ポケットモンスター カロス大家族記   作:空念

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第53話: 激昂の黒き翼!呼び覚ませメガシンカ、怒りの爆炎一閃!

 

メェール牧場ののどかな余韻に浸りながら、ヒヨクシティへと続く一本道を歩いていたミソラ旅団。だが、その平和な空気は、物陰から突然飛び出してきた好戦的な旅のトレーナーによって最悪の形で破られた。

「見つけたぜ、そこのトレーナー! 目が合ったら強制バトルだ、拒否はナシだぜ!」

相手が問答無用で繰り出したのは、鋭い爪を不気味に光らせる凶暴な白毛の獣――ザングースだった。シャラジムを一撃無双で制したリザードンは一歩引いた位置におり、ここは経験を積ませるために、ミソラは旅団の末っ子・イーブイを前に出す。

「気をつけて、イーブイ! 『つぶらなひとみ』で相手の攻撃を下げて!」

「ブイッ!」

イーブイは持ち前の愛くるしい瞳でザングースを牽制しようとする。しかし、相手のザングースは極めて実戦慣れした、容赦のない個体だった。攻撃が鈍るよりも早く、殺気立ったザングースが超スピードで肉薄する。

「甘いぜ! ザングース、『きりさく』連打ァ!!」

シュバババッッ!!

「ブ、ブイィィィーーーッ!?」

鋭い爪が無慈悲にイーブイの小さな身体を捉えた。まだ幼いイーブイにはあまりに重すぎる、痛烈な連続攻撃。悲鳴を上げて砂煙の中に吹き飛ばされたイーブイは、ピクリとも動かず、そのまま一瞬で戦闘不能になってしまった。

「イーブイ!!」

ミソラが慌てて駆け寄り、ボロボロになった小さな身体を抱きしめる。

 

「へへん、呆気ねえな! さあ、次のポケモンを出しな!」

悪びれもせず勝ち誇る相手トレーナー。だが、その男は気づいていなかった。イーブイの悲鳴が響いた瞬間から、ミソラの後方で、大気をビリビリと震わせるほどの絶望的なまでの殺気が膨れ上がっていることに。

「リザァァァ…………ッッ」

喉の奥から、地獄の底を這うような低い唸り声を上げたのは、漆黒の巨躯・リザードンだった。

かつて自分の暴走で本気で怖がらせてしまった、あの小さな弟分。砂浜で、これからは命をかけて守ると誓った大家族の仲間。それを目の前で容赦なく痛めつけられた。

リザードンの瞳が、かつての狂暴性とは違う、家族を傷つけられた「純粋な激怒」の炎で真っ赤に染まっていく。

ズシン、と一歩前に出たリザードンの足元から、地面が熱でひび割れていく。

そのあまりの怒りの波動に、ミソラの手首に填められた『メガリング』が、まるで共鳴するように激しく脈打ち、目も眩むような五色の光を放ち始めた。

「リザードン……あんたの怒り、私に全部伝わってくるわ……。あいつらのために、私たちの絆を見せてやりましょう!!」

ミソラがメガリングを天に掲げる。

リングから放たれた眩い光の帯が、リザードンの身体へとなだれ込む。リザードンの咆咆とともに、その漆黒の肉体がさらにシャープに、大空を統べるにふさわしい大きな翼へと変化し、頭部には新たな角が形成されていく。

バキォォォォンッッ!!!

フィールドに凄まじい熱風が吹き荒れ、あたかも太陽がすぐそこに引きずり降ろされたかのように、周囲の気温が一瞬で跳ね上がった。特性『ひでり』。

光のキリを切り裂いて現れたのは、大空の支配者――メガリザードンYだった。

 

「な、なんだその姿は……!? 」

相手トレーナーが顔を青ざめさせる。だが、ミソラもリザードンも、もう一切の容赦はしない。

「リザードン……『つばさでうつ』ッ...!!!!」

「リザァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

大気を爆破せんばかりの羽ばたき一閃。

メガシンカによって圧倒的な推進力を得たリザードンの白い光を纏う翼が、逃げようとしたザングースの身体を真っ向からぶち抜いた。

ドガァァァァァンッッ!!!

衝撃波だけで周囲の木々がなぎ倒される。ザングースは技の威力を受けるどころか、文字通り一発で粉砕され、白目を剥いて遥か彼方の崖まで吹き飛んでいった。

「ひ、ひえええっ!? も、戻れザングース! いけっ、ケンタロス!!」

恐怖でパニックになった男が、慌てて次の切り札である猛牛・ケンタロスを繰り出す。ケンタロスは威嚇の声を上げながら突進してくるが、リザードンの怒りの火床はまだ消えていない。

「そのままの勢いで叩き潰しなさい! 『つばさでうつ』!!」

突っ込んでくるケンタロスに対し、リザードンは空中から急降下。巨大な翼を大振りにしならせ、ケンタロスの脳天目がけて容赦なく叩きつけた。相性や耐久など、もはや関係ない。限界を超えた怒りのパワー。

ドッゴォォォォォンッッ!!!

ケンタロスの巨体は地面へと叩き沈められ、一撃で戦闘不能。リザードンはたった2振りの翼だけで、相手の精鋭2体を文字通り完璧にぶち破ってみせたのだ。

「ま、まいりましたぁぁぁーーーっっ!!」

トレーナーが泣きながらポケモンを回収し、一目散に逃げ去っていく。

 

静寂が戻った12番道路。

リザードンのメガシンカが解け、元の漆黒の姿に戻る。肩で息をしながら、リザードンはすぐにミソラの手元へと駆け寄り、心配そうに頭を下げてイーブイを覗き込んだ。

「大丈夫よ、リザードン。気絶してるだけ。……大切な弟を守ってくれて、本当にありがとう」

ミソラが優しくリザードンの鼻先を撫でると、リザードンはホッとしたように小さく鼻から煙を吐いた。

後ろでは、守護神アブソルが「見事なエースの仕事だ」と静かに頷き、新しく進化したマフォクシーもリザードンの成長を認めるように微笑んでいる。

かつては仲間を怖がらせたその圧倒的な力が、今は「家族を守るための最強の盾」となった。

イーブイを優しく抱きかかえ、絆をさらに強固なものにしたミソラ旅団は、リザードンが切り開いた道の先、ついに緑豊かな次なる街・ヒヨクシティの入り口へとたどり着くのだった。

 

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