でパチリスを繰り出してきた。あまりの非常識さに、ミソラの怒りが限界に達しようとしたその時。

一歩前に出たのは、テールナーだった。

その瞳は、いつもの冷静さを完全に失い、ゴゴゴと地鳴りが聞こえそうなほどの怒りで燃え上がっている。自分の大切な「家族」が毒で苦しんでいるときに、下らない自己満足で道を塞いだ目の前のおばさんが、どうしても許せなかった。

「テールナー、一瞬でどかすわよ!」

「テェーーーッッッ!!」

だが、パチリスがおばさんの指示で素早く動き、「ほっぺすりすり」をテールナーの頬に繰り出す。パチッと黄色い電撃が走り、テールナーの身体にビリビリとした火花がまとわりついた。「まひ」状態だ。

動きが鈍るテールナー。おばさんは「あら、いけるじゃない!」と下品に笑う。

それが、テールナーの逆鱗を完全に引きちぎった。

「まひ」の痺れを、凄まじい怒りと精神力だけで完全にねじ伏せ、テールナーは尻尾から引き抜いた木の枝を天高く掲げた。

「テェェェェエエエエーーーッッッッ!!!!」

大気を震わせる絶叫とともに放たれたのは、これまでの旅で一度も見たことがないほどの、狂暴な大渦を巻く最大火力の炎だった。轟々と燃え盛る巨大な炎の濁流が、10番道路の巨石群の隙間を埋め尽くすようにパチリスへ襲いかかる。

 

「ひゃあああああああ!?」

おばさんの悲鳴が響く。最大火力の炎に包まれたパチリスは、技を繰り出す暇もなく一撃でノックアウト。炎が晴れたあとには、顔をちょっとススまみれにして、目をぐるぐると回しながらひっくり返っているパチリスの姿があった。完全に戦闘不能だ。

テールナーは荒い息を吐きながら、木の枝をピッと一振りし、おばさんを鋭い眼光で一睨みする。

「ひっ、ひぃぃぃ!」とおばさんは大慌てでパチリスをボールに回収し、文字通り脱兎のごとく逃げ去っていった。

「テールナー、ありがとう……! みんな、行くわよ!」

痺れに耐えるテールナーを抱きしめ、ミソラは全力で走り出した。マリルリやエネコ、そしてイーブイもその後に必死で続く。フレア団の邪悪さと観光客の理不尽に襲われながらも、大家族の怒りと絆を乗せ、ミソラ一行は救急の待つセキタイタウンへと、一文字に突き進むのだった。

 

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