「ファイトバッジ、よし! メガリングも、よし!……さあみんな、次の街へ出発よ!」
シャラシティの西のゲート。ミソラが意気揚々とリュックを背負い直した時、ゲートの前に広がる真っ青な水平線を見て、ピタリと足を止めた。
次の目的地であるヒヨクシティへ向かうには、この目の前に広がる広大な海――「12番道路」を渡り切るしかなかった。
「うーん……泳いで渡るにはちょっと距離があるわね。誰か『なみのり』ができる子が仲間に入ってくれればいいんだけど……」
ミソラがアゴに手を当てて悩んでいると、ゲート付近の浜辺にいた一人のブリーダーの男性が、ミソラたちの賑やかな様子を見て声をかけてきた。
「おや、君たちは旅のトレーナーかい? もしよかったら、この子を一緒に連れて行ってくれないか。とても優しくて力持ちの、素晴らしいポケモンなんだ」
男性が指差した先――波打ち際に佇んでいたのは、美しい甲羅と、穏やかで知性あふれる瞳を持った大きなポケモン、ラプラスだった。
「ラプ、ラァ〜〜〜……」
ラプラスは心地よい潮風のような、優しく澄んだ鳴き声を響かせる。その瞳は、ミソラの後ろで進化したばかりのマフォクシーやリザードン、そして守護神アブソルたちが形作る「大家族」の温かいオーラをじっと見つめていた。どうやら、この賑やかな旅団をとても気に入ったらしい。
「あなたが、私たちの仲間に……? もちろん大歓迎よ! よろしくね、ラプラス!」
ミソラが差し出したモンスターボールに、ラプラスは自ら優しく頭を触れ、カチリと音を立てて収まった。新たな海の仲間が加わった瞬間だった。
しかし、ここでミソラはある現実的な問題に直面する。
現在の旅団の手持ちはすでに満杯の6体。ラプラスを旅に連れて行き、海を渡るための『なみのり』を任せるためには、誰か1体をポケモンセンターのボックスへと戻さなければならなかった。
「……うう、みんな大切な家族だから、誰を留守番にさせるか本当に迷うわね……」
ミソラが頭を抱えて悩んでいると、足元から「マ〜ルリ♪」と、元気いっぱいの声が響いた。
タフで知られる水タイプの相棒、マリルリだった。
マリルリは、少し寂しそうな表情を浮かべるミソラの前にトコトコと歩み出ると、自分の短い腕でポンポンと胸を叩き、ニヤリと頼もしい笑顔を見せてみせた。
「マル、マリルリ!」
(私なら大丈夫! 今回の海は新しい子に任せて、私はポケセンのふれあいコーナーでみんなの帰りを待ってるわ!)
そう言っているかのように、マリルリはいつものおてんばな笑顔でその場を飛び跳ねた。進化したばかりのマフォクシーやリザードンが前線で大暴れしている今、自分の役割をしっかりと理解し、旅団の空気が重くならないよう、あえて自分から「お留守番役」を買って出てくれたのだ。大家族の絆を知るマリルリならではの、最高の配慮だった。
「マリルリ……ありがとう。寂しくなるけど、ふれあいコーナーの仲間たちと仲良く待っててね。すぐに迎えに来るから!」
「マ〜ルリッ♪」
ミソラがマリルリを優しくボールに戻し、転送システムで預けると、旅団の仲間たちもその決断を静かに、しかし熱いリスペクトを込めて見送った。マリルリの笑顔の留守番を無駄にはできない。
「よし……ラプラス、出てきて! 私たちを乗せて、あの海の向こうまで連れて行って!」
「ラプ、ラァァァァ〜〜〜ン!」
再び現れたラプラスの大きな背中に、ミソラがしっかりと跨る。マフォクシーやリザードン、エネコロロたちもそれぞれの方法でラプラスに寄り添い、守護神アブソルも静かに甲羅の上でバランスを取った。
「ラプラス、『なみのり』よ! 進めーーーっ!」
ザザーーーッ!と、ラプラスが力強く青い海を蹴り出す。白い水飛沫を上げながら、心地よい速度で大海原を進んでいくラプラスの背中は、驚くほど安定していて温かかった。
大切な相棒マリルリの笑顔の留守番を背負い、新たな仲間ラプラスと共に、カロス地方の青き海へと漕ぎ出したミソラ旅団。
波の音と、新しく加わった美しい鳴き声を響かせながら、大家族は次なる試練の地、ヒヨクシティを目指して突き進むのだった。