「ジムリーダーのシトロンです。満身創痍でありながら、その瞳の輝きは失われていませんね。僕の科学の力と、どちらが上か……全力でいかせてもらいます!」
シトロンが掲げたモンスターボールから、エレザードが躍り出た。襟巻きを大きく広げ、発電機のような駆動音を鳴らす。
ミソラはノートをしっかりと脇に抱え、腰のベルトから最も信頼を置く2つのボールに触れた。
(ルカリオとアブソルが繋いでくれたシトロンへの道。ここから先は一歩も引かない。私の最初の旅を支えてくれた、最高の2体で駆け抜ける!)
「行って、リザードン! フィールドを私たちの熱量で支配するわよ!」
「グオォォーーーッ!!」
咆哮と共に現れたリザードンが、力強く羽ばたき、ジムの無機質なフロアに熱風を吹き込ませる。
「エレザード、先手必勝です!『10まんボルト』!」
「リザードン、持ち前の機動力でいなして!『つばめがえし』!」
空中へと飛び上がったリザードンは、容赦なく放たれる電撃を鋭い宙返りで紙一重で回避。そのまま急降下し、加速を乗せた鋭い一撃でエレザードを捉えた。
「エレッ!?」
「今よ、『かえんほうしゃ』!」
至近距離から放たれたリザードンの烈火が、エレザードを容赦なく包み込む。エレザードはたまらず後退し、そのまま戦闘不能となった。
「やりますね。ですが、僕の真の相棒はここからです。――呼び覚ませ、電気の磁場! 行け、レアコイル!」
シトロンの切り札、レアコイルが磁力を放ちながら浮遊する。鋼・電気タイプ。リザードンにとっては炎技が抜群で通る相手だが、同時に電気技を弱点とされる、互いに一撃必殺の緊張感がフィールドに張り詰めた。
「レアコイル、『かみなり』です!」
ジムの天井から、これまでにない質量の大放電がリザードンを襲う。
「リザードン、上空へ回避して……しまっ!」
先ほどまでの連戦の疲労か、リザードンの上昇が一瞬遅れた。激しい雷光がその大きな翼を直撃する。
「グッ……!」
巨体を震わせ、苦痛に耐えながらも、リザードンは最後の力を振り絞って炎を吐き出し、レアコイルに大きな負担を与えてからボールへと戻った。
「持ちこたえてくれてありがとう。……あなたの役目は十分に果たしたわ。ゆっくり休んで」
ミソラはリザードンを優しく戻すと、満を持して最後のボールを握りしめた。
「私たちの最高の輝きを見せなさい。――マフォクシー!」
赤いローブのような毛並みをなびかせ、マフォクシーが静かにフィールドへ降り立つ。その手には、新たな絆の証明である一本の木の枝が、誇らしげに握られていた。
「炎とエスパーの複合タイプ。ですが、僕のレアコイルの頑強さは侮れませんよ!『10まんボルト』!」
「レアコイルの次の一手の軌道、もう脳内に描けているわ。マフォクシー、一歩も動かずに『サイコキネシス』!」
マフォクシーの瞳が怪しく青く輝く。放たれた電撃がマフォクシーに届く直前、見えない念動力がレアコイルの身体を完全にロックした。強力なサイコパワーに、レアコイルの電撃の軸が強制的に逸らされ、明後日の方向へと霧散していく。
「なっ、技の発動ごとサイコキネシスで抑え込むなんて……!」
シトロンが目を見開く。ミソラは不敵に微笑み、マフォクシーと視線を交わした。マフォクシーの超能力をどこでどう作用させれば相手の動きを「封じる」ことができるか、今のミソラには完全に理解できていた。
「これで終わりよ。進化したあなたの、本当の力を見せてあげて。――マフォクシー、『マジカルフレイム』!!」
マフォクシーが掲げた枝の先から、これまでにないほど幻想的で、かつ圧倒的な熱量を持った特殊な炎が渦を巻いて放たれた。空間を美しく揺らしながら突き進むその魔術的な劫火は、念動力で身動きの取れないレアコイルを完全に包み込んでいく。
ゴォォォォッ!!!
レアコイルの特攻を削ぎ落としながら、その鋼の身体を溶かすような一撃。激しい熱波が収まったとき、満身創痍だったレアコイルは完全に力を失い、床へと落下した。
「レアコイル、戦闘不能! 勝者、挑戦者ミソラ!」
レフェリーの声が響き渡り、ジムの幾何学模様の照明が、挑戦者の勝利を称えるマゼンタ色へと変化していく。
「……負けました。データを超えた、素晴らしい連携と戦術です」
シトロンは清々しい笑みを浮かべ、ミソラのもとへと歩み寄った。その手には、5つ目のバッジである『ボルテージバッジ』が光っている。
「ありがとう。本当に、良いバトルだったわ」
ミソラはバッジを受け取り、それを大切にポケットに仕舞い込むと、隣で誇らしげに木の枝をクルクルと回してみせる、頼もしいマフォクシーの頭を優しく撫でた。
満身創痍の逆境から始まったミアレジム戦。ルカリオの不屈、アブソルの意地、リザードンの奮闘、そしてマフォクシーの華麗な一撃。21匹の大家族の絆が、また一つ、ミソラを本物の『指揮官』へと押し上げた。