「お見事どした。相性の不利をも引っ繰り返す、あんたらの強い絆……しかと見せてもらったわ」
バトルの興奮が冷めやらぬ大広間で、マーシュは優雅に微笑みながら、一枚のバッジをミソラへと手渡した。ピンク色の蝶の羽を模した、美しい『フェアリーバッジ』。
ミソラはそれを手のひらに乗せ、愛おしそうに見つめてから、誇らしげに胸元へ収めた。
「ありがとう、マーシュ。このバッジは、私とこの子たちが一緒に戦い抜いた、何よりの証明よ」
ジムを後にしたミソラは、ブラッキーとアブソルを伴ってポケモンセンターへと急いだ。あの狂気的な振袖たちの追跡から逃れ、そのまま圧倒的なタイプ不利のバトルを制したのだ。心身ともに疲れ切っているはずの二匹を、一刻も早く休ませてあげたかった。
「ジョーイさん、この二匹をお願い。それから――ボックスの皆も、全員呼んでもらえる?」
受付でそう告げると、ジョーイさんはいつもの優しい笑顔で「かしこまりました」と応えてくれた。
数時間後。クノエシティの夕暮れがポケモンセンターのふれあい広場を茜色に染める頃、そこには再び、ミソラの愛する22匹の大家族が全員揃っていた。
「みんな、本当にお待たせ! そしてブラッキー、アブソル、本当にお疲れ様!」
ミソラが両腕を広げると、治療を終えてすっかり元気になったブラッキーが一番に飛び込んできた。ミソラはその首回りを「よく頑張ったね、ありがとう」と何度も撫で回す。
その隣では、先鋒としてクレッフィを完璧に封じ込めたアブソルが、少し誇らしげに胸を張っていた。
「アブソルも凄かったわよ。あんたの『ちょうはつ』がなかったら、どうなっていたか分からないもの」
ミソラが頭を撫でようと手を伸ばすと、アブソルは少し照れくさそうに首を傾げた。……が、その瞬間を待っていたかのように、背後から不穏な(?)気配が迫る。
パチパチパチッ! と可愛い火花を散らしながら、プラスル、マイナン、ピカチュウ、エモンガ、デデンネの電気袋組が、大金星を挙げたお兄ちゃんへ一斉に飛びついた。
「ア、アブ……ッ!?」
(またか! 闘いが終わったと思ったらまたこれかよ……痺れるる……っ!!)
アブソルは心の中で再び絶叫し、微弱な電流にガタガタと震えながら白目を剥きそうになっていたが、やはり妹弟たちを振り払うことはせず、じっと耐えていた。その健気で愛おしい姿に、ミソラはまたしても悶絶する。
芝生の上では、リザードンやマフォクシー、ヒノヤコマたちが、悪の双璧を称えるように鳴き声を交わし、ガルーラは袋の子供と一緒に拍手を送っている。
クチートはミソラのスカートの裾をツンツンと引っ張って「次は私の番?」と言いたげに上目遣いで見つめており、ミソラは「もちろんよ、次はクチートも大活躍させてあげるからね」と抱きしめた。
水溜まりではヌオーとマリルリがパシャパシャと水を跳ね上げ、ラプラスの背中の上ではニャスパーとオタチが相変わらずのんびりと尻尾を揺らしている。アマルスとリーシャン、そしてエネコロロも、穏やかなクノエの夕風の中で思い思いにくつろいでいた。
22匹の大家族の笑顔が、そこにはあった。
ジム戦のバッジは、彼女にとって「目的」ではない。こうして、誰一人欠けることなく、傷つくこともなく、全員で次のステップへと進むための「結果」なのだ。
「さあ、みんな。次の目的地は、大きな日時計があるっていう『ヒャッコクシティ』よ。もっともっと強くなって、これからもみんなで一緒に進んでいこうね!」
「ブラァッ!」
「アブブブ……(まだ痺れている)」
個性豊かな鳴き声が、夕暮れのクノエシティに響き渡る。
数々のハプニングを乗り越え、絆をより一層深めたミソラと大家族は、次なる試練の地へ向けて、再び力強く歩みを進めるのだった。